ラジオドラマ脚本:鏡の国のアリス

登場人物
アリス・テロッサ 女
本作の主人公。ある日、ミラー・アリスによって鏡の国に引き込まれてしまう

マリア・テロッサ 女
アリスの母親。アリスに本を読み聞かせるのを日課としている

チェシャ猫 男
鏡の国で一番最初に出会う猫。気まぐれで神出鬼没

ディー&ダム 男
森に住んでいる双子

時計うさぎ 男
白い兎の耳を生やした少年。首から大きな懐中時計をかけている。
時間に追われているせいか、いつも落ち着きがない

3月うさぎ 男
茶色い兎の耳を生やした少年。時計うさぎとは幼馴染。眠りネズミ、ぼうし屋といつもお茶会をしている。

眠りネズミ 男
テーブルに突っ伏して寝ている少年。三月うさぎより年下。眠たそうな口調で話す。

帽子屋 男
敬語で話す大人びた男性。三月うさぎと眠りネズミの執事的存在。アリスのことを「アリス様」と呼ぶ

ミラー・アリス 女
もう一人のアリス。アリス・テロッサを鏡の国に引きずり込んだ本人。

ミラー・クイーン 女
鏡の国の女王。アリス同様、変わりない日々に飽き飽きしていた


本編
(マリア、アリスに本を読み聞かせている)
マリア:・・・かくしてジャンヌ・ダルクは神の神託を受け、フランス軍に従軍。彼女はイングランドに占領されていたフランス領を奪還せよ、という神の声を聞いたとされ、それを信じたシャルル7世は・・・

アリス:いつもと変わらない毎日。お母様の長い話を聞いた後は、いつもと同じティータイム。毎日同じことの繰り返し、楽しいことなんて1つもない・・・

マリア:アリス?ちゃんと聞いているの?
アリス:えぇ、お母様。ちゃんと聞いているわ
マリア:そう。じゃあさっきの続きから始めるわよ
アリス:(もっとこう、胸躍るような素敵な出来事はないのかしら?)

タイトルコール:鏡の国のアリス

マリア:(本を読み終えて、一息つく)では、今日はこの辺にしてお茶の時間にしましょう。アリス、何が良いかしら?
アリス:今日はダージリンがいいな。ジャムも忘れないでね
マリア:はいはい。アリスはこの紅茶が一番好きだものね
アリス:うん、この紅茶とジャムを作った神様に感謝したいくらいだわ
マリア:(少し笑いながら)もうアリスったら・・・・・・あら?
アリス:どうしたの?お母様
マリア:ジャムがちょうどなくなったみたい・・・アリス、ちょっと取りに行ってくれない?私はお菓子の用意をしてるから
アリス:分かったわ。地下倉庫に行ってくる

アリス:ええと・・・ジャムは・・・っと・・・一体何処にあるのかしら?
SE:ゴトッと何かが落ちる音
アリス:な、何・・・?って本が落ちた音かぁ・・・
アリス:鏡の国のアリス・・・この子、私と同じ名前なんだ。なんだか面白そう
ミラー・アリス:そうよ
アリス:えっ・・・?
ミラー・アリス:こっちよ、こっち
アリス:嘘・・・鏡が、喋ってる・・・!?
ミラー・アリス:鏡じゃないわ。喋っているのは私よ、アリス・テロッサ
アリス:ど、どうして私の名前を・・・?
ミラー・アリス:それは、私がもう一人のあなただからよ
アリス:・・・・・・・・・
ミラー・アリス:あなた、そっちの世界じゃあ不満なんでしょ?
アリス:それは、その・・・・・・
ミラー・アリス:やっぱりそうなのね!ねぇ、私たち入れ替わらない?
アリス:い、入れ替わる・・・!?そんなこと無理に決まってるじゃない
ミラー・アリス:それが、この鏡の力を使えば出来るのよ。ほら!
アリス:え、ちょっと・・・きゃああぁっ!

マリア:・・・ん?今、何か音がしたような・・・?

