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冬を眠ろう。

電車に乗ってひとりでキャンプに行ってみて、それを思い返すと、「楽しかった」と「荷物が重かった」のふたつが感想の大部分を占める。「楽しかった」は、外での調理楽しい、焚き火楽しい、外でビール飲むの楽しい、冬の夜を耐え切るの楽しい、とどんどん細分化されていく。一方で、「重かった」はそれ以上細分化はできずに、ただただしんどかった記憶として私の中に鎮座した。
「重かった」を是正せねばならない、と思った。そうしないと、もうキャンプには行かない。

まず、道具の軽量化を考える。テント、寝袋、焚き火台、嵩張って重たいのはこれらだけど、大して使っていない道具を買い替えるのは気が引ける。
テントは2.6Kgくらい。重い方ではないが軽い方でもない。ぎりぎりリュックサックに入るサイズだ。登山系のメーカーからは1Kgを切るようなテントがいくつも出ているが、どいつもこいつも無駄に高価だ。
寝袋も同じくらいの重量。ただ、こちらは大きすぎてリュックサックには入らないので、手提げに入れて持ち運ぶことになる。この寝袋は化学繊維。化繊以外には羽毛の寝袋があり、こちらの方が遥かに軽くてコンパクト。私が持っている化繊の寝袋と同程度の耐寒性能のものでも、半分以下の重量、三分の一以下の大きさのものがごろごろある。しかし、高い。3万円くらいからという感じ。しかも羽毛は水に弱く扱いも難しいので、寝袋用カバーを検討することになる。耐寒性能の劣る安い寝袋を買って厚着をして寝るという選択肢もあるが、「凍死しない」というテーマからは遠ざかってしまう気がする。
焚き火台は1.6Kg。重量で言えば、テントと寝袋に劣るが、直径45㎝の円形の鉄板のためリュックサックには入らず、嵩張る。でも、焚き火台としてはとても気に入っている。薪を置く面がフラットやから地面のように薪が組める。置く面が広い組み方もバリエーションを持たせられるし、大きな薪でもガンガン載せれる。30Kgまで載せれるので、テンション上げてガンガン載せても大丈夫。もっと軽くてコンパクトな焚き火台は沢山あるけど、火床が狭くて、キャンプ場で売っている薪は切らないと入らない。なによりも、大きい方が楽しい。

結局、焚き火台をコンパクトなものにした。そして、折りたたみのノコギリを買った。薪は切るという気持ち。むしろシルキーゴムボーイを買ってしまったので切りたいという気さえする。
テントはリュックに入るので許容とした。重たいのは手提げかばんであってリュックではない。リュックは結構重くても大丈夫。
寝袋は、高いので断念した。安い羽毛もあることにはあるけど、化繊ほどでは無いにしろ嵩張るし、鳥の獣臭がするものがあると聞いたのでおののいてしまった。とりあえず、今持っている寝袋の耐寒性能には満足しているので、こいつとやっていくのだ、という気持ちになってきた。重くて嵩張るけど。
あとは薪と水を現地調達することにして、使わなかったものや予備のものを極力持っていかない。
ガスバーナーとガス缶も持っていかない。ガスバーナーは便利すぎて、家とかわらない気持ちになってしまう。嵩張るし。そのかわり、ウッドストーブをひとつ買った。重量も嵩もあまり変わらないけど、焚き火の方が楽しい。

重いか軽いかでいえば、重い。でも、前回に比べればだいぶんマシだ。特に手に持つ分量はずいぶんと減った。
今回はどうしてもすき焼きが食べたかった。
卵が割れたら嫌だなという懸念はあったのだけど、卵ホルダーがアウトドア用品店に売っていたので解決した。アウトドア用品店に行くと思うのは、「こんなんあったらな」と思う「こんなん」は、だいたい商品化されているということだ。卵ホルダーはプラスチックのハードケースとシリコン製のソフトケースがあって、ソフトケースはそのまま鍋に入れてゆで卵が作れる。すごいな、と思いながら、ハードケースを買った。

前回よりも移動はスムーズだった。もたもたして改札で閉じ込められることもない。リュックサックに、寝袋以外の重いものを集約したので腕も無事だった。リュックサックも重いには重いが、背負っている分には大丈夫。ただ、ペラペラの安物なので、背負わずにリュックを持つと、(ちぎれそう…)と不安になる。千切れたら立ち直れないなと思いながら、電車を乗り継いで河川敷のキャンプ場にたどり着いた。

サクッと設営をして、薪と水を調達した。小さな焚き火台とウッドストーブに入るように、薪をノコギリで切り、ナイフで割った。ナイフで割るのは難しくて、いらいらとやっていたら、隣のテントの青年が「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。すみません、危なっかしくて…。「カイロとかもいっぱいあるんで、よかった声をかけてくださいね…!」と言ってくれる。よい人だ。彼は幸せになって欲しいと思う。

すき焼きは深型のシェラカップで作る。600㎖入るが、すぐに食べきり、肉や野菜を足してせわしない。たのしい。卵は無事に原型を保っていた。ビールを飲み、焼酎を飲み、ビールを飲む。銀河高原ビールは夜の河原で飲むとなんかうれしい。
気温は明らかに前回よりも下がっていて、23時の段階で氷点下になろうとしていた。それでも、寝袋に入ればぬくぬくで、無敵感がある。Twitterをぼうっとみていると、気がついたら電気をつけたまま寝落ちしていた。

朝目が覚めるとテントが凍っている。生きた!という実感は楽しい。寝袋はぬくぬくで問題はなかった。朝ごはんに惣菜パンとレトルトのじゃがバター、パウチの海老のビスクを食う。テントが乾くのを待つ間にウイスキーを飲み、ウッドストーブで餅を焼いて善哉を食べた。
隣の青年はバイクに乗って帰って行った。事故らぬよう祈る。

前回よりはスムーズに撤収を終え、前回以上にだらだらして、前回と同じ時間の電車で帰路に着く。軽くなったとはいえ、リュックはパンパンで強度はやはり不安だ。まあ、信じるしかないので、ほろよいの身体を電車に乗せた。

短歌は何首かできた。

21.12.28-29
焚き火台:ミニフラットパック(UCO)
ウッドストーブ:ソロストーブ・タイタン(Solo Stove)
寝袋:スリーパーエクスペディション (Snugpak)
テント:ツーリングテント(Azarxis)
バーナー:オーリック(キャプテンスタッグ)
リュック:50リットル(HOMIEE)
などなど…

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