コーチリフレッシュ研修へ行ってきました(講師:鈴木 良和氏)

京都バスケットボール連盟が開催するコーチリフレッシュ研修に行ってきました。
講師は女子バスケットボール日本代表アシスタントコーチの鈴木 良和コーチでした。先日ハンガリーから帰国したはずなのにスペイン戦、ハンガリー戦、カナダ戦の貴重な話もありました。

講習の主な内容は「主体性を育てるコーチングについて」とあり、なるほどなぁ。と思う内容がたくさんありました。
1.よく似た言葉の定義を考えて整理する
2.勝ち負けにこだわることと勝利至上主義
3.勝ち筋が見えているか
4.3つの局面からみる勝ち筋
5.集団集中状態
6.バスケットボールと日常

1.よく似た言葉の定義を考えて整理する。
直観とひらめき
自主性と主体性
競争と闘争

直観とひらめき
どちらも「思いつき」ということでは似ているが、直観は過去の学びのパターン化であり、あとでなぜそれなのかと問われたときに説明ができないものです。さらには未経験では直観が働くことがありません。ベテランと新人には大きく差が出ます。反復練習をたくさんすると働きやすくなります。ただ、前提条件に変化があると対応できなくなります。シュートかドライブか、右か左か。など経験値が多いほどその直感が正しいことが体感的にもよくあります。
ひらめきは、異質なものを組み合わせることによる新たな選択肢です。直観と異なりあとで説明することができます。その場に応じた事前に用意していないものといったイメージになります。
直観はたくさんの反復練習から生み出させるものですが、競技特性上対戦相手の体格技術が向上してくると、前提条件が変化してしまうため、“直観的な技術の習得のみ”では行き詰る場面も出てくることも増えてきます。対戦相手の状況によってはひらめきでかわすことも勝利にとっては重要となっていきます。

自主性と主体性
自主性は課されたことがらを自分から取り組むことであり、主体性は取り組む事柄そのものも自分で決めるという違いです。大雑把に言うとトップダウンとボトムアップの雰囲気と似ているかもしれません。主体性は自分の権限の範囲の中で最大限自分の考察を入れることができるのだと考えることができます。

競争と闘争
バスケットボールは「競争」なのか、「闘争」なのか。
競争は時間、場所が異なっても争うことができます。100m走の第1レースと第5レースのタイムで競う。といったことです。闘争は同じ時間同じ場所で競う競技となります。

個人競争(100m走、フィギュアスケート、水泳など)
個人闘争(ボクシング、柔道、レスリングなど)
団体競争(400mリレー、駅伝など)
 日本という国の場合、この3つは比較的上位争いができています。
団体闘争(バスケットボール、サッカー、ラグビーなど)
どちらかというとあまり強いというイメージがもてない団体闘争ですが、そもそも団体闘争という競技へのアプローチが上手にできていなかったのではないかという疑問があります。近年はそのアプローチへの変化があり徐々に良い傾向になってきています。
応援の声、声援でも違いがあります。競争では身に着けた「技術を発揮する」ことが重要となるため、応援も静かにし競争中は声を出さない特徴があります。対して闘争では応援の声さえも味方にして「相手の技術を発揮させない」ことが重要なポイントとなります。「集中する」という同じ言葉でも特性がことなり、競争は「内側のイメージ、やりたいことをする」一方闘争は「外側のイメージ、じゃまされることを取り入れる」といった違いがあります。
バスケットボールが闘争であるということを理解したとき、自分たちの取り組んでいる練習時間のうちどれくらい「妨害される時間があるか、相手がいてる練習があるか」をふまえることが、種目特性上の質の高い練習を行うこととなります。
技術 < 相手への影響
すなわち、身に着けた技術を行使して相手(敵、味方)に影響を与えることができない技術は競技特性上勝ちにつながりにくくなります。

2.勝ち負けにこだわることと勝利至上主義
勝ち負けにこだわらないと主体性が育つことはありません。なぜなら、改善する必要性を感じなければ主体性を発揮する必要がないからです。勝ち負けにこだわるという言葉はときに、勝利至上主義と混同されることもあります。違いは「勝つことへの思い」が、指導者 > 選手であれば勝利至上主義で、指導者 < 選手であればしっかりとした育成ということができます。

3.勝ち筋が見えているか
たとえば、オセロの勝ち筋はどうなるか。4つ角の隅をとる。であるとか、一番外側のマスをとる。であるとか。イメージができるとそれを実行するための技術力を求めるようになります。では、バスケットボールに置き換えたときの勝ち筋はどうか。ゴール下 > フリースロー > コーナースリーといった場所の違い。さらにはノーマーク > タフショットと相手との距離感の違い。があります。勝ち筋が分かると行うべき行動が分かるようになります。どうやったら、その場面になるのか。を考えるようになります。勝ち筋を理解していないと漫然とした技術習得を行うだけとなります。また、40分ゲームだとだいたい80ポゼッション前後が両チームに発生します。それを理解しているとターンオーバーやリバウンドの価値が分かるようになるはずです。

4.3つの局面からみる勝ち筋
3つの局面(チャンス、ブレイク、フィニッシュ)を考えたとき、
チャンスに気が付かない、ブレイクで判断できない、フィニッシュ力が低い。では勝ち筋が見えてきません。
主体性を上げるには、勝ち筋を理解していないと出てくることはないと言えます。選手自身が本当に必要だと感じる技術力というのは、本来は自分自身しかわからないことだからです。近年は簡単に動画ですぐに確認することができます。動画を確認するとき、「今のワンプレー、やりなおすならどうするか」という視点で見てみると様々なことが見えてくるはずです。「チャンス局面でシュートを打ち切れなかった」とか「ディフェンスがブレイク局面なのにドリブルで突っ込んでいってしまった」とか「フィニッシュ局面で、簡単にワンツーステップでレイアップしちゃった」とか。
勝ち筋とは何か。相手のことを感じることができない選手はバスケットボールがうまくならない。と言えます。今のそのプレーの選択は勝ち筋に乗っていたのかが分かるようになると主体的に変化することを望むようになります。闘争とは対戦相手が「いやだな」と感じる技術を行うことです。相手が「いやだな」と感じるにはどのようなプレーを選択するのかを考えることが勝利につながっていきます。

5.集団集中状態
集団集中状態とはチームが集中状態になることです。その唯一の方法が「コミュニケーション」です。チーム一丸状態です。集団集中のためには静かにしているのはマイナス行動です。コート上でもベンチに下がっていても、ハードワークにしゃべることが、集団集中状態を維持する唯一の方法です。なんなら、コートの外の応援の声も影響します。集団闘争で重要な集団集中状態のためにも普段の練習だけでなく、日常生活でもコミュニケーションをたくさんとることが重要です。

6.バスケットボールと日常
近年は自分を大切にする傾向が強くなってきています。もちろんそれは非常に大切なことです。一方で他者とのかかわりが以前よりも薄くなってもきています。集団闘争の重要な事項は「相手を感じる」ことです。相手がミスマッチだからこのプレーを選択する。味方がオフバランスになっているから、フォローするためパスを受けることができる場所へリロケートする。相手が速攻を狙っている様子だからセーフティポジションに入る。そういった相手があるからこそ自分の行動を選択することが大切です。それはバスケットボールを離れても他者がどのような状態なのかを感じることができる。だからこそできる行動がある。ともいえます。誰しもがトッププレイヤーになるわけではありませんが、誰しもが日常で他者を感じることができるような人間となることがバスケットボールを通して経験することができれば、生活にも何か変化がきっとあるはずです。

240218追記


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