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【ネタバレ注意】「いるしゃちっぴ」から見るあいでっぴの世界


僕の夢は、シャチになること。

高2の春、ようやく僕は一歩を踏み出すことができた。


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 私の作品に「いるしゃちっぴ」という読み切りの短編小説があります。今回はこの「いるしゃちっぴ」という作品について、書いていきたいと思います。


 ネタバレも含むので、作品を読んでからこの記事を読むことを推奨いたします。


短編小説「いるしゃちっぴ」

http://kadai010.com/1170


「いるしゃちっぴ」についてもっと詳しく

 「いるしゃちっぴ」(以下、本作)はシャチになりたい少年「カオル(坂又カオル)」と、イルカになれる少女「ルカ(伴藤ルカ)」のお話

 シャチになることを夢見るカオルはiDPという夢を表現できるパフォーマーを目指し、星輝学園という学校へ転入してくるところから始まります。「あいでっぴ」(以下、本編)という作品の世界観を借りた番外編という扱いではありますが、その本編と本作はこの記事を書いている時点では交わる箇所もないため、本編の履修は決して必須ではない独立した作品とも言えます。


「あいでっぴ」について

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 いるしゃちっぴの舞台……本編と呼ばれる「あいでっぴ」は少女向けコンテンツ創作となっています。作風としては、いわゆる休日の朝にやってるかわいい女の子たちが歌ったり戦ったり魔法使ったりして活躍するような…ああいうヤツをイメージしていたければ、わかりやすいかもしれません。

 世界観説明のために漫画が存在しますが、メディアミックス想定のため作中に登場する衣装をデザインしたりなど、こんなゲームあったらいいよね~システム考えてみた~とか、思い付きでやりたい放題やってます。

 本編では夢を表現できるパフォーマーとそれを支えるプロデューサーがいて、その人たちのことはまとめて「iDP」と呼び、iD空間というパフォーマンスに特化した空間でのみ不思議なパワーを使って夢を表現できるエンターテイメントが存在する現実が舞台となっています。

 iDPになる事自体は特別な才能はほぼ必要ありません。誰でも、ほとんどの人はなれます。ルカちゃんも空間でのみイルカにはなれますが、普段は普通の人間です。「実はイルカの子で人間になりました」……っていう設定がもしあったとしたら個人的においしいのですが、現実ではいつもと同じだけど、空間の中なら何にでもなれるっていう、私たちの生きる「リアル」にも寄り添うような世界なのが本編のいいところなのかもしれませんね。(好きに解釈していいよという気持ちをこめたやんわりとした表現)


【ネタバレ注意】「いるしゃちっぴ」の立ち位置とは

 上で書いた通り、本編は少女向けで、本作はもっとお兄さんやお姉さんに向けた作品となります。なので、どちらも摂取しようとすると、作品の温度差でやけどしてしまうかもしれません。しかし、先ほど「iDPになる事自体は特別な才能はほぼ必要ありません。誰でも、ほとんどの人はなれます。」といったように、「あいでっぴ」という世界は夢見る少女のための世界だけじゃないんだっていう「あいでっぴ」という世界の在り方について表現するのにはこの作品はいい機会となりました。

 本編では、お話が進むにつれ世界の不思議に巻き込まれたりして主要キャラクターがだんだん世界の中心を目指して奮闘していく王道ストーリー(な気がする)のに対して、本作ではずっとずっと、日常が流れていきます。もう、作風も内容も、温度差がすごい。しかし、ちゃんと文章の隅々に世界がつながっているっていうカケラを隠しています。どっちも読むのは大変かもしれないけど、どちらも共通して「登場人物が成長(変身)するまでの過程が描かれている」という点があり、つながるものはたくさん存在します。本作の世界は、また別の視点から見た「あいでっぴ」という世界なのです。

 また、三章でルカがはじめてイルカになったときの事。ルカは自分とは違うイルカがいた、と言っていました。これと同じことが本編で起きたら本編の子たちはどう思うでしょうか。おそらく、迷わず空間の持ち主であるあの子の名前を告げるでしょう。

 あと、これはちょっと違うけれど、カオルが転入してきた時に星輝学園のエースであるサリュ先輩がライブするシーンがあります。「あそこで腕を引かれた生徒は、優秀なiDPになるなんて言い伝えもある。」と篠崎先生が言いますが、この情報はいるしゃちっぴにしかまだ書かれていません。

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 必殺技みたいなものを小説でも叫ばせたのはやりすぎかなと思ったのですが、ホントにそういう世界なので……どうか許してください……。


「いるしゃちっぴ」を書こうとしたきっかけ

 数年前から水族館にドはまりして、毎週のように通う時期がありました…。中でもイルカとシャチには強いあこがれを抱き、何か一本作りたい!という気持ちが強かったのですが、うまく形にできず、後回しになっていました…。