チェシャ猫:アリス、アリス!(呼びかけるように)
アリス:う、うぅ・・・・・・あれ?私は一体・・・
チェシャ猫:やっと起きたか・・・そんなとこで寝ていたら風邪ひくよ
アリス:ね・・・猫が喋ってる・・・!?だ、誰なの、あなた・・・?
チェシャ猫:誰って・・・正真正銘のチェシャ猫さ。・・・ははぁ、さてはあいつ、また入れ替わったんだな?
アリス:入れ替わったって・・・じゃあ私、鏡の世界に来ちゃったの!?
チェシャ猫:そうみたいだね
アリス:そうみたいって・・・じゃあ、元の世界に戻してよ
チェシャ猫:それは無理だね
アリス:何で?
チェシャ猫:僕にはその力がないからさ。もし元の世界に戻りたければ、ミラー・クイーンに会うことだね
アリス:ミラー・クイーン?
チェシャ猫:鏡の国の女王陛下さ。ほら、あそこに大きな城があるだろう?
アリス:う、うん
チェシャ猫:そういう事さ。じゃあ僕はそろそろ戻ろうかな。お昼寝の時間だ
アリス:そんな!待ってよ!
チェシャ猫:慌てない、慌てない。もうすぐ時計うさぎがやってくるから。あとは彼に聞くといいよー
アリス:あぁ・・・消えちゃった・・・

アリス:あの猫の言うことが本当なら、今度はうさぎに話を聞けばいいのね・・・
時計うさぎ:はぁ、はぁ・・・さぁ急がなきゃ!遅刻しちゃう!
アリス:もしかして・・・あれが時計うさぎ?
時計うさぎ:急げ、急げ・・・おっとアリスじゃないか
アリス:時計うさぎさん、こんにちは。これからお城へ向かうの?
時計うさぎ:あぁそうさ。1秒でも遅刻したら女王陛下に叱られちゃうからね
アリス:おっと!君と話していたら20秒も過ぎちゃった。アリス、君も遅刻しちゃ駄目だよ!待ってるからね!
アリス:ちょっと、うさぎさん!・・・行っちゃった・・・

チェシャ猫:さぁ、アリス。時計うさぎを追いかけようじゃないか。さもないと、元の世界には戻れないよ?

アリス:うーん・・・どっちに行けばいいのかしら・・・?うさぎさん、見失っちゃった・・・。まさか、こんな森の中を通るなんて聞いてないよ・・・

ディー:おやぁ?君は・・・
ダム:アリスじゃないか
アリス:あ、あなたたちは?っていうか、なんで私の名前知ってるの?
ディー:僕は双子のディー
ダム:僕は双子のダム
ディー:僕たち二人は
ダム:何でも知っているのさ
アリス:何でも・・・?
ディー&ダム:そうとも
アリス:じゃあ教えて!どうやったら、あの城にたどり着けるの?
ディー:簡単なことさ
ダム:この森から聞こえてくる声を聞けばいい
アリス:声?
ディー:ぼうし屋たちがお茶会をやっているのさ
ダム:ぼうし屋たちの声が聞こえるほうへと進めば
ディー:城へと近づけるさ
アリス:う、うーん・・・つまり、そのぼうし屋たちを見つければいいのね?
ダム:もちろん
ディー:君が彼らのとこに着く頃には
ダム:時計うさぎも居るはずさ
アリス:・・・・・・えっ?
ディー:だって君はあのうさぎを追いかけているんだろう?
ダム:城へ向かうアリスはいつだって、そう言うんだ
ディー:さぁアリス、時間は迫っているよ
ダム:耳をすませて、よく聞いてごらん?
アリス:う、うん・・・

