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【企業分析】コストコ

COST (Nasdaq)
時価総額: 2,000億ドル
株価:478ドル
売上高: 1,960億ドル
営業利益: 50億ドル
(2021年)

事業内容: ホールセールクラブ(会員制倉庫型卸売・小売)チェーン
設立年: 1983年、1985年上場
本社: 米国🇺🇸ワシントン州イサクア
代表者: Hamilton E. James(会長)、W. Craig Jelinek(社長兼CEO)
従業員数: 29万人

概要

コストコ・ホールセールは、アメリカ合衆国ワシントン州イサクアに本社を置くホールセールクラブ(会員制倉庫型卸売・小売)チェーンである。

ワシントン州イサクアにあるコストコ本社

コストコのストアコンセプトは、入荷したままのパレットに乗っている商品を、大型の倉庫に並べて販売することにより、商品管理や陳列にかかるコスト(費用)や手間を、徹底的に抑える倉庫店スタイルである。

入荷した商品は、閉店後の深夜にフォークリフトで店内に運び、パレットに載せたままの状態で販売することが特徴である。また、どの店舗にもフードコートが併設されており、買い物後に持ち帰りも可能な安価な軽食が提供されている。

倉庫店数は世界で833店舗。

コストコは、1976年に創業された大型のホールセールストア(会員制の倉庫型卸売り)。米国では、ウォルマートと並び国内最大の生活用品小売店の1つとなっている。

コストコは店舗が巨大倉庫をそのまま使用していることが特徴であり、業界内でも屈指の安さを誇る販売形式となっている。

安さの秘密は有料会員プランで、年会費(3コースほどあるが)を払わなければコストコで買い物をすることはできない。

しかし、商品の安さが人気を集め、コストコの有料会員数は5000万人、家族cardなども含めた会員数でみると1億人を超えている。

プロダクト・ビジネスモデル

売上構成

食品や雑貨、生鮮食品、衣服や家具など幅広い商品を販売しています。

年会費による価格競争力

基本的なビジネスモデルは、非常に原価率の高い(つまり安い)品物を大量に仕入れ、その購入権を年会費という形で徴収するというもの。いわゆる【安い品物を買う権利を販売するサブスク】と解釈できる。

コストコの製品は軒並み非常に安い。ほとんどの商品が原価率8割を超えているというレベルである。

もちろん販売業種によって変化するが、小売業界全体としては5割から7割といわれているため、業界平均を大幅に下回る価格で販売しているということがわかる。

コストコ・ホールセール【COST】の最大の特徴は、会員制です。米国であれば普通会員の会費が年60ドルです。


 商品の販売価格の9割程度を仕入れにしており、メンバーシップfeeで利益を出す仕組みです。また、米国とカナダではメンバーシップを更新する人が9割以上という継続性が強みです。

そのような販売形態をとっているため、通常の小売り業的売上(〇〇円分の商品を売った)だけではコストコは収益を成り立たせることはできない。コストコの収益は会員費があってこそなのだ。

実際に売上を見てみると、コストコの売上の約98%は小売業の売上(Net sales)、約2%が会員費(Membership fees)となっている。

出典:Costco Wholesale Corporation

今では当たり前になったサブスクリプションサービスの先駆けと言えるでしょう。メンバー数は年5%程度増加しています。

しかし、これを利益ベースに直してみると、利益の7割を会員費が占めている。会員費ビジネスであるため、通常の小売店よりも景気の良し悪しが売上に影響しないと考えることができる。

また、利益の大半が年会費という利益率100%近い収益のため、インフレの進行による利益率悪化などに対してもある程度の耐性を持つ。

出典:コストコ・ホールセール Annual Report 2021

さらにこのビジネスモデルの強みは会員が買い物をしなくても、企業としての利益が上がることです。コロナ禍では強みを発揮するビジネスモデルと言えます。

 このビジネスモデルで成長を続けるためには、店舗同士の競合が発生しない場所に出店することが肝要です。会員の商圏が被らないようにしながら、会員を増やしていくということです。


