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100年後も食いっぱぐれない子どもを育てる方法

排気ガスを吐いて腹ペコのバスが来る
夢の先に連れてってくれんだ どうだろう
BUMP OF CHICKEN『乗車権』

英語と、非認知能力と、STEAMを習得させて、一流大卒の肩書を与えるために、腹ペコのバスの乗車権を買う。そんな風にして権力の座に子どもをつかせようとしないことは、ある種のネグレクトに見られるかもしれない。しかし僕は、乗車権を買うつもりはない。

バスの定員は決まっていて、乗車権の値段は釣り上がっている。それに、権力は足が早い。一流企業に就職して権力を得たところで、その権力がいつまで持つかはわからない。そのくせ、権力の座はたいして居心地が良くないときている。朝から晩まで儀式に参加して、ヘコヘコとビールを注ぎながら、さらに権力を持つ人たちからのおこぼれに預からなければならない。

もっというと、日本人が日本で生活必需品を生産できなくなり、家を建てたり物を作ったりする能力が失われて、かつ外国から搾取する権力を失ったとき、日本円が役に立たなくなる未来がやってくる。そんなとき、金が舞い込むポジションにつくことだけに全ツッパしてきた人間が、なんの役に立つだろう。

そういう殺伐とした未来は決して非現実的であるとは思わない。大卒が増え続け、みんなが英語とプログラミングを学び始め、誰もやるべきことをやらなくなっている。だったら僕は親としてどんな教育を施すべきだろうか? 少なくとも、食いっぱぐれないことだけは保障したいと思うならば。

食いっぱぐれない子どもを育てるのに最も向いているのは、アーミッシュのような人々や、狩猟採集民、西成の盗人市で蓋のとれたカメラみたいな物を売るおじいちゃんなどだろう。残念ながら僕は平凡な会社員で、サラリーを恵んでもらうことで生きる、極めて頼りない存在だ。それでも、生活の工夫をしてきたことには、そこそこ自信がある。

耕作放棄地を借りてきてサツマイモを育てたり、生ごみを堆肥化したり、自分でピザを焼いたり、本棚を組み立てたり、自分でトラックを借りてきて引っ越ししたり、壊れた台車をアーク溶接をしたり、そういうことを多少なりともしてきた。金をかけずに遊ぶ方法もたくさん知っている。大量のみかんをお裾分けしてもらえる知り合いもできた。

金が役に立たなくなる時代に食いっぱぐれないのは、金を稼ぐ方法を知っている奴ではなく、金をかけずに生きていける奴だ。暮らしの知恵があって、人に頼られて、人を頼れる奴だ。金で全てを済ませてきた人間は何もできない。

僕はそういう人間を育てたいし、そういう人間になることが本人にとっても周りにとっても好ましいことだと信じている。だけらまずは、僕がそういう人間になるために、あれこれと勉強しているわけだ。学資保険には入らない。日曜大工の腕を磨いたり、3Dプリンターの使い方を学んだり、天然酵母の作り方を学んだり、そういうことをしたい。

僕の子どもは可哀想なのだろうか。わからない。どうせ、結果はわからないのだから、思うようにやればいいさ。僕だって自分の親の教育を評価するなら決して100点満点とは呼べないけれど(学費は勿体無かったので、中卒でよかったわw)、それでも別に不満があるわけではないし、そこそこ感謝している。「こうするのが一番いい」と思って教育して、あとはもう知らんw

あぁちょっと待ってくれ
やはりここで降ろしてくれ
なぁこんな人生は
望んじゃいない 望んでたのは
あぁ見逃してくれ
解らないまま乗ってたんだ
俺一人降ろす為
止まってくれるはずもねえ
BUMP OF CHICKEN『乗車権』

こんな風にならないといいね。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!