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新開誠に群がる大人たち

『すずめの戸締まり』のCMかと思ったら、新開誠にあやかって一儲けしようとする企業のCMだった‥ということはよくある。『天気の子』のときも、やたらと映画の中に実在の企業名が登場していて、興醒めしたことを覚えている。

『君の名は』も『天気の子』も、立ち入り禁止エリアに侵入したり、変電所を爆破したり、カーチェイスしたり、警察に発砲したり、目的のためなら法律違反を厭わない態度を肯定しているような映画だ。企業のコンプライアンスに違反するような気もするが、そういう指摘は全くなさそうだ。

逆に、シートベルトをつけずに運転する方がクレームが入ったりするらしい。そのあと、猛スピードでカーチェイスしているのはいいのか? と突っ込まずにはいられない。

海外版でサンジはタバコではなく飴ちゃんを加えている。海賊行為はいいのか?

最近『税金の世界史』という本を読んでいるのだが、農民たちは気に入らないことがあれば割とカジュアルに国家権力に楯突いていた。嘘か本当か中世の中国では、1分間に1.8回の農民一揆が起きていた時期があったらしいし(うろ覚えなので間違ってる気もする。『負債論』に書いてるので、誰か調べてほしい)。

日本人はデモをしないことで有名だけれど、実力行使に訴えかけるエネルギーはとっくに削ぎ落とされて「所詮それはフィクションの中の話ですよね」ということになってしまった。

恐らく、リアルタイムでテロリズムに悩まされている国ならば、『君の名は』や『天気の子』のテロ行為は、リアルで、煽動的で、道徳に反するものに思えるのかもしれない。僕たちにとってテロリズムは非現実的なフィクションに成り下がっている。

さて、テロリズムの対極にある大企業は、テロリズムの物語もコンテンツとして利用する。企業案件まみれになったYouTuberが視聴者から見放されてしまうように(赤西と錦戸は反省しろ)、企業がまとわりついたエンタメはつまらない。やっぱり金儲けのことを考えている人に魅力はないのだ。

『すずめの戸締まり』は企業にまとわりつかれているが、果たして面白いだろうか。RADWIMPSとのコラボにも癒着と前例主義的な大人の思惑を感じずにはいられないが、それでもなお新開誠のやりたいことはやれているのだろうか。『天気の子』はシナリオに口出しされた形跡がいくつか残っていたが、今回もブルシットなエグゼクティブに台無しにされはしないだろうか。

なんやかんや観に行くと思うけれど、不安だ。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!