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資本主義が悪いよ、資本主義が

ダイハツが試験結果を偽装したことは、資本主義下では「起こるべくして起きた」としか言いようがない。

利潤追求を最優先に考える株主は経営陣に過密スケジュールを強要し、経営陣は現場にそれを強要する。過密スケジュールで適正な基準を守ることは不可能であったなら、経営陣に生殺与奪の権を握られている現場の最適解は「そのスケジュールでは無理ですね」と反論することではなく、偽装以外にあり得ない。

そもそも過密スケジュールを強要しなければならないのは、市場に競争があるからだ。早く、安く、たくさんの商品を届ける競争は必然的に加熱し、現場に皺寄せがいくことになる。僕はここでブランディングとか、体験価値とか、ストーリー消費で競争の外側に出ろ的な、西野亮廣のようなお説教を垂れたいわけではない。

その手のブランディング合戦が結局のところ不毛なブルシット・ジョブを生むことはもはや明らかだ。ストーリー消費なんて、別に誰も求めてはいない。ストーリー消費か、労働時間の削減のどちらかを選ぶとして、前者を選ぶ人などいるはずもない。ならば、針の穴を通すようにしてわざわざ金を儲けさせる必要はない。個人や各企業の自助努力や経営センスに責任転嫁するのをやめて、市場のメカニズムや資本主義のシステムそのものに問題があると考えるべきだろう。

しかし残念ながら、ダイハツの事件を見て「ほーら、だから言ったろ? 資本主義なんて碌なもんじゃない」としたり顔で指摘する人物は見かけない。左翼にすらいない。

あくまで経営陣や管理職のモラルの問題に矮小化されるのであり、資本主義や市場原理の持つ根本的な欠陥であるとみなされることはない。あくまで、資本主義の公正な精神に反した外れ値的なイレギュラーとして処理される。

しかし、繰り返すが資本主義の利潤追求原理に則れば、不正を犯すことは最適解となる。たまたま今回は見つかったものの、隠し通せたならそれは最適解なのだ。どうせ他のメーカーもやっていて、他のメーカーは隠し通しているだろうに。

考えてみればおかしな話だろう。資本主義は人間が利己的であることを前提としたシステムだ。資本主義を批判する左翼は「ふん、人間は利己的なのだから、性善説を前提としたシステムはうまくいかない。歴史を見れば明らかだろう」などと現実を知らないお花畑扱いされる。そのくせ資本主義は、不正で溢れ返らないように誰もが良心を働かせないとまともに機能しないのだ。これは資本主義が孕む最大のスキャンダルの1つだろう(資本主義のスキャンダルは他にも無数に存在するわけだが)。

そもそも、共産主義国の失敗なんて普通の人は片手で数えるほどしか知らない。にもかかわらずそれらは毛沢東やスターリンといった指導者のモラルの問題とみなされるのではなく、共産主義が持つ根本的な欠陥により引き起こされたと即座に判断される

これはほぼ信仰告白と言っていい。自分が信仰するシステムの失敗は例外であり、自分が否定するシステムの失敗は当然の帰結とみなすわけだ。

僕は資本主義嫌いなので、こういうときは声を大にして言いたい。ほーら、資本主義なんてやっぱりゴミじゃん、と。

とはいえ、さながら海列車を発明したことで無罪となったトムさんのように、資本主義はテクノロジーの進歩という功績によって免罪となる傾向にある。資本主義が本当にテクノロジーの発展をもたらしたのかについては議論の余地があるが、まぁ細かいことは置いておこう。いずれにせよ、資本主義以外ではテクノロジーが発展しないと考える道理はないのだから、そんなことで無罪放免とはならないはずだ。

というわけで左翼諸君。こういうときは団結して資本主義をディスるのだ。資本主義が悪いよ、資本主義が。

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