デザイナーやライターは「なんか違うんだよねぇ…」を予防しようとすることが間違い

クライアントワークをしているデザイナーとかライターとかにありがちな悩みは「なんか違うんだよね~」と言われて制作物を突き返されることだ。

たいてい、これを防ぐために処方されるのは「事前にクライアントに対して徹底的にヒアリングすることで、クライアントがイメージしている完成形を理解し、その完成形を再現すること」であることが多い。僕はこの風潮に意義を唱えたい。

そもそも、この風潮を唱える人が前提としている考えは次のようなものだ。

クライアントは明確な完成形を思い描いており、それは先方の上司も担当者も社長も共通認識であり、納品まで不変である。

もちろん、そんなわけがない。クライアントが脳裏に思い描いているのはたいてい抽象画にカルピスをぶっかけたようなモザイクであるし、社内で意思疎通はできておらず、納品までに意見がコロコロ変わる。

ならば、むしろモザイクのまま放置しておいた方がいい。つまり、何も考えさせないで「まぁお任せしますわ」の状況にした方がいい。むしろ変に事前に何かをイメージをさせれば、そのイメージと現実の制作物の乖離ばかりが目に止まり、余計な口出しを招く。何の先入観もない状態で完成形を見せつけた方が、すんなり通ることが多い(と、僕は感じている)。

また、2or3パターンを用意するという処方箋を薦める人もいるが、これも余計な仕事を増やすだけだ。たいてい「2個を足して割って欲しい」みたいな要望が出て来て、どっちつかずな成果物に仕上がることになる。どっちも違うと言われることも珍しくない。2パターン出してどちらかが通るときは、1パターン出しても通るし、1パターンで通らないときは2パターンでも通らない。

ただし「2パターン出せ」とクライアントから言われた時は話は変わってくる。これは「俺の足を舐めろ」という意味なので、言われた通りに従えば丸く収まる。権力欲を満たしてあげるのは、デザイナーやライターの本業なので、それはおろそかにしてはいけない。

つまり、結局「相手の気分」な訳だ。どんなに優れた文章やデザインであっても、1000通りの方法で文句をつけることができるのだから、ライターやデザイナーが最優先で取り組むべきなのは、クライアントから好印象をもたれること以外にない。クリエイティブのスキルなど二の次に過ぎない。

そして、どれだけ注意深く好印象を獲得したとしても、「なんか違うんだよね」は天災みたいなもので、不可避にやってくる。ならば、「今日は嵐だなぁ」という気分で、受け入れる他ない。それをどうにかできると思うことは、間違っている。

そもそも、実際の成果物を言葉やラフだけで完璧にイメージさせるということは不可能なのだ。不可能なことを達成しようと、おとぎ話の世界を夢見ることほど愚かなことはない。

どうせ気分だ。受け入れよう。

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