「○○専門店」と言っておけば流行るみたいな風潮

この前、豚汁専門店に行った(僕がヴィーガンなのは平日だけ)。そこで食った豚汁は、まずかった。その日までの僕は、豚汁をまずく作ることは人類には不可能だと思っていたが、その先入観を粉々に打ち砕かれた。専門店特有の余計なトッピングのせいで、死ぬほどまずかった。

豚汁専門店だからといって、その豚汁が美味いとは限らない。肝に銘じよう。

最近は、ジャムの法則やら、選択のパラドックスといった行動経済学ちっくな言葉が広まったおかげで、「なんでもあるよ!」よりも「○○専門だよ!」の方がマーケティング的に良い…という風潮が広がっている。

まぁこんな小難しい言葉を持ってこずとも、「餅は餅屋」という親しみやすい言葉もある。マーケティング的に、「うちは餅屋ですよ!」と言うことはいいことだということは間違いないと思う。

しかし、果たしてその餅屋が美味いかどうかは、その段階ではわからない。所詮は看板に過ぎないのだから。もしかしたら、肉屋が作る餅の方が美味いかもしれない。

ところで、「餅は餅屋」には例外がある。

例えば「お肉屋さんのコロッケ」だ。これはなぜか「コロッケ屋さんのコロッケ」よりも美味しそうに感じてしまう。

コロッケ屋さんも、お肉をお肉屋さんから仕入れているわけなのだから、素材は変わらないはずだ。ならば、コロッケ作りの技を磨いているコロッケ屋さんの方に軍配が上がるはずなのに、なぜか「お肉屋さん」という枕言葉の方に僕たちは惹かれてしまう。

仕入れにかかるリードタイムがお肉屋さんの方が短い‥という説明もなくはないが、いまいち説得力に欠ける。そもそもミンチ用の牛肉なんて海外からどっさり冷凍で仕入れられているものなのだから、1日や2日の保存期間の差で味が変わるとは思えない。

他にも、「牛乳屋さんのプリン」も、なぜか「プリン屋さんのプリン」よりも美味しく感じてしまう事例だね。お肉も、牛乳も、素材側の専門家を名乗る方がいいらしい。

なるほど、今の時代、調理テクニックはYouTubeで学べる。しかし、素材の仕入れルートは専門家にしか解放されていない。つまり調理テクニック軽視の風潮が広まっているのだろうか。

こうやって考えれば、まだまだ開拓されていない領域はありそうだ。「八百屋さんのヴィーガンレストラン」「醤油屋のすき焼き」「コーヒー豆商社が作るカフェラテ」。うん、いまいち流行らなさそうだ。

話が逸れた。専門店の話だった。

まぁとにかく、美味しそうに聞こえる言葉をつけることばかりに熱中しすぎるのはやめて欲しい。でも、客はそうでもしなければ食べに来ないんだよね。

ぶっちゃけ味なんてわからんし、お店の名前と雰囲気で味を判断していると言っても過言ではない。矢場とんはあべのハルカスでも食えるのに、ありがたがって名古屋の本店に行ったなぁ‥。「やはり本店こそ至高。連綿と継ぎ足されたソースと調理の技、本店にしかない歴史があるのだ‥」と冗談半分で語っていたけれど、半分は本心なのだよ。

それにしても、豚汁専門店はまずかった。もう2度といかん(僕は平日ヴィーガンだし)。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!