チェシャ猫:一方その頃、ぼうし屋と愉快な仲間たちは・・・

3月うさぎ:チアーズ!(紅茶を飲む)んー・・・今日の紅茶もなかなか美味だねぇ・・・
ぼうし屋:気に入ってもらえたのなら光栄ですよ、三月うさぎ。あ、眠りネズミさんもいかがです?
眠りネズミ:んー・・・(眠そうに)僕もいただこうかな・・・ハーブティーがいい・・・
ぼうし屋:はいはい。お目覚めには、いつもこれでしたね。あとは時計うさぎさんの分、と・・・
3月うさぎ:お、時計のやつ来た来た!ナイスタイミングだぜ、ぼうし屋
ぼうし屋:今日の3時ぴったり・・・相変わらずですね、彼は
時計うさぎ:はぁ・・・はぁ・・・や、やぁ諸君
ぼうし屋:お待ちしておりましたよ、時計うさぎさん
3月うさぎ:おい時計、今日もすぐに城へ行っちまうのか?
眠りネズミ:たまには、ケーキでもゆっくり食べて行ったらぁ?
時計うさぎ:そうしたいところなんだけど、女王陛下のお呼び出しだからね。1秒でも遅れたら、僕の首がなくなっちゃうよ
眠りネズミ:陛下は時間に厳しいからねぇ・・・
3月うさぎ:全く、あんな女王の下で働いてたら首がいくつあっても足らなねぇっつうの
ぼうし屋:そんなことを言っては駄目ですよ、3月うさぎ。あなたの首まで飛んでしまいます
3月うさぎ:ちぇー・・・
時計うさぎ:ゴクゴク・・・(紅茶を一気飲みする)ふぅ、ごちそうさま!
ぼうし屋:もう行ってしまうのですか?
時計うさぎ:うん、今度は女王陛下の呼び出しがないときに行くよ
眠りネズミ:行ってらっしゃい・・・僕たち待ってるからねぇ・・・
アリス:はぁ、はぁ・・・う、うさぎさーん!!
ぼうし屋:あの声は・・・
3月うさぎ:あれ、アリスじゃねぇか
アリス:あ、あのっ!此処を時計うさぎさん、通りませんでしたか!?
ぼうし屋:これはこれはアリス様。時計うさぎなら、先ほど城に向かわれましたけど・・・
アリス:(あ・・・アリス様・・・?)そう・・・ですか・・・
眠りネズミ:なんだか今日はお客様が多いねぇ・・・
3月うさぎ:よぉアリス。お前も1杯飲んでいくか?
アリス:ごめんなさい、私、時計うさぎを追いかけなくちゃいけなくて。だから、ありがとうございます。うさぎさーん!待ってー!
3月うさぎ:・・・ありゃあ、いつものアリスじゃねぇな
ぼうし屋:そう言われてみれば、何か雰囲気が違うような・・・
眠りネズミ:また入れ替わったのかもねぇ・・・

チェシャ猫:そして時計うさぎを追いかけていたアリスは鏡の国の城に辿り着く・・・

時計うさぎ:ま、間に合った・・・!
時計うさぎ:(咳払い)鏡の国の女王陛下のお出ましでーす!
アリス:あの人が、ミラー・クイーン・・・
チェシャ猫:(アリスの前にいきなり現われる)やぁ、アリス。とうとうお城に着いたみたいだね・・・
アリス:(小声)あ、あなた、チェシャ猫・・・!
チェシャ猫:君なら出来ると思っていたよ
アリス:もう、こっちは散々だったわよ・・・
チェシャ猫:あとは、あの女王陛下と上手くやることだね
アリス:それってどういうこと?
チェシャ猫:女王と話せば分かるさ。それじゃ(チェシャ猫消える)
アリス:もう、チェシャ猫ったら・・・
ミラー・クイーン:皆様、ようこそおいでくださいました。今日も盛大なパーティーを・・・・・・あら?
アリス:・・・・・・え?
ミラー・クイーン:あなた、もしかしてアリス・テロッサ?
アリス:あ、はい・・・そうですけど
ミラー・クイーン:会えて嬉しいわ。私は鏡の国の女王。ミラー・クイーン
アリス:よ、よろしくお願いいたします・・・。ところで、あの・・・ミラー・クイーン
ミラー・クイーン:女王陛下とお呼び。まぁ、今回は特別に許しましょう・・・。一体何かしら?
アリス:単刀直入に言いますと、私、もう一人のアリスと入れ替わってしまって、それを元に戻してほしいのです
ミラー・クイーン:それはいいけど、条件があるわ
アリス:な、何でしょう?
ミラー・クイーン:簡単よ。私とゲームで勝負してほしいの
アリス:・・・・・・へ?
ミラー・クイーン:実はね、私もあなたと同じだったの。変わらない毎日に飽き飽きしていたのよ。だから、私はミラー・アリスに命令してあなたを呼んだの
アリス:・・・・・・・・・
ミラー・クイーン:同じ毎日に退屈している者同士、おもしろおかしく楽しみたいじゃない?
アリス:あの・・・もし、私が負けたらどうなるんですか?
ミラー・クイーン:そうね、あなたは此処の住民となって一生を過ごすの。あなたがミラー・アリスになり、あっちはアリス・テロッサになる。大丈夫、ゲームに負けたくらいで殺そうなんて思っていないから
アリス:それは・・・負けられないですね・・・!
ミラー・クイーン:でしょう?あなたなら、この私をきっと楽しませてくれると信じているわ
アリス:・・・それで、ゲームの内容とは?
ミラー・クイーン:そうねぇ・・・まず最初はトランプゲームといきましょうか
(クイーン、指を鳴らす)
ミラー・クイーン:ただのトランプじゃつまらないから、此処に居るトランプの兵士たちを使ってね
アリス:・・・分かりました
ミラー・クイーン:ふふふ、久々にいいアリスに巡り会えたような気がするわ。さぁ、アリス・テロッサ、この私を心の底から楽しませてちょうだい!







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