恋人とのお別れが_最高の親友を連れてきた話

恋人とのお別れが最高の親友を連れてきた

2月14日、バレンタインデー。
世の中の浮き足立つ恋する人々を横目に、今日はあえてほろ苦〜い、
だけど今でも私にとって、とても大切な思い出を綴ろうと思う。

20代の終わりの頃。
私はとっても、とっても痛い失恋をした。

相手は少し年上の社内の先輩。
当時いた会社は、なぜか噂話が大好きなお姉さまたちが多く、
そんなお姉さま達にバレて、ワイドショー的なネタにされてはたまらん、、と、二人で相談した結果、誰にも内緒でお付き合いをすることになった。

バレないように、
随分とヘンテコなところで、
ニッチなデイトをしていたと思う(笑)。

今となっちゃぁ、なんであんなにコソコソしてたんだ、って思うけど、
その時は、それ自体がスリルであり、余計に楽しかったんだろうな。

でも、彼は付き合い始めてすぐ、
海外留学を目指して猛勉強を開始した。
社内で選抜されるために厳しい審査があり、
当然、海外の大学の試験をパスしなければいけない。

だから、なかなか会うことができなかった。
20代なんて、恋愛がしたくてしたくてたまらない、って時期なのに、一人で過ごすことが多かった。

寂しい、もっと会いたいって言いたかったけど、
目標のために頑張る彼の足を引っ張っちゃいけんと、気づいたら我慢ばかりの日々だった。

そしてついに、彼は見事試験にパスし、留学が決まった。
私はそのあたりからドキドキしていた。

どうしよう、結婚して一緒に行こうって言われるかな。
それとも、2年間日本で頑張って待ってて、って言われるかな。
どっちでもいい。
彼がなんて言ってくれるか、楽しみに待とうって思ってた。
本当に浮かれポンチだった。

ところが、彼がまさかの提案をしてきた。
「別れよう」と。

いやいやいや、、
嘘でしょう。

いやいや、、
え?!?!

勉強のし過ぎで、やられちゃったのかな?
えっとー、、、理解ができないんだよな。

って、パニックになり、そのうち、我慢火山が大噴火を起こした。
じゃぁ、今までの「待て / お預け」のこの期間は一体なんだったんだ?
いっその事もっと早く振ってくれたら、次の人と付き合えたかもしれないじゃないか。

短時間にいろんな感情が浮かび、カーニバル状態だった。
そんな中ついに、「納得できない」という怒りのカードをきろうと思って、
顔をあげたその時。

彼が泣いていた。
初めて見る、彼の涙だった。

それを見て、もう何も言えなくなった。
受け入れるしかないのか、と。
決して器用なほうではない彼は、留学(勉強)と私を一緒に背負うことができない、って思ったんだろうなと、その涙で一気に理解した。
その時点でブリンブリンに振れてた感情メーターがゼロになった。

そうして彼とお別れすることになった。
ただ、留学までの残りの期間も、会社では顔を合わせなければいけない。
それが苦痛だった。

そんな中、週末のよく晴れた日に、
会社のイベント(球技大会)が、横浜で開催された。
そして、私も彼もあろうことか、その実行委員側として、参加することになった。

本来は、そういうイベントごとは大好きなタイプだったけど、当然そんな精神状態じゃぁ、楽しめるわけがない。

一方、彼の方はと言えば、キャッキャとボールを追いかけ、社員のみんなと楽しそうにプレーしているではないか。

ありえない。
もう消えたい。

そう思って、イベント終了後に、みんなの打ち上げのお誘いをゆるりと断り、一人お先に会場を後にすることにした。

そして、そのまま帰宅せず、何を思ったか、急に海を見に行こう、と思い立った。
海に行って、思いっきり泣いてやろう、と思ったのだ。

でも海に着く前に、電車を待ってホームにいる時から、半べそをかいていたと思う。

そこに、当時同期だった、Aちゃんがやってきた。
それまでは、特に仲が良いというわけではなく、楽しい同期の中の一人、くらいの認識だった。

彼女は、私を慰めようと思って、追いかけてきてくれたのだ。

「海、見に行こうと思ってさ。」と言う私に、
「任せて。私ここが地元だから詳しいよ。」と行って、二人で江ノ電に乗って、鎌倉高校前駅まで行った。

初めて降りた駅だ。
目の前に、湘南の海がドドーーーンと広がっていて、とても素敵だ。
だけど、季節は晩秋。
サーファーもいなくて、穏やかで、少し物悲しい感じもする。

思い切り泣くには、これ以上ないシチュエーションだった。

電車を降り立つと、彼女は、温かいミルクティーを買ってくれて、
半べそをかく私を静かな海へ連れて行き、二人で腰を下ろした。

何があったの、とか。
良かったら話してみて、とか。
彼女は一切言わず、ただ私の横で、おいおい泣くのを黙ってそっと見守っていてくれた。

ミルクティーみたいに、温かい人だった。

その時は、失恋が辛くて、泣いていたはずだと思うけど。
その日から、彼女は私の親友になった。

今でも、あの日のことを鮮明に覚えている。
だけど、心の中にあるのは、ビターな失恋の痛みではなく、
彼女に対する温かい気持ちだ。

恋もいいけど。
友情もまたいいもんですね。

おわり。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?