「餅は餅屋」

WEDNESDAY PRESS 050

シェフは「これ、僕がキノコ仙人と一緒に山に入って採ってきたキノコです」と大きな笑顔で話す。皿に鮮度のいい天然キノコがたっぷり入っていた。見るからに旨そうだ。
神戸市北区といっても、三宮からクルマで約30分ほど(大阪なら1時間、京都なら1時間半)走った里山に今夏オープンした「SETTAN」というオーベジュ(宿泊は一室)のオーナーシェフ・吉田繁雄さんである。こんなに豊富なキノコが採れるのだと驚いていると「山に入るときは、決して一人では入ってはいけないのです。仙人の方と一緒に入ります。それがルールです」とも語った。
考えれば、キノコが生息する場所は仙人のみが知る。それを勝手に収穫すれば、キノコはすぐに無くなる。誰かにその場所を教えたりすれば乱獲の可能性も多々ある。山を守る、キノコを守るにはこのキマリを厳守することが大切なのだ。

吉田さんは「僕は畑を耕し野菜を作ることはしません。作っている方から買って、それを料理に変えるのが僕の仕事。それをピクルスにしたりして差し上げるのです。秋になると栗をたくさんいただきます。それを僕なりに甘露煮してあげたりします。それが里山でレストランをやることの意味でもあるのです」と力強い表情で思いを話した。

素敵な気持ちである。これを聞いてなんだか、すごく嬉しくなった。決して料理人が野菜を作ることを否定しているわけではない。そして「餅は餅屋」という言葉を思い出していたのであった。

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