見出し画像

アイデアは、アイデアにすぎない【雑記】

ホリエモンがどこかで「アイデアだけには価値がない」と言っていた。僕もそう思う。

ついつい僕たちは、最高のアイデア1つあれば周りの人々が「それだ! あなたは天才だ! いますぐ私がプロジェクトに必要な準備を進めてあなたの天才的なアイデアを形にしてみせよう!」といきり立って、すべての歯車が回り始めていく様を想像してしまう。

そして、自動的に動く歯車を遠くで眺めながら「あぁ、そこはこうした方がいいよ」とかなんとか小言を挟むだけで、自らが思い描いたプロジェクトは完成に近づいていく。最終的にはすべての手柄がアイデアの発案者である自分に帰せられながら「助けてくれた人々のおかげです」などと謙遜しながらヒーローインタビューを受けつつ、ちゃっかり自分の銀行口座に大金が振り込まれている。そんな未来を思い浮かべてニヤニヤするのだ。

しかし、どれだけ優れたアイデアであろうが、そのような事態は起きない。アイデアを出す人はごまんといるが、実際に行動してくれる人は少ないのだから。その現実を思い知ったニヤニヤ男は「俺のアイデアは天才的なんだ‥これを試しさえすれば、俺は成功できるのに、どうして周りの人たちは助けてくれないんだ?」などと自意識と他責思考を風船のように膨らませていくことになる。

もちろん、仮に彼が実際に行動してみれば、アイデアには無数の欠陥があることが発見される。そして臨機応変な軌道修正が必要であることがすぐさま明らかになり、彼の膨らんだ風船は大きな失望と共に弾け飛ぶことになる。

本当に楽しくなるのは、その先だろう。現場で臨機応変にアイデアをいじり倒していくプロセスだ。そのプロセスこそがプロジェクトの醍醐味であり、価値の源泉でもある。そのときには自意識も、他責思考もどこかに吹っ飛んでしまうだろう。意識高い系が「行動しよう!」と自動機械のように繰り返すのを見て冷ややかな視線を送りがちな僕ではあるものの、その言葉には間違いなく真理が含まれていると思う。

アイデアを出すことは大切だ。思いもよらぬブレイクスルーに繋がる可能性もある。だが、それはきっかけに過ぎない。試されなければ、アイデアの価値は確定しない(「シュレーディンガーのアイデア」とでも呼びたくなる)。なら、無責任にアイデアを出すだけではなく、行動にコミットすることこそが、プロジェクトを楽しむ秘訣なのだと思う。

プロジェクトを楽しむ秘訣は他にもある。

僕たちは他人の出した口先だけのアイデアに対して、そこまで情熱を傾けられない傾向にある。誰かが会議室でビジネスアイデアを出したとき、真っ先に出てくる言葉は「でもなぁ‥」とか「それって〇〇でいいんじゃないの?」だろう(個人的に「〇〇でいいんじゃないの?」理論はレンタカーとカーシェアの両方が存在する事実を見過ごしていると感じる)。

もちろん最近は、そういう人間の否定しがちな傾向を誰しもが理解した結果、「否定しないようにしましょう」というマナーが普及し、実際に「でもなぁ」から反論を始める人は減った。それでも「でもなぁ」が「なるほど」とか「とりあえずメモしましょうか」みたいな言葉に変換されただけで、他人のアイデアに価値を感じにくいことは変わらない。

なら、その中途半端なアイデアを周りからあれこれ塗りたくるしかない。他人が発端の雑なアイデアに、自分のデコレーションを施していく。その目的はアイデアを洗練させるためだけではなく、自分が手を加えることで、そのアイデアが自分(たち)のアイデアに変えて愛することにある。何かにコミットするにはは欠かせない。

みんなで好き放題飾りつけたアイデアなら、きっとみんなが大切にできる。結果的にはじめのアイデアはケーキのスポンジ程度の存在感に収まっている。スポンジは欠かせない重要なパーツだ。だが、すべてではない。

そして、みんなで飾ったアイデアを、またみんなで実行する。ドタバタでトラブルだらけになる。そして、臨機応変になんとかする。そのプロセスはさながら文化祭のように僕たちにとって最高の思い出になる。

ただし、「いつでも抜けられる」という状況が欠かせないことは用心すべきだろう。こういうプロジェクトは全員が自発的に取り組めているうちはいいが「ちょっと男子、真面目にやってよね」みたいな輩が現れ始めると、まわりのやる気は損なわれていく。「真面目にやってよね」と命令されることにより、自らの意志でプロジェクトに参画しているという手応えは損なわれ、逆に真面目にやらなくなってしまう。

彼のモチベーションをもう一度あげることはむずかしい。現代のマネージャーはモチベーションをあげることに躍起になり、マネジメント理論は一大産業と化しているが、モチベーションをあげようとする時点でもう手遅れであると僕は思う。だったら彼はその場を離れ、自発的なモチベーションで取り組むことができる別のプロジェクトを見つけた方がいいのではないだろうか。

マルクスは、構想してから行動することが仕事の醍醐味だと言ったが、きっとそれは正しい。自分たちで考えて実行する。やっぱり僕はそれがいい。口だけ出すより、言われるがまま手を動かすより、それが一番楽しいと思う。


※僕たちの社会のつまらない労働が消え去って、イキイキしたプロジェクトで溢れかえるためにはベーシックインカムが必要であると僕は考えるわけだが、それはまた別のお話。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!