キヤノン EOS R6 MarkⅡ 実写レビュー: AF性能の進化を実感! 使い勝手も最高なハイレベルなフルサイズ機(ただし価格を除く)
キヤノンが本日(2022年12月15日)フルサイズミラーレスの「EOS R6 Mark II」を発売しました。今回はこの新モデルのレビューをお届けします。
前モデル「EOS R6」との違い
本機は2020年8月に登場したEOS R6の後継機でメーカーの位置付けとしてはミドルクラスとプロ機の間の「ハイアマチュアモデル」です。まずは、従来機のEOS R6の特徴を簡単におさらいしましょう。
キヤノンのデジタル一眼レフの頂点に君臨する「EOS-1DX Mark III」が搭載するイメージセンサーをベースに、ミラーレスのEOS Rシリーズに最適化した約2010万画素のフルサイズセンサーを採用
CIPA基準で8.0段という非常に強力なボディ内手ブレ補正機構
ミラーレス機では実現が難しかった、電源ONから撮影可能になるまでの時間を大幅に短縮
覗けばすぐに表示されるEVF
このように、EVFや起動速度など、カタログスペックには表れない部分にも非常にこだわっていており、まるで光学ファインダーを持つ一眼レフのような使い勝手を実現した初のミラーレス機でした。
EOS R6 MarkⅡの進化点
EOS R6 MarkⅡの大きな特徴はイメージセンサーを刷新したこと。画素数を2010万→2420万画素へと増やしながらも、電子シャッターではEOS史上最速となる最高約40コマ/秒の連写を実現するなど高速性も進化しています。
ミラーレス機の心臓部でもある画像処理エンジンにも手が入っています。名称こそ「DIGIC X」とR6と同一ですが、性能は抜かり無く向上しており、例えば新しいシャープネス処理の採用によって、解像性能は一眼レフEOSシリーズの名機「EOS 5D Mark IV」の約3040万画素センサーのよりも高解像だとキヤノンはアピールしていますし、EOS R7などに搭載されていた「RAWバーストモード」というRAWデータを高速で連続撮影するモードと、シャッターボタンを全押しする約0.5秒前から画像が記録されるプリ撮影モードをフルサイズEOSとしては初搭載しています。
そして、最新のDIGIC Xにより、AF性能も大きく向上しています。
AFアルゴリズムはハイエンドモデルであるEOS R3のものを継承。さらに機能名こそ「EOS iTR AF X」で変わっていませんが、ディープラーニング技術によるAF追尾(トラッキング)性能と被写体の認識・検出力が強化されています。例えば人物では従来機でも可能だった瞳や顔、頭部の検出に加えて「胴体」の検出が可能になった他、瞳検出に「右目優先」「左目優先」「自動」の設定が追加されました。
従来機のEOS R6も被写体認識AFで動物と乗り物を検出できました。特に動物では他メーカーと異なり、犬や猫以外の生物種でも柔軟に瞳を検出でき感心させられたものです(他メーカーのユーザーはキヤノンの動物認識を使うと驚くと思います)。
その被写体認識ですが、EOS R6 Mark IIではさらに磨きがかっています。
検出対象に馬が加わり、乗り物は鉄道や飛行機の検出に新たに対応。さらに「スポット検出」という機能が追加され、鉄道では運転席部分、飛行機ではコックピット部分、モータースポーツシーンではドライバーのヘルメットを検出してAFを行えるようになったのです。
動画まわりも大きく改良されています。
EOS R6の連続動画撮影時間29分59秒でしたが、本機では最大6時間までと大幅に拡充。さらに、6Kオーバーサンプリングによる4K UHD記録への対応や6K RAW動画の外部記録、Canon Log3記録への対応も行われました。
被写体認識AFの進化を実写でチェック
進化したAF性能をチェックすべく動物園で撮影してみました。まずは、AFエリアを「全域AF」にして検出する被写体も「自動」というもっともカメラ任せの設定で馬に対応したという被写体認識を試しましたが、検出の挙動はとても安定していました。従来機で馬を撮影しても何となく瞳にAFしてくれていましたが、本機では安定してビシッと一発でAFしてくれます。
EOS R6でも問題無く撮影できたフラミンゴやハシビロコウ、ペンギンなどについても被写体以外にAF枠がでてしまう誤検出の頻度がかなり低下というか、テストした限りでは誤検出しませんでした。
