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タピオカ屋はおっさんに包囲されている

大阪市内の北東側、京橋という街がある。大阪から京都に向かう方向にかかる橋があるから京橋と言うのだろうか。知らないけれど、とにかく京橋という名前がついている。

京橋を特徴づけるものの1つは、昼から空いている立ち飲み屋だ。仕事をしているのか、していないのかよくわからないおっさんたちが、そこで野球中継を観ながら焼酎を飲んでいる。

どういう経緯かは知らないが、京橋界隈は小さな工務店のような会社が多い気がする。電気工事とか、造園工事とか、いろんな工事に特化したようなやつだ。おそらくそこから仕事を受けている一人親方のような人たちが、仕事のない日に昼間から酒を飲んでいるのだろう。知らんけど。

つまり、京橋とはそういう街だ。間違っても、F1層がインスタでトレンドとなったタピオカ屋を探しに来るような街ではない。

ところがどうだ。最近は駅前が再開発され始めた。ビールケースに座っておじさんが焼酎を飲んでいる店の隣に、お洒落カフェが建った。そこでMacBookでデコレートされたオフィスカジュアルマンがカフェラテに見せかけたカフェオレを飲んでいるのだ。

近くの高架下には「京橋の電柱を地下に埋めます」と書いてある看板が立っている。電柱をなくしたところで京橋は京橋だけれども、なるほど、つまり当局は京橋をB級どころかD級くらいのシャンゼリゼ通りに変えたいのだろう。

果たしてその試みはうまくいくだろうか。似たような運命を辿った天王寺という街があるが、あそこもカオスは路地裏でしぶとく生き延びている。西成も大通りに巨大資本がおしゃれホテルを建て始めたが、一歩外れればまだまだカオスだ。

結局、おっさんは死なない。どこかの道端でビールを飲み始めて、歩きタバコをして、立ちションをするだろう。そして、夜になればF1層のナワバリににじみ出てきて酔っ払いながら寝っ転がる。当局の計画を台無しにする。

僕は、都会のこういうところが好きだ。お洒落なシティのイメージに押し込もうとして、そこから溢れ出た人たちが形成するカオスが好きだ。

街っていいよね。レイチェルカーソンとかマークボイルが言うような自然へ帰ろうという言説ばかりを摂取しているんだけれど、やっぱり僕は街で育った人間だなぁ。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!