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花伝社の海外コミック刊行について

7月13日、朝日新聞デジタルさんで弊社刊行のバンドデシネの紹介が掲載されます。

そこで、どのような基準で刊行するバンドデシネを探しているかとインタビューを受けたのですが、緊張してしまいうまく話せなかったような気がしたので(すみません!)、海外コミック関連の刊行についてnoteにまとめておこうと思いました。
(※書名部分のリンクからは弊社サイトの書籍紹介に、大きなリンクからはBASEの販売サイトに飛びます。)


弊社でグラフィックノベル(バンドデシネ)の刊行が始まったのは2017年です。当時、ドイツに短期留学中であった現・明治大学助教の田中里奈さんに『マッドジャーマンズ』についての記事を教えてもらい、さっそく本を取り寄せました。社内で検討した結果、その絵とストーリーに魅せられて刊行をすることになりました。

外部の翻訳者の方にお願いすることも検討したのですが、売り上げについて全く見当がつかず、リスクを避けるために、すでに翻訳経験があった私(編集部・山口)が翻訳をすることになりました。多和田葉子さんに推薦文を依頼し、多和田さんパワー、そして本のもつ力によって、現在も非常にご好評をいただいています。(ありがとうございます!)


この本がきっかけとなって知り合った、翻訳家の原正人さんのご紹介で『見えない違い』を刊行し(2019年文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞)、現在までに十数点の海外コミックを翻訳刊行しています。


これまで弊社で刊行した海外コミックは、大きく分けて次の4つの仕方で情報を得ることができました。

1.翻訳者さんからのご紹介
さまざまな翻訳者さんから、その国で売れているグラフィックノベルのご紹介をいただき、刊行に結び付いた件がいちばん多いです。海外コミックを刊行している出版社はまだまだ少ないので、さまざまな言語の一流の翻訳者さんとお仕事ができ、非常に嬉しく思っています。
『わたしはフリーダ・カーロ』『見えない違い』などは、翻訳者さんからのご紹介です。

近刊の『リッチな人々』(原題:Riche, pourquoi pas toi?)は、ブルデュー社会学などを扱った富裕層研究のバンドデシネですが、これは他の出版社さんから、この本を出したいと希望していらっしゃる訳者の方をご紹介いただきました。


2.エージェントさんからのご紹介
版権契約を結んでくださる日本のエージェントさんは、普段から定期的にさまざまな海外コミック(やその他の書籍)の情報を送ってくださったり、海外の出版社さんとのミーティングを組んでくださったりしています。
トランスジェンダー当事者の実話をもとにした『ナタンと呼んで』は、その年のフランクフルトブックフェアで大きな話題となっていたのを、当時日本ユニ・エージェンシーだった方にご紹介いただき刊行をしました。この本は映画化の準備が進んでおり、数年後に日本でも公開されることを祈っています。


3.大使館さま・政府機関などからのご紹介
ヨーロッパの国々では、翻訳出版などに関して助成を支給してくださったり、未翻訳書籍の紹介イベントを開催くださったりする大使館・文化機関が多数存在します。
例えば『ゴッホ 最後の3年』は、来日してさまざまな出版社を訪問し、書籍の普及活動をされていたオランダ文学基金さんのご紹介で刊行し、出版助成をいただくことができました。


4.自分たちの情報収集
ドイツではフランスなどのグラフィックノベル(バンドデシネ)が活発に翻訳刊行されており、全国紙などでも定期的にコミックの詳細な書評が出されています。ヨーロッパで話題となっている書籍について比較的簡単に情報を得ることができるため、そこで書籍の存在を知って刊行に結び付いたグラフィックノベルも複数存在します。
禁断の果実』『未来のアラブ人』『わたしが「軽さ」を取り戻すまで』は、その本を刊行したいという翻訳者さんに会ったことも大きなきっかけとなりましたが、それ以前にヨーロッパで話題となっていたことを知っていたために、比較的スムーズに刊行に結び付くことができました。


亀裂 欧州国境と難民』は、完全に弊社で出版企画を立ち上げた一冊です。

さらに、2019年秋にはゲーテインスティテュートさんの支援やスウェーデン文化庁・オランダ文学基金からのお招きなどにより、アムステルダムで数多くの漫画家さんたち・出版社の方々とお会いしたり、ヨーテボリブックフェア(フェローシップ参加)、フランクフルト国際ブックフェア、ゲチョ(スペイン・バスク地方)コミックフェスティバルにも参加しました。さらに、コロナ禍がこれほど広がる前の今年1月末から2月にかけて、フランス大使館さん・フランス著作権事務所さんのご支援でパリとアングレーム国際漫画祭を訪問し、30社近い出版社とミーティングをしたり、作家さんとお会いしたりすることができました。

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(アングレーム国際漫画祭で『わたしはフリーダ・カーロ』作者、マリア・ヘッセさんと)


ということで、ヨーロッパ各地の方々と連絡をとりつつ、日々新たなグラフィックノベル等の情報を集めています。これからは英語圏やアフリカ、アジアなどのグラフィックノベルについても刊行ができればよいと考えています。Twitterやメールなどでも、気軽に「この本がおすすめ」「この本を出してほしい」など教えていただければ幸いです。


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