AIは仕事を奪わない論者の僕だが、別にテクノフォビアではない。ということで、ブームに乗っかってChatGPTで少しだけ遊んでみた。
とりあえず質問したら、AIが答えてくれるらしい。AIの返答は基本的に膨大な情報をインプットしてきて統計的にそれっぽいものを出してくるだけなので、何か質問してもおそらく一般論が返ってくるはずであり、独自の見解なんてものは持ちようがないだろう。また、質問の意図を正しく捉えて、適切な返答をしてくれるかどうかも疑問は残る。
とは言っても、ネット上に情報ソースは膨大にあるため、そんじょそこらの一般論よりも洗練された一般論を吐き出してくれる可能性もある。
期待と不安が入り混じる中、思いついたままに質問してみた。
Q.国によって賃金の格差があるのはなぜ?
ふむふむ。一般論だが、悪くない。
できるコンサルみたいな感じで、1〜5の要因に分けてわかりやすく説明してくれているし、それぞれの分類もそれなりにMECE感がある。2番なんかは多少ロジックが怪しいが、許容範囲だろう。
僕が経済学部の教授だったとすれば、ChatGPTには「優」くらいはつけられそうだ。
ただまぁ、これはありがちな質問なので、2、3個それっぽい論文を引っ張ってきて、足して割るような自然言語処理すれば作れる文章だろう。まだ、これだけでは、 GPTの実力は測りかねる。
続けて質問してみよう。
Q. 現代に奴隷制は残っている?
流れるような説明。さながら、池上彰だ。
法律と実態の乖離から、その要因。改善に向けた現在の取り組みと今後の展望。これは「秀」をつけていいレベルだと思う。
ただ、これもまだまだ直球だった。
次はもう少し踏み込んだ質問をしてみよう。一般論で片付けるのが難しい質問だ。
Q. 労働者のアソシエーションではなく、企業間のアソシエーションによって、労働時間削減や過当競争抑制を進める方法は?
これは正直ビックリした。おそらく僕のような質問をする人は少ないだろうし、ネット上の情報も少ない。的外れな返答が来るだろうと予想していたが、割と的確な返答が返ってきた。
結構、質の高い文章を読み込んでいるのではないだろうか。
ナメてた。ナメてたついでにもう1問。
Q. ユニバーサルベーシックインカムによって環境問題の解決は可能か?
これもなかなかすごい。BIと環境問題を結びつける議論はそこまで多くはないため、ある程度、論理を飛躍させて接続する必要がある。それでも鮮やかに飛躍を遂げていて、説得力もある。
これはそういう論点の論文がどこかに転がっていたのだろうか? 恐らくそうだが、よく見つけてきたと思う。
次はかなり意地悪な質問をしてみよう。
Q. イスラム商人や中世ヨーロッパのギルド、近江商人はそれぞれ独自の経済システムを作り上げたが、それらはポスト資本主義の道標になるか?
いや、池上彰かよ。
「いい質問ですね」と冒頭につければ、池上彰AIになりそうだ。膨大な情報を整理して、わかりやすく体系立てて説明してくれる人といえば、池上彰なわけだが、ChatGPTは、明らかに池上彰の代替になり得る。
なかなか難しい質問をしたわけだが、その難しさを一旦受け止めながら、それでもなお類似点を取り出してきて、結論めいたものを導き出している。
正直、そんじょそこらの人間よりも、知識があるのは当然だが、国語力も、記述力もある。質の悪いAIみたいな文章を書く人は少なくないが、そういう人たちよりもはるかに質の高い文章を書いている。
一方で、あくまで「それっぽい回答」を越えた考察はない。どこかで聞いたような話を仕立て上げているだけにすぎず、思想を立ち上げることはできなさそうだ。
実際、次の質問への回答は微妙なところだ。
Q.余暇の追及を至上目的とする新しい宗教を立ち上げたいが、どうすれば良いか?
余暇の追及という部分は完全にスルーされて、宗教の立ち上げ方にだけフォーカスされている。特殊性が強すぎる要素は避ける。まるで頻度の少ない問題を捨てにかかる受験生だ。
Q. 余暇の追求によって資本主義の問題を乗り越えようとする宗教は、どのような思想体系を構築すべきか?
まぁ、そうだろうな‥という感じだ。
世間話をするのは悪くないものの、朝まで飲み明かしたい相手ではない。
Q. ヘイSiri。ONE PIECEの正体を教えて。
いずれにせよ、賢く使ってやる必要がありそうだ。