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桜を創る

初めてお目にかかります。かど と申します。
これから、普通の大学生が思うままに書いた日記を投稿しようと思います。
つまらない文章ではありますが、読んでいただけましたら幸いです。

3月19日土曜日。3連休初日という事もあり、小雨が降っていたが街の皆はスキップしながら買い物を楽しんでいるように見えた。
しかしアルバイト漬けの大学生の私には関係ない、何もないただの1日だ。
いつものごとくバイトを終えた私は、いつもの何もないただの1日をなぞりながら夕方を迎えてしまった。
「このままではダメだ。」
毎日同じことを感じ、焦燥感に駆られるが、行動は起こせない。
大学生なんてそんな生き物である。
しかし今日の私は何かが違った。
何が違うのかは私にも分からないが、何かが違った。
「桜、見に行こう。」
私は激安スーパーの冷凍食品売り場で、好きな子をデートに誘うようなクサい台詞を咄嗟に口にしてしまった。
横にいたおばさんが何か言いたげな表情でこちらをじっと見ていたのを覚えている。
普段の私なら二度とそのスーパーに行けなくなるくらいのトラウマになるのだが、何かが違う私はそんな事は一切気にならず買い物を終え、小雨の中自転車を走らせた。
自宅から自転車で往復1時間の距離に桜の名所があることは知っていたので、私は一目散にそこに向かった。
「桜を見たい。」
私の気持ちなど知らない太陽は仕事を終え帰路に就き、目的地に着いた頃には真っ暗になってしまった。
私はこれまでに何かを最後まで成し遂げた経験が少なかった。
今回も目的を達成できなかったのかと落ち込んでしまい濡れたベンチに座り込み、スマホに目を落とす。
鞄からイヤホンを取り出し、音楽でも聴いて帰ろうと視線を上げた。
その時、満開の桜が私の視界に入ってきた。
こいつは何を言い出したのかと思うだろう。
今思えば、そもそも桜が咲く季節ではまだないのに。
もし咲いていたとしてもここ数日の雨で落ちているのに。
しかし、私には満開の桜が見えていた。
実際の事を言うと桜なんて一片も咲いてはいなかった。
暗闇の中にうっすら見える桜の幹を見て想像したのだ。
いや、創造したとでも言おうか。
このようなロマンチックな事が起こったのは今回が初めてだ。
勉強のやる気も落ち、認可単位ギリギリで進級するような大学生の私は自分の脳みそにとても驚いた。
こんな経験が出来たことに驚きつつも嬉しくなってしまった私は、乗ってきた自転車を持ちながらスキップして帰ることにした。
何もないただの1日からやっと脱出できた私は、帰り道の銭湯に寄って今日の思い出をゆっくりと思い返した。
また明日は何もないただの1日に戻ってしまうのだろう。
だが今までの焦りは無かった。
夕方からでも1日は変えることが出来るのだから。
買っていた冷凍食品は見事に溶けていた。

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