「三千円一本勝負」

WEDNESDAY PRESS 029

Fm cocoloの「門上西林物見遊山」(土曜日23:30)では、コピーライターの西林初秋さんと僕が、毎週テーマ沿って、それについて語るという番組で、そのテーマに応じた曲をそれぞれ一曲かけるという趣向である。毎月の最初の週は「映画」がテーマとなる。といっても新作について語ることはほとんどない。というのは他のDJが番組内で新作紹介するからだ。僕たちは好きな監督や俳優、ときにはロードムーヴィー、ホテルなどがテーマとなる。
一方最終週は「三千円一本勝負」といって二人が古本屋に行き、三千円以内で購入した本について語るということになっている。月に一回、本を買うのに三千円の投資。これは毎回考える。数軒行きつけの古本屋があるが、そこに行けばだいたい好みが優先される。つまり意外な発見が少ないともいえる。むしろ「ブックオフ」や旅先の古本屋では、思いもよらない本に出会うことがある。
金沢の「あうん堂」という古書店では、高知の四万十川プロジェクトの「水」という分厚い雑誌を見出したり、第三の新人(今や死語)と呼ばれた小島信夫、安岡章太郎、小沼丹、近藤啓太郎、三浦朱門、吉行淳之介などの書物が目に触れた。すっかり忘れた存在であり、すべてではないが概して私小説が多く、戦争物を描くにしても大将など位の高い人を描くのではなく、むしろ一兵卒の心情にスポットを当てるようなスタイルと評していた。どこか共感を覚えるところがあり、彼らの作品を少し読んでみようかという気持ちになった。
「三千円一本勝負」は新たな読書体験を呼び込んでくれるきっかけである。

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