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クソどうでもいい理論シリーズその3 〜傘は人類に必要ないことを証明する〜

初めに断っておく。これから僕は傘が人類にとって必要ないことを証明する。これを読んだ人が、これまで傘メーカーのプロパガンダに騙されてきたことに怒り狂い、傘メーカー各社に火炎瓶を持って突入していくことは、もはや避けられないだろう。

だが、かつて人類が奴隷制を葬り去ったように、傘も歴史の闇に葬り去らねばならない。例えそこに血が流れたとしても、である。偉大なる歴史を書き換える英雄の血は大地に降り注ぎ、記憶される。それを妨げる傘はもう必要ない。

では、始めよう。

まず、なぜ人は傘をさすのか、考えてみたことはあるだろうか?

そう。「濡れないため」だ。

もちろん、光があるところには影がある。メリットがあるところには必ずデメリットがある。

では、「濡れない」というメリットを享受するために、僕たちが払う代償はなんなのだろうか?

雨が降る。傘を持って家を出る。濡れない代わりに、傘を買うためのお金がいる。荷物が増える。傘を丸めるときに手が濡れて不快な気分になる。トイレで置き場に困って途方に暮れる。飲食店に入るとき、謎のビニールの袋に傘を入れることを強いられるも、上手く入れられずイライラする。椅子に引っ掛けた傘がこけてイライラする。それを直した途端にもう一度転けてもっとイライラする。結局、地面に倒しておくも踏まれたり、椅子を引くときに引っかかってイライラする。挙げ句の果てに忘れて帰って、また余計にお金がかかる。そのくせ家には大量のビニール傘が溢れかえっていて、置き場に困る。

これだけのデメリットを補って余りあるほどのメリットが「濡れない」ことしか取り柄のない傘にあるだろうか?

よろしい。仮にあるとしよう。「濡れないこと」にそれだけ人類が重きを置いていると受け入れよう。しかし、このことを受け入れてもなお、傘は人類に必要ないという決定的な証拠がある。

それは「傘をさしても、どうせちょっとは濡れる」という動かぬ事実だ。

ご自慢の「濡れない」という機能すら満足に果たせないくせに、傘は初めに挙げた膨大なデメリットを引き連れてくるのだ。どうやってその存在を正当化できると言うのだろうか?

既に傘の立つ瀬は失われた。だが、これだけ丁寧に証明したところで、天動説やインテリジェンスデザイン論が根強く蔓延っていたように、傘メーカーのプロパガンダによる洗脳を完全に解けたとは言えないだろう。だが、次の証明を聞いても、「傘が必要」と言える人間は、恐らく存在しない。

先ほどの「濡れない」というメリットは、あくまで雨が降った日にしか発揮されないメリットだ。雨が降らなかったときのことを考えてみよう。あの膨大なデメリットだけが僕たちを襲いかかった挙句、傘はなんのメリットも提供しないのだ。雨が降っても些細なメリットしか提供せず、雨が降らなければ文字通りのお荷物でしかない。さらに「雨が降らなかったのに、なぜ俺は傘を持ってきたのだ」という自責の念を味わわなければならないというデメリットも追加で生じるのだ。

もう傘の存在は崖っぷちにいるのではない。既に崖の下に落ちている。

恐らく、生まれて初めてカントやニーチェを読んだときと同じような、常識を揺さぶられる経験に、きっとあなたは混乱していることだろう。

だからここで一度整理して考えてみたい。厳然たる数学により、この事実を科学的に証明しよう。

a.濡れることによる幸福度の減少=-10
b.傘が荷物になることによる幸福度の減少=-2
c.傘の購入、保管にまつわる幸福度の減少=-2
d.ちょっと濡れることによる幸福度の減少=-2
e.傘を持っているのに雨が降らないイライラによる幸福度減少=-2


①傘を持っていない場合
1.雨が降らない
幸福度=±0
2.雨が降る
aより
幸福度=-10
12より
μ①=-5

②傘を持っている場合
1.雨が降らない
b、c、eより
幸福度=-6
2.雨が降る
b、c、dより
幸福度=-6
12より
μ②=-6

①、②より
μ①>μ②

よって、傘を持たない方が人類の幸福度が高い。

Q.E.D.

さて、蟻一匹も通らない隙のない証明によって、反論の余地は完全に失われた。

世界の歴史は今この瞬間に次のステージへと移った。これ以上、傘はいけしゃあしゃあと世界に存在できるだろうか? これ以上の罪が、果たして想像できるだろうか? いや、できない。

僕は「万国の労働者たちよ。僕たちを洗脳し、支配する忌々しい傘を今すぐにへし折ろう」などと呼びかけることはしない。耳をすましてみよう。そんなアジテーションを待たずとも、人々の怒号と、傘をへし折る音が聞こえてくるだろう。

バキッ。ボキッ。

さぁ、傘を捨てて、革命の血を浴びようぞ。どうせ傘があっても濡れるのだ。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!