 実際年20~30店の新規出店を続けてきています。

仕入先への価格交渉力

コストコは商品の仕入れや陳列方法にきちんとした基準を持っている。

具体的には、コストコは取り扱う商品に対してブランドを絞っているということだ。実際にコストコの行ってみるとよくわかるが、ある商品に対して複数ブランドの商品を置いてあるケースは少ない傾向にある。

これはブランド数を限定することで、その仕入先に対して価格交渉力を強く保つことを狙っているからだ。安く仕入れが出来れば、その分安く商品を販売でき、それはコストコのユーザーの満足度の上昇に寄与する。

結果としてユーザー解約率が低下(実際9割以上が継続契約している。)し、収益の安定化につながるというわけだ。

コストコのアイテム数は、ハイパーマーケットであるカルフールの7万点に対して4000点となっている。

4000点にまで絞り込んだ品揃えをきちんと「変化」させているのも見逃せない点だろう。同社では、常にカテゴリー毎の売上目標と結果を見て月に200から300品目を入れ替えており、季節ごとの商品入れ替えにも熱心である。

巨大倉庫を店舗にしている

また、コストコは店舗が巨大倉庫を利用している点が特徴的だ。

倉庫をそのまま店舗にすることで、バックヤードを作らず、面積を効率的に販売につなげられる利点がある。そのため、利益率を高めることができる。

他にも多くの利益上昇の策はあるが、コストコで重要なのはメンバーシップの会員数と継続率だ。そこを重要視していきたい。

総合販売店の業界情報

小売業界はかなり細分化されているため、ここではコストコが属する総合販売店の業界情報をお伝えしていく。

小売りはそもそも何を売っているか?で大別されるケースが多い業界だが、この総合販売店業界は日常生活で使用する商品や食品を含めたあらゆる商品を販売しているタイプの小売店だ。

この業界の基本的な戦略は安さでお客様を引き付けるというもの。

業界として安さを魅力にしているため、比較的インフレは影響を受けやすい業界だといえよう(ロジックは先述のとおり)

小売店の基本的なビジネスも流れは次のとおり。

【小売店ビジネスの流れ】

・どんな商品を仕入れるか?どんな品ぞろえにするか?
・どこからどのように仕入れるか
・店舗をどんなスタイルで運営するか(コストコはここで有料会員プランを採用)
・広告・宣伝をどうするか?
・どのように店舗を運営するか(実際のコスト管理など)

この5項目で流れていくケースが多い。企業を比較する際は上記5項目でどの点が違うかを考えてみよう。

昨今のトレンドとして注目されているのがECへの対応だ。コロナもあり、より急速に加速したEC需要は多くの小売店のEC対応を加速させた。実際に、これまではAmazonなどの伸長のおかげで総合販売店の売上はやや悪影響を受けていた。

ウォルマートやコストコといった超大型店から、やや小型の小売店に至るまで多くの小売店でEC対応が本格化している点には留意したい。

コストコの競争優位

・非常に安価な価格で商品を販売できるシステムを持ち、その情報が非常に広まっているという知名度の高さ故、今後の人口増加・所得増加・消費増加を業績に反映させることが可能。

・年会費が利益の大半を占める収益構造のため、業績の安定化を図ることが可能。

・インフレなど、一般的に小売り業界に対して逆風になるイベントに対してもある程度の耐性を持つ。

・現在は米国内での展開が主だが、日本などを含め、諸外国へ進出をしている。そのため、今後の海外展開の成功、進出成功先での所得増加などにより業績拡大の機会を得ることが可能。

コストコのリスク

・倉庫をまるごと使うという店舗形態を採用しているため、出店地域に一部の制限がかかる。ウォルグリーンのような小型薬局小売店のように、全国民の8割の生活圏にリーチするというような生活密着型を前面には押し出せない。

・ターゲットが比較的上流層であるがゆえに、上記内容とも被るが、出店地域が限定される。大々的な出店攻勢がかけられないため、結果的に業績の急拡大が難しいという側面がある。

