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逆選択

僕が保険業界で学んだことのなかで、一番おもしろいな~と感じたのが「逆選択」です。

最初にこの言葉を聞いたときは、「お客さんが保険会社を選ぶのではなく、俺たちが誰を顧客にしたいかを選ぶんだ!」という意味だと思っていたのですが、ちゃんと勉強したら全然違いました(笑)

逆選択とは

逆選択というのは、わかりにくく言うと、

取引前に情報の非対称性が存在することにより生じる非効率性の問題

みずほ証券 ファイナンス用語集

です。

この死ぬほどわかりにくい説明は、みずほ証券のファイナンス用語集からの抜粋です。

わかりやすく説明しますね。

情報の非対称性っちゅうのは、2人のうち片方がいっぱい情報を持っていて、もう片方があまり情報を持っていない状態をいいます。

経済やマーケティングの小難しい本を読むと非対称性って言葉はちょいちょい出てきますが、ざっくり強者 VS 弱者と思ってもらえれば大きく誤解することはないでしょう。バランスが悪いから非対称です。

今回は、「情報の」非対称性なので、知ってる人と知らない人。さらに商売の話なので、営業マンは商品のことをよく知っているけど、購入者はあまりよく知らないという意味です。

この点を踏まえて用語集を書き直すと

商品を売る側が商品についての情報を豊富に持っていて、買う側はあまり持っていない。そんな状況で取引を続けることによって生じる非効率性の問題。

とりあえず前半をかみ砕いてみた

まだ後半がなんのこっちゃですよね。

ここでいう非効率性には広い意味があるのですが、ここはざっくりと、良い商品を売る業者が儲からなくなり、買う側は粗悪品しか手に入らなくなる。くらいに思っておきましょう。

もう一度用語集を書き直すと、

商品を売る側が商品についての情報を豊富に持っていて、買う側はあまり持っていない。そんな状況で取引を続けると、良い商品を扱う業者は儲からなくなり、買い手は粗悪品しか手に入らなくなる。粗悪品が優良品を淘汰する現象。

これを逆選択といいます。

情報の非対称性がある中で取引を続けると、どうしていい商品を扱う業者は儲からなくなるのでしょうか。

たとえば、200円のリンゴと100円のリンゴが売っているとき、消費者は買う前に質の違いを見極めることはできません。食べて初めて分かります。

ひょっとすると悪徳な業者が、100円リンゴに200円の値札を貼っているだけの可能性もあります。騙されることを恐れた消費者は、100円のリンゴを購入します。こうして、高品質なリンゴを扱う業者は売れなくなり撤退します。

さらに、この状況で一番儲かるのは、本当は10円の価値しかない不良品リンゴを100円で売っていた業者です。不良品リンゴ業者はますます勢いを増し、不良品リンゴが普通のリンゴを淘汰していきます。しかし消費者も食べれば不良品だとわかりますから、そのうちリンゴそのものを買うのをやめてしまいます。最終的には市場が消滅する可能性すらあるわけです。

保険業界の逆選択

保険業界では、この逆選択が起きないように細心の注意を払っています。ほとんどの生命保険商品(死亡保険、医療保険、ガン保険など)に告知義務(過去数年間の罹患歴や通院歴、投薬歴、現在の健康状態を明らかにする義務)があるのもそのためです。

これによって、「めちゃくちゃ健康な人」だけを集めることができたら、保険商品の中身を充実させたり、保険料を下げたりことができます。なぜなら、保険金支払いが発生する可能性が下がるからです。そうなるとコスパがいい保険としてますます加入希望者が増えます。

しかし、審査が甘く、病気の人を加入させてしまったら、その後の支払いがジワジワと増えていきます。保険会社は統計から保険金の支払い額を予想して保険料を決めています。病気の人の加入が増えると、支払額が予測値よりも大きくなります。そうなると、保険商品の中身を改悪したり、保険料を上げたりすることになります。まさに粗悪な商品が優良な商品を駆逐する逆選択が生じてしまいます。

一般的に逆選択は売り手が情報強者、買い手が情報弱者という構図になりますが、保険の場合は加入希望者が情報強者、保険会社が情報弱者、情報=健康状態という特殊な環境です。おもしろいですね。
ちなみに損保も同じで、毎晩寝たばこしてるとか、高速道路では煽り運転をしないと気が済まないとか、街でヤクザを見かけるとぶん殴りたい衝動に駆られるとか、そういう情報って保険会社側ではわかりようがありませんので、微弱な逆選択はすでに起こっているといえるでしょう。

パチンコ屋は逆選択なのかマーケティングなのか

パチンコ屋の入り口には「プロ入店お断り」と書いてあるところがあります。

これもひとつの逆選択予防策と言えそうです。

ギャンブルは大数の法則で控除率が決まっていますから、控除率を上回る成績を叩き出すプロがたくさん来店すると、店は儲からなくなってしまいます。

そうなると、単価を上げたり、設定をいじって玉が出ないようにしたりと、商品の魅力を下げる改悪を行わざるを得なくなります。そうするとパチンコ人口が減って、業界が縮小してしまうかもしれません。

しかし、どうなんでしょう。

パチンコのプロって、今でもそんなに確率以上の結果を出せるもんなんですかね?

今の台の技術の前では無理な気が。

そう考えると、プロ入店お断りの看板は、逆選択を防止しているのではなくく、「ここの店は上級者ほど勝ちやすい店に違いない」と思わせるための客寄せ看板かもしれませんね。

なるほど、だとすると、優良誤認でもないし、うまい手ですね。

まとめ

さて、逆選択は、気を付けて世の中を見渡すといろんなところで目にすることができます。

みなさんも暇すぎて死にそうなときは、死ぬ前に逆選択について思いを馳せてみてください。

おつかれ。


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