 そんな中、私にこの作品の大筋を決めることとなる瞬間が訪れました。それは、水族館でイルカと触る体験をした時です!イルカとお近づきになるためにイルカとの握手会に参加して、その列に並んでいるとき、心の中では期待と緊張、そして話が作りたいという創作心が暴れまわっていました。そのまま、話がまとまらずに自分の番がやってきます。こんな気持ちでイルカに触れていいのか?……しかしもんもんとしているうちに順番は来てしまったので失礼すると……。温かい!イルカは冷たいプールの中にいつもいるので、冷たいのかなあと思ったのですが、生命が伝わる優しい温かさでした。そこで、寄り添う暖かさとか、呼吸とか、その辺をテーマにしようと筆を執りました。

 そのテーマを、感覚的に感じ取れるように「触れる」という描写を大切にして描いてた気がします。


「いるしゃちっぴ」の由来

 いつも創作のお手伝いをしてもらっているフォロワーにお願いしてタイトルを付けてもらいました。そのフォロワー曰く、

「最初はおとうさんと(この作品を)イルシャチって呼んでたからそれをあいでっぴにくっつけた……??(??)」

だそうです。

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これは作ってもらったカオル。


いるしゃちっぴ小ネタ集

 ちょっとだけですが、本作を語れるよい機会なので、おまけで小ネタをつけます。

初期イメージ

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↑初期案というか初期イメージイラストです。左からルカ、カオル。ルカちゃんはポニーテールじゃないし前髪も目に入るほど長かったのですね。

カオル、特技持ち説。 

カオルの初期設定では「人の体温から状態を感じ取れる」みたいな特技を与えようとしてました。​しかし、カオルには必要ないかなっていうのと、テーマを押し出しすぎるのもなってかんじでなくなりました。

カオルの感受性

カオルの感想って、意外にあっさりしています。大好きなシャチのショーを見ても数行で済んでしまったり。これはカオルが素直すぎるから出てくる感想なのです。ルカちゃんに知られたら「それだけなの!?」って怒られちゃうかもしれませんね。しかし、カオルなのでしょうがないんです。まっすぐで素直過ぎるところもいいところなのです。

イルカやシャチになったときの二人は言葉を話さない

イルカやシャチへ変身したときにカオルとルカの二人は言葉を話さないようにしました。心の中では人の言語を使いますけど。それは、人間とは違う声帯なので、などではなく違う生き物になることによって、人の使う言葉ではないほかの「何か」でコミュニケーションが取れたらなという想いがそこにはありました。人の言葉をぺらぺらしゃべっても、それはそれでかわいいんですけどね。少なくとも、今回のお話の中ではそうじゃないんだろうって感じです。

名前の由来

カオルこと坂又カオルはシャチのまた別の呼び方「オルカ」「サカマタ」。ルカこと伴藤ルカはバンドウイルカから。フウコはフウセンウオから。リュウはリュウグウノツカイ。ノブは…なんなんでしょうね(ロブスター?)。皆海洋生物から名前が来ています。ルカちゃんに関しては、バンドウイルカにするか、カマイルカにするかですごく悩みました。どっちも好きなので…。

シャチになったときのカオルのイメージ

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カオルは元々黒髪で、転入が決まった時に白いメッシュを入れました。内側が白くなってるのはたぶんおなかあたりを表現しているのだと思います。そんな彼がシャチになったときはおなかに彼のメッシュのようなラインがあると思います。iD空間でシャチとカオル見分けるときはそこに注目してみてください。


さいごに

イラスト3.pngftgn.pngういお

ずいぶん長くなってしまいましたが、作品の公開から一年が経って、自分の作品を呼んでもらう機会もいただけて、考えをまとめてみようと思ってこの記事を書き出した次第です。

いつもこういう話はツイッターでドバ~っとまとめもせず吐きだしちゃったり、同人誌の誰にも読まれないような隅っこにちょろっと書いたりするのですが……こうやって記事にするのもいいものですね。私は物書きでも読書家でもなく、文章はお世辞にもうまくないので、どうにか伝われという気持ちを込めてキーをタイプしてます。

「いるしゃちっぴ」のおかげで「あいでっぴ」の世界はより豊かになった事でしょう。まず、高等部のお話自体本編ではかするぐらいでしか存在しないので……ね。

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正直な話、シャチの実物を見に行ったのはこれを執筆した後になります…。実物はすごいですね。また見に行きたいのですけど、もう少し先になりそうです。そんな「シャチにわか」な状態で作品を書いてしまって申し訳ないのですが、シャチを体験した今、許されるのならまたいつか筆を執るのもアリなのかもしれません。

 とはいえ、さすがに最近は他の作品を作っていて手いっぱいなので、続編とは言わずとも、どこかでまた二人のその後をお伝えできるといいなとは思っています!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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