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2019年ヨーテボリブックフェア参加報告

花伝社編集部の山口です。昨年、私はスウェーデン文化庁(アーツカウンシル)さんのご招待で、スウェーデン・ヨーテボリのブックフェアに参加しました。

現在、今年のフェローシップの応募を受け付け中です。
(詳しくは以下、北欧語書籍翻訳者の会さんのnoteからご覧ください。)

今年も応募される方のために、ヨーテボリブックフェアフェローシップについてご報告したいと思います。

ヨーテボリブックフェアは、北欧最大のブックフェアで、毎年開催されています。木曜日と、金曜日の午前は関係者向け、金曜日の午後からと土日は一般読者にも開放されているため、昨年は4日間で計10万人が訪れたそうです。

会場には、各出版社による販売ブース、サイン会場の他、

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『禁断の果実』刊行元Galagoのブース。奥のテーブルではサインも行われていました。)

著者などによるトーク会場、

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そして、NGOなどの紹介ブース

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絵本コーナー

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ほかに、ムーミンなど、雑貨などの販売もされています
(以下の写真はフェミニズム関連雑貨のブース)。

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去年のゲスト国は韓国で、韓国文学に関するイベントも多数開かれました。

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(ヨーテボリブックフェアのために作られた、韓国の最新文学や作家を紹介する冊子(英語))

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(ハン・ガンのトークを待つ人々。結局満席で入れませんでした……)

ほかにも『Black box』のスウェーデン語版刊行に際し、伊藤詩織さんがトークをしたり、

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(司会の方が、ノーベル文学賞をめぐる性暴力スキャンダルについて、伊藤さんの対談相手を厳しく追及する一面もありました。)

写真はありませんが、子ども向けの書籍を執筆したスウェーデンの王女さまが会場にいらっしゃり、トークやサインに長蛇の列ができていました。

……と、会場を回るだけでも楽しいし勉強になるのですが、フェローとして参加したことで、さらに学びを得ることができました。

フェローシップに選ばれると、

1.航空券など移動費(一部)
2.宿泊費
3.ブックフェア参加費
4.プログラム参加費
5.一部の食事等

が支給され、さらに移動手段以外は手配もしてもらえます。対象になるのは、出版社と翻訳者さんです。去年は48か国から175人の応募があり、19か国の33人がフェローとなりました。

以上のような支援を受ける代わりに、フェロー参加者はプログラムに参加することが義務付けられます。私は

1.交流会
2.スウェーデンにおける書籍市場について、ストックホルム大学出版学の教授から話を聞く。
3.ノンフィクション出版社との合同ミーティング
4.デューク雪子さんによる、最新スウェーデン文学の紹介

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(デューク雪子さんはNew Swedish Booksの選考委員も務めていらっしゃいます。)

のプログラムに参加しました。

どのプログラムも勉強になりましたが、特に、出版学の講義は、

1.スウェーデンの出版市場におけるオーディオブックの割合が65%になっているということ。(Storytelの人気による)
2.オーディオブックに順応させるために、書籍自体にどんな変化が起こっているか。
3.スウェーデンにおける読書習慣
4.書籍市場の動向。軽減税率による書籍売上増加

など、これまで知らなかったことばかりで、驚きの連続でした。その後、各国の出版社の方々と、具体的にどんなPR方法ができるのか等々、情報交換ができたのも収穫でした。

上記のプログラム以外の時間は、エージェントや、各国の文化支援組織とミーティングを行ない、書籍や助成金についての情報を得ることができました。こうしたミーティングについて私は経験もノウハウもかなり薄かったのですが、フランクフルトなどに比べて規模が小さい分、リラックスして様々な情報を収集することができました。
また、フェローシップは、北欧語書籍を日本語に翻訳・紹介したい出版社だけでなく、日本語の書籍の版権を北欧の出版社に売りたい出版社の方も対象となっています。実際にフェローの中には版権をたくさん売ることができたと言っていた人もいました。

北欧の書籍について一気に学ぶことができる、という利点の他に、フェローシップの参加者は、世界各国から来ているので、そこの間で情報交換ができたことが個人的には一番大きな収穫となりました。

フェローシップ参加者で、ミュージアムの館内で文化庁からディナーに招待されたり、

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夜、街に出て踊りにいったりして(ご招待ありがとうございました!)、

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結局私の場合、ドイツのベストセラーの版権を取ることができました。

他にも、環境について様々な情報を目にし、

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実際に「金曜日デモ」を見ることもできたのも、自分の意識改革となりました。(会場のいたるところで、エコバッグがもらえます。)


このように実り多く、楽しい滞在ができて、提出義務があるのは「帰国後のアンケート」のみです!

さらに、今後のスウェーデン語書籍の刊行に際して、補助金や作者の来日の支援などをしてくださると言ってくださり、非常に心強く感じました。
応募書類や現地でのミーティング、プログラムなどは英語が必要ですが、ぜひ多くの方にご応募いただきたいと、陰ながら思っております。

応募のアドバイスをするとすれば、スウェーデン語や北欧語の書籍を刊行したいというモチベーションの他に、よい翻訳者さんとコネクションがあるかどうかを問われます。現地では、「日本は、『北欧語書籍翻訳者の会』があるから、いいよね」とあらゆる場面で言われました。私も〈常日頃、「北欧語書籍翻訳者の会」の皆様に大変お世話になっております!一緒に仕事をしたいです!!!〉と、前面に押し出したのがよかったそうです。
乱暴なアドバイスですが、「北欧語書籍翻訳者の会」さんについて必ず書いた方がよいと思います!

末筆となりましたが、フェローシップに参加させてくださり、素晴らしいプログラムを用意してくださったスウェーデン文化庁の方々、応募について教えてくださり現地でもフォローしてくださった、北欧語書籍翻訳者の会の方々、サポートをしてくださった大使館のベイェ様にお礼を申し上げます。

(山口)


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