・小売業界全体の逆風でもあるが、Amazonような大規模ECの進出によって対面販売の割合が下落(ECに客を取られている)している。対応策も講じてはいるがやはりやや遅れ気味のため、ECへの対応策が後手に回っている可能性がある。

小売業はどの企業であっても常に競争にさらされています。実際、コストコ・ホールセール【COST】のAnnual Reportには以下の通り、competitorとして具体的な名前を挙げています。

“Walmart, Target, Kroger, and Amazon are among our significant general merchandise retail competitors in the U.S”
(ウォルマート、ターゲット、クローガ―、アマゾンは米国において小売業の重要な競争相手である)
 Amazon【AMZN】の存在感が増し、現在はコストコ・ホールセール【COST】を抜いて世界第2位の小売業になったことが象徴です。

 ショッピングしてもらわなくてもメンバーシップフィーで利益を出せるとはいえ、同じようなことをオンラインショッピングでできるようになりつつあるのも事実です。

市場動向

世界市場シェア

スーパーマーケット各社の2020年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2020年の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はウォルマート、2位はアマゾン、3位はコストコとなります。

ウォルマートが世界1位の座を維持しています。2位とは2倍弱の差をつける王者の風格は今も存在です。2位につけたのは、オンラインリテーラーの雄アマゾンです。クラウドサービス(AWS)にも強みを持っています。

3位につけたのは米コストコです。会員制ディスカウントストアというカテゴリを創出し、ローコストオペレーションによる顧客囲い込みで競争力を高めています。

11位には英国のテスコ、10位にはフランスのカルフールが入っていますが、かつての総合スーパー・GMSモデルの雄も最近は元気がありません。一方でJD.comなどは勢いを増しています。

市場規模

当データベースでは、スーパーマーケット、ハイパーマーケット業界の2020年の世界市場規模を5兆ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。

調査会社のグランビューリサーチによれば、2019年のスーパーマーケット等の食品・雑貨小売り業界の市場規模は11.7兆ドルです。2020年から2027年にかけて年平均5%での成長を見込みます。

スーパーマーケットの戦略軸の変化

スーパーマーケットやハイパーマーケットという食品雑貨の販売手法は時代の流れとともに進化を続けています。

チェーンストアの確立:ドミナント戦略

1970年~1990年代はチェーンストア&ドミナント戦略の時代です。店頭商品の配送網を効率的に構築するために、地域集中戦略や立地重視戦略でスーパー各社が出店場所の面取り合戦をしました。大型・モールやコンビニフォーマットが全盛時代を迎えました。

ECの勃興:クロスリージョン戦略

一方、2000年代に入るとECを中心としたクロスリージョン&ロングテール戦略でドミナント戦略を駆逐する動きが活発になりました。賃料が高い地域でなく、地方に大倉庫を設け、地域をまたいで商品を届ける戦略です。家にいながら商品を受け取ることができる利便性が支持され、アマゾン、楽天、アリババなどが勢力を伸ばしました。

オムニチャネル戦略

2010年代に入ると、実店舗を持つスーパーマーケットやハイパーマーケットが反撃に出ます。クロスリージョン戦略は時間や運送費がかかるために、生鮮食品分野を攻め切ることができませんでした。

スーパー側は、店舗を倉庫と兼用したネットスーパーを導入することで、ECの弱点を攻めていきました。店舗とネットスーパーのオムニチャネル戦略で巻き返しを図ります。EC側は、アマゾンがホールフーズ・マーケットを買収するなど、オムニチャネルの拠点を得る動きを取りました。

2020年代:ニューリテールの時代

2020年代に入ると、店舗フォーマットの更なる進化が見られました。配送専用のダークストア、店員を誰もおかない無人店舗で、店舗運営のコストを削減しながら、より消費者に近い場所でのサービス提供方法も模索しています。