野鳥撮影は基本的には良好だが……
それでは、ということで難易度の高い野鳥を狙ってみました。こちらは、基本的には良好なものの仮に被写体検出しても結果に直結するわけではない、というのが正直な感想です。というのも、被写体を検出しAF枠は画面内で追尾出来ているのにピントは全く合っていなかったり、同様に追尾しているのにも関わらず背景にピントが抜けてしまう場合が何度も発生してしまいました。
今回のように背景が写り込む条件では「キヤノン EOS R3」や「ソニー α1」の方がAF性能は上というのが実感です(どちらも70万円クラスのハイエンド機ですが……)。
鳥認識でうまくAF追従できた例
鳥認識でAF追従に失敗した例
スナップ撮影ではカメラ任せのAFが非常に快適
全域AFのままスナップシーンでも撮影を楽しみましたが、全域AFの完成度は非常に高く、1点AFやゾーンAF等に変更してマルチコントローラーで測距点を選択する頻度がグッと下がったことには感心しました。いわゆる像面位相差AFは画面内の距離を把握する能力が一眼レフの位相差AFと比べて限られる限定的になってしまうという構造上の弱点がありますが、本機は一眼レフに近い領域までその能力を拡大できているという感覚があります。
乗り物優先AFをEOS R6と比較
続いて、飛行機を被写体として、前世代のEOS R6と本機のAF性能の差をチェックしてみました。
従来機のEOS R6の乗り物優先が公式に対応するのは「モータースポーツの四輪車/二輪車」のみ。飛行機には対応しません。しかし、実際に撮影してみるとそれっぽく検出枠が表示されます。非対応でも何となく検出できるという、まるで制御に余裕をもたせているかのような柔軟性が垣間見える挙動です。そのため、表示上は検出できているように見えても、実際には飛行機のボディではなくエンジン部分や翼の先端、垂直尾翼などにフォーカスしてしまう場合がありました。
その点、EOS R6 Mark IIは違います。飛行機に対応しただけあって検出が迅速。さらにスポット検出をオンにして撮影すると安定してコックピット付近を追従してくれます。これほどの検出性能があれば、撮影中は構図に集中することができそうです。
R6からR6 Mark IIに持ち替えると「これはもう戻れないかも・・・」という、乗り換えを肯定する気持ちになります。しかし、じっくりとR6 Mark IIを堪能した後にR6を使うと「コイツも侮れない実力があるし、自分の技術と工夫次第ではまだまだイケるな」と従来機に対する気持ちも高まりました。
十分なバッファ性能
EOS R6 MarkⅡはR6よりより連写性能がアップしていますので、バッファ性能も気になるところです。念の為どれだけバッファ性能があるのかチェックしてみました。
RF85mmF2 Macro IS STMレンズを装着し、ISO6400で1/800秒、f/2.0という条件でRAW+JPEG L記録、メカシャッターの最速設定で連続撮影枚数を計測してみたところ、サンディスクのExtreme ProやProGradeデジタルのコバルトといった書き込みが最大250MB/sを超える最速クラスのメディアでは平均105コマ、UHS-IIで書き込み最大130MB/sクラスとなるProGredeデジタルのゴールドでは平均90コマまで連写速度が落ちずに撮影できました。なお、1ショット辺りのデータ量は平均してRAWが27.4MB、JPEGが8.2MBです。
ちなみにR6では最速クラスのメディアで平均160コマ、130MB/sクラスで平均115コマです。つまり、ここだけ見てみるとR6の方がバッファが良いということになりますが、データ量はRAWが23.2MB、JPEGが7.0MBと合計で1コマ辺り約6MBの差があるので、実際にはバッファ量は同等であり、データ量の差が連続コマ数の差となって表れたのだと推測されます。
ともあれ、RAW+JPEG記録で100コマ以上撮れますので、バッファ量的には十分な性能があると評価できます。
解像感は「業界標準レベル」でキヤノンが主張する「3040万画素のEOS 5D Mark IVを凌ぐ高解像」は実感できなかった
一方、画素数が上がったことによる精細感の向上については正直良くわかりませんでした。2400万画素機相応の解像感であり、同くフルサイズの2400万画素機であるZ6 IIやLUMIX S5と比べても同程度です。
