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【グーグー・イーツ】



とある薄暗く、深い森の中木々に覆われた、寂れた鳥居の後ろで黒くぼんやりとして、歯だけが白いソレが佇んでいた。


ポリ、ポリ、ぽり、ぽり、クチャクチャ、ジュルジュル、ジュル、ソレは5本の指がついていた肉を食べていた、これはソレに襲われた人間の成れの果てだった。
ソレはその食べ殼を捨てて、次の獲物を探していた。

その時に保温リュックを背負った男が現れ、ソレは襲い掛かろうとしたが、それよりも早く、そしてその男は背負っていたリュックから中身を取り出した。
その中身はパティが2枚、焼いた玉ねぎのスライス、完熟したトマト、レタスにケチャップをかけてパンで挟んだハンバーガーを呪符で包んだものだった
そのバーガーを獲物探していたソレに皿に載せて差し出した
ソレは包み紙を剥がし、ハンバーガーそのものを剥ぎ取るように、パンからチーズ、玉ねぎ、トマト、レタス、パンと上から順に具を食べていた、貪るように、静かに、味わい深く食べていた。

そして男はもう一つバーガーを取り出してソレに渡した。

ソレはバーガーを押しつぶして一口で食べないように両手で掴みじっくりと食べた、そのバーガーはある程度冷めてもうまいように作られていたバーガーだった。

そして男は、フライドポテトとコーラを出し、ソレはコーラを飲み、バーガーの包み紙に溜まった油にフライドポテトをつけて食べたり、つけずに食べたり、そのバーガーセットを食べ終わった瞬間にフッと消えた。

その怪物を浄化した男の職業は食人する化け物御用達の料理人兼配達員だ、食人する化け物たちをその男が作り、配達する食い物の旨さで浄化する、また自身が作り出す美食に病みつきにさせ使役していく、それがその男だ。

人はそんな彼をこう呼んだ、グーグー・イーツと

続く

#逆噴射小説大賞2020


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