「思い通りにならなかったらすぐキレるね」と言われた話

2年ほど前だろうか。確かに僕はそのとき、その仕事相手にキレた。相手は僕の仕事内容に対して執拗にダメ出しを食らわせながらも、代案を示さない。それどころか「私はすでに正解に到達しているが、さぁあなたもここに辿り着けるかテストしてやるわ」とでも言うような横柄な態度を示している。それに腹が立ったのだ。

「これだとあなたの頭の中を当てるゲームなので、時間の無駄ですね。もうあなたの言われるままに仕事するので、具体的に命令してください」

当然、相手もキレる。一応目上の人だ。

「なんなんその態度? 完璧な仕事ができるようになってからモノ言えば?」

出た。完璧でない限り発言権が与えられない理論。残念ながら僕は、この理論を簡単に攻略できる公式を発明している。

「完璧かどうかを判断できるほど、あなたは完璧なんですか?」

あれよあれよといううちに口論は進む。最終的に繰り出された言葉が‥

「あなたは思い通りにならなかったらすぐキレるね」

‥だった。

僕はこれでも、滅多に怒らないことで有名だ。2時間遅刻されても怒らないし、ドタキャンされても怒らない。他人がどれだけのミスをしても怒らない。意味がないからだ。

ただし、無意味に搾取されているときや、こちらを騙そうとしているときはキレる。それは当然だろう。キレなきゃむしろ人間じゃねぇ。

あくまで最低限。キレなければこちらが危害を被る場合にだけ刀を抜く。それなのに、僕はあたかも「年がら年中。刃物を振り回してキレる若者」みたいな扱いを受けたのだ。なんとも釈然としない。

この喧嘩相手は、女王様気質で他人に命令し、指図し、こき下ろすことで有名だ。彼女の周りには、その気質に付き従う人しか残らない。そうでない人はそっと彼女から離れていく。

だから、反論されるという経験に乏しく、自分が絶対的に正しいという確信を強めてきたのだろう。「絶対的に正しい私」に対して反論してくる行為は、「感情のままにぶちまけられた理不尽なワガママ」と解釈される。

僕の方が立場が下なので、最終的に僕がヘコヘコ謝ってその場を収めた。だがそれ以来、彼女から仕事を振られることがなくなった。願ってもない話だ。

僕は言ってやるべきだったのかもしれない。思い通りにならなかったらすぐキレるのはお前だと。だが、そんなことを言ったところで何かが解決するとは思えない。

たまにキレて、扱いに困るやつと思わせて、そっと離れる。それだけでいい。

お前らの思い通りにはならんぞ。権力者ども。

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