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【シーソーシークワサー 31平静の装 】

【シーソーシークワサー 31平静の装 】

 「自分の全てを見られているみたいで恥ずかしい」
 絢はそう言った。そこにあるのは正しく絢の日常で、キッチンの流し台に残されたティーバッグの乾き具合や、カーテンレールに引っ掛けられた下着に、腹巻、厚手の靴下も、絢の一部だった。

 絢はそれに対して、何かを取り繕ったり、隠すこともしていなかった。「少し片付けるから待って」とドアの外で凡人を待たせたわずか90秒で、何を片付けたかったのかは、よくわからない。整っていた玄関に比べて、奥の部屋には生活感に溢れていた。

「散らかっているでしょう?」
「うん、予想外に」
「嫌になった?」
「いや、全然。いきなり来ちゃったわけだし。一緒に片付けようか?」
「あ、嬉しいけど、お構いなく。ご飯作るからテキトーに寛いでて」
「うん、じゃあそうする」 

 確かに散らかってはいるが、どことなく清潔感のある空間だった。そのどこにいるのがベストなのか、凡人はまだ迷っていた。衝撃的な再会で、ハグまで交わしたつい30分前の感覚が嘘のように絢の日常に吸い込まれていく。凡人がいてもいなくても同じように、時間は流れるのかもしれない。

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