キヤノンはEOS R6 MarkⅡを「3040万画素のEOS 5D Mark IVを凌ぐ高解像」とアピールしていますが、正直なところ2022年の基準で言えば本機の解像感は業界標
準の枠内にとどまっています。
EOS R6との比較:解像感や高感度
センサーが刷新されたこと、画素数が400万増えたこででどういった違いがあるのか、高感度と解像感でチェックしてみました。解像性能的にはEOS R6よりも画素数が増えた分だけより細かなところまで解像できています。画像を拡大観察してみると、これまでのテスト経験から言えば400万画素というスペック差よりも大きな進歩を感じますが、1枚の写真として見た印象としては誤差程度の違いに思います。
解像感の比較(ISO100)
高感度性能についてはほぼ互角か、本機の方が少し印象が良い、というものでした。ちなみにEOS R6の時点で高感度画質はフルサイズ機でも屈指のレベルにありました。
高感度の比較
ISO感度別の比較(拡大してご覧ください・左R6 MarkⅡ/右R6)
いずれも4Kモニターで100%拡大した際のスクリーンショットです
EOS R6と比較:持ちやすさや操作性
EOS R6とR6 MarkⅡを同時に手にしてみると、まず構えた時の印象が少し違います。外観デザイン的にはCanonロゴのあるペンタ部の意匠が少し変更されていることとくらいしか気づけませんでしたが、筆者の手にはR6 Mark IIの方が馴染む感がありました。
他にも電子ダイヤルの操作感が良くなっています。気になったのでキヤノンに確認してみたところ、グリップ形状とラバーについては変更ナシでしたが、前ダイヤルは設計変更しているとのことでした。
操作性では左肩から右肩へと移動した電源スイッチが気になるところです。試してみると、電源のオンオフが分かりやすく好印象。ただし、従来機から買い替えたり、また買い増しする場合には混乱を招く可能性が大きいので要注意です。
担当する編集氏にEOS R6 Mark IIを体験してもらったところ、EVFのレスポンスとAF中でも表示解像度が下がらないところ。グリップの良さやレンズ装着状態でのバランスの良さなど、カタログスペックには表れないカメラの道具としての素性の良さにとても強く感銘を受けていました。
実際にキヤノンのカメラは道具としての使い勝手や操作性に大変優れており、安定してその性能を撮影者が引き出せるような工夫や誤操作を防ぐ配慮に溢れています。例えば、ゴミ箱ボタンは直ぐ側にある再生ボタンとの距離が近いですが、ボタンの高さを分けることで誤操作を防ぐよう配慮されています。
どれだけカメラ性能が進化しても被写体をフレームに捉えるのは撮影者の仕事です。そのため、ユーザーに寄り添った操作性のデザインになっていないと撮影時の疲労感が大きくなってしまうのです。
まとめ:価格を考慮しないのなら非常にハイレベルなカメラ
EOS R6 MarkⅡは価格を考慮せず評価するなら非常にレベルの高いカメラです。異次元のAF性能と覗いた瞬間には表示されているレスポンスと遅延が少ない見事なEVF。操作性に優れ疲労感が少ないボディ形状など、デバイスの性能以前に撮影の道具としての性能が素晴らしいレベルにあります、その上で強力なボディ内手ブレ補正を持っていることなど、良いところを挙げていくと枚挙に暇がありません。
ところが、本機は約40万円(キヤノンオンラインショップ)という堂々のプライスタグを掲げる製品ですので、感覚的にも「40万円」という気持ちを完全に忘れることはできません。すると価格に対してボディの質感が釣り合っていないとどうしても感じてしまいます。
性能は申し分なく素晴らしいけれど、肌に触れる部分では心は満たしてくれず、趣味の相棒としては物足りない。言うなれば「ビジネスライクなお付き合い」という感覚に近いでしょう。
筆者は趣味の相棒として、質感も大事だと考えていますのでこのような評価になりますが、撮影性能としては申し分のない領域に到達したカメラであることは事実ですし、機能性を重視するのであれば魅力的なカメラであることに疑いの余地はありません。
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