人に本を勧めて、それを読ませる唯一の方法

「オススメの本ない?」という質問に答えることは、世界で最も無益な営みの一つだ。

人に本を勧めてそれが読まれる確率は、雷に打たれる確率より低く、宝くじの一等に当たるよりは高いくらいだと、ネイチャーの論文に書いてあった。

本人の自発的な購買行動を待つ場合であっても、「え、面白そう、貸してよ!」と言われて、貸した場合であっても、その確率は変動しない。

つまり、本を貸してしまった場合、それが返ってくることはない。永遠に、読書負債は返済されない。

僕はある日と思いついた。勧めた本を読ませる方法を。読書をゲーム化するのだ。内容はこうだ。

まず、僕が勧めたい本をプレゼントする。そのとき、相手にはこう伝える。

「この本を読んでもいいし、読まなくても構わない。ただし、もし読んだのなら、あなたが思うこの本の価値を、お金で返して欲しい。10円の価値しかないと思ったなら10円でいいし、定価の半額でも、定価通りでも、定価の10倍でも構わない。」

利害の構造が複雑で、人間のどういう心理をくすぐることになるのか、よくわからないが、なんとなく、上手くいきそうな気がした。

そして1回だけ友達と実験をした。僕は友達に本を買ってもらって読んだ。そして面白かったので、定価の2倍を支払った。

なにがどうなって、そうなったのかわからないが、なぜだか楽しかった。

ゲーム感覚になるのがいいのだろうか? プレゼントしてもらう側は義務ではなく評価者になることで楽しくなるのだろうか? 贈与の連鎖が人間にとって心地いいのだろうか?

人に勧められた本はある種の負債になるが、このシステムなら心理的なプレッシャーはない。読まなかった場合、読むに値すると感じない本を勧めた側に問題があったことになる。

プレゼントする側は、初めにお金を払って、しかもそれが読まれないというリスクがある。だが、人に本を貸すということは(絶対に返ってこないことを考えれば)、はじめからプレゼントするようなものなのだ。むしろ、リターンが見込めない分、この新しいシステムよりも損することになる。

つまり、両者にとって、良いことばかりだ! 最高だ!

僕は読書をする友達がそんなに多くはないので、これをまだ1回しか試していない。ぜひ、読書家の人たちには実践してほしい。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!