主なM&A

2021年 アリメンテーション・カウチタードが、フランスのカルフールに対して買収提案を行いましたが、その後買収提案を撤回しました。

2021年 クレイトン・ダビリアー&ライス(CD&R)が英国のスーパーであるモリソンズを買収

2021年 KKRと楽天による西友買収

業績

売上高と利益

出典: コストコ・ホールセール IRサイト

売上高は大きくても、売値は仕入れ値に近いので営業利益はほとんどありません。

BPSとEPS

出典: コストコ・ホールセール IRサイト

BPSはでこぼこですが、EPSは右肩上がりです。

キャッシュフロー

出典: コストコ・ホールセール IRサイト

新規出店には用地の確保、建物の建設が必要ですから、それなりの設備投資が必要です。よって、営業CFは出店戦略に左右される傾向があると考えられます。

地域別の売上高は、以下の通りです。

・アメリカ:452億ドル、前年同期比+16.2%

・カナダ:90億ドル、前年同期比+22.2%

・その他:85億ドル、前年同期比+19.3%

地域別の売上高構成比は、アメリカが72%を占めます。

アメリカeコマースの売上高は、前年同期比+11.2%となりました。

コストコの会員数の推移

国別店舗数

経営者 

CEOクレイグ・ジェリネック氏

コストコのCEOクレイグ・ジェリネック氏。

コストコのCEOクレイグ・ジェリネック(Craig Jelinek)氏は、1984年から同社で働いてきた。
ジェリネック氏は、そのキャリアを主にオペレーション部門で過ごしてきた。

同氏は2012年、共同創業者のジム・シネガル(Jim Sinegal)氏の後任としてCEOに就任した。

コストコのCEOクレイグ・ジェリネック氏の"コストコ歴"は長い。

コストコのはじまりは1976年にオープンした「プライス・クラブ」で、コストコの1号店がオープンしたのは1983年だ(両社はのちに合併)。ジェリネック氏は1984年から同社で働いてきた。

ビジネス誌『Puget Sound Business Journal』によると、2018年現在、ジェリネック氏の年間基本給は80万ドル(約8900万円)で、ボーナスとして9万7000ドル、株式報酬として約630万ドル、年金、退職金、生命保険、社用車の使用などで21万4000ドルを得ているという。

ジェリネック氏のキャリアを振り返ってみよう。

ジェリネック氏は1952年生まれ。ロサンゼルスで育った。

ジェリネック氏の父親は、B-1やB-70といった爆撃機の建造に携わっていた。同氏はのちに、父親から航空業界には進むなと言われたと語った。

なぜなら、売り上げが「常に民主党か共和党かに左右される」からで、政権が交代するたびに変わるからだと、ジェリネック氏はシアトル・タイムズに語った。

ジェリネック氏は、サンディエゴ州立大学に進学した。コストコの共同創業者ジム・シネガル氏も、同大学の卒業生だ。

共同創業者ジム・シネガル氏

コストコのVP、リチャード・ガランティ(Richard Galanti)氏は2010年、ジェリネック氏は「コストコを立ち上げた多くの人々に囲まれてきた」と語った。

その1人がシネガル氏だった。ジェリネック氏はシネガル氏と同じ大学に通っただけではない —— 2人とも、ディスカウントストアのフェドマート(FedMart)で働いていた。

『Mass Market Retailers』によると、ジェリネック氏がフェドマートで初めての仕事を手に入れたのは1969年。同氏はここで12年間を過ごした。

ジェリネック氏は、フェドマートでバイトをしているときに父親からかけられたある言葉が、小売業に身をささげるきっかけになったと言う。

「『分かるか? 人は常に食べなければならない』と父は言ったんだ」と、ジェリネック氏は語った。「わたしはこの言葉を忘れたことがない。そこには常に仕事があるということだ」

1981年、ジェリネック氏はフェドマートを辞め、ラッキー・ストア(Lucky Store)で3年間働いた。

そして1984年、ジェリネック氏はコストコでの長いキャリアをスタートさせた。

1980年代のコストコ

Mass Market Retailersによると、ジェリネック氏はコストコでのキャリアの大半をオペレーション部門で過ごした。

2004年には、マーチャンダイジング担当のエグゼクティブ・バイス・プレジデントに指名された。

シネガル氏の後任としてCEOに就任したのは2012年のことだ。

財務状況

バランスシート・キャッシュフロー等

株価推移

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