他人の目が気にならなくなる簡単な方法

「他人の目を気にしない」とは、文字通り「他人の目を気にしないこと」を意味するわけではなく、「他人の目を気にしていない姿を、他人に見せつけること」を意味するわけだ。

だから、見るからに「俺は他人の目を気にしていないのだ」という振る舞いを他人に見せつけることを目的にしてみるといい。

その姿を見れば「なんだこいつは、けしからん!」と思う人もいるだろうし「信念を持っていてかっこいいな」と思う人もいるだろうし「なんやコイツ、変わってるなぁ‥笑」と思う人もいる。

ゴミ扱いされるか、英雄扱いされるか、分類不能にカテゴライズされるか、どれかの反応を引き出せば「他人の目を気にしない」は成功だ。逆に「毒にも薬にもならない」という人物評がくだされれば(それは人物評がくだされることすらないという意味だ)、「他人の目を気にしない」は失敗となる。

このように考えれば、何をすべきかが明確になる。あえて常識はずれの異常行動をとればいいのだ。例えば、サングラスをかけて学校や会社に行くとか、毎日マクドナルドで爽健美茶を単品で注文するといったことだ。

もちろん常識はずれのことをするためには、それを正当化するためのロジックが必要となる。なぜなら、自分自身で正当化できなければ、常識はずれの行動を貫き通すのは心理的に難しいからだ(サルトルが「我々は決して悪をなし得ない」といったのは、多分そういう意味ではないが、そういう意味ということにしておく)。

ならば、他人の目を気にしないためには、ロジカルシンキングが重要なのかもしれない。常識はずれの行動を正当化するためのロジカルシンキングだ。

練習してみよう。なぜ、毎日マクドナルドに行って、爽健美茶しか頼まないのか? マクドナルドとは最も低価格で都会に居座ることのできる店舗だ。スターバックスに居座るなら最低でも300円かそこらを徴収されるが、マクドナルドなら100円ぽっちの金額で居座ることができる。だからマクドナルドを選ぶのだ。では、なぜ爽健美茶か? 健康面か、アニマルウェルフェアか、環境問題か、都市伝説か…ハンバーガーを食べない理由ならいくらでも思いつくことができるだろう。コーヒーでも、コーラでもない理由は、まぁフェアトレードの話とか、適当に調べればいくらでも根拠は出てくる。

サングラスはどうだろうか? 少し調べれば「自己視線恐怖症」という症状が存在することがわかった。自分の視線で他人を不快にさせることを極端に恐れるという症状だ。ならば、「自分は自己視線恐怖症なのだ」と思えば、毎日サングラスをつける理由が生まれる。

もちろん、行動の根拠は他人に説明する必要はない。なぜなら、それは自分が心理的に異常行動に納得するための理論武装だからだ。それに、他人に説明してしまえばそれを覆す根拠を提示されるなどして、自分の信念が揺らいでしまう恐れもある。だから、何を言われても反論できるという自信が持てるようになる限りは他人には説明しない方が好ましい。

説明しないとどうなるか? あなたが米津玄師やスティーブジョブズなら、周りの人々は「何か理由があるに違いない…」と勘繰ってくれるわけだが、そうでないのならゴミ扱いされること必至だ。

ゴミ扱いされると、社会生活に支障をきたす恐れもある。会社をクビになるとか、そういう恐れだ。ここでは「最悪、生活保護をもらうか、刑務所に入れば良いか」という心理的安全性を確保することが重要になる。僕は刑務所に入ったことはないけど、意外と楽しそうだと思っている。大杉栄という大正時代の人物は、刑務所を語学学校として捉え「一犯一語」というスローガンのもと、膨大な時間を語学の勉強に充てた。そういう姿を参考にしよう。

実際そこまでの悲劇は大抵起きない。好きなように振る舞っても、意外と会社をクビになることは少ないし、友達を失うことも少ない。怒られても、適当に流そう。反論するのがむずかしいなら、適当に流して、こっそり同じ行動をもう一度とればいい。少し時間をあければ、同じ行動をとることはむずかしくない。

いつか「何を言っても無駄な、理解不能な奴」という評価がくだされることになる。そうなれば出世コースからは外れるかもしれないが、出世コースから外れるくらい、刑務所に入ることに比べればなんてことはないだろう。

稀に、「常識はずれに常識的な行動」をとってみるのもいいだろう(例えば、日経新聞を購読してみるとか、毎日革靴を磨いてみるとか)。ますます周囲を混乱させることができる上に、「意図的に他人と違う行動をとっているわけではなく、自分が思う通りに行動しているだけに過ぎない」というアリバイづくりにもなる。

そうしているうちに、だんだん他人を混乱させることが快感になってくる。「俺は特別な人間なのだ」という実感が湧き上がってくるのだ(そういう人は口では「みんなもっと他人の目を気にしなければ良いのに」と言っているが、実際にそうなることを望んでいるわけではない。「他人の目を気にしない人が他にいない」ことが彼の特別さの源泉だからだ)。

そろそろ理解してきただろうか。あなたはゴミ扱いされるに値する特別な人間だ。ゴミ扱いしてくる奴は、真理を理解していないがゆえに、あなたの行動を理解できないバカなのだ。そのことを裏付ける根拠ならいくらでもある。ゴミ扱いしてくる奴の知能の低さを証明するエピソードならいくらでも用意できる。そして、あなたが正しい根拠も、いくらでも用意することができる。

ロジックを用意して、特別なあなたを楽しもう。

1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!