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【企業分析】The Trade Desk

TTD (Nasdaq)
時価総額:256億ドル
株価:56ドル
売上高:12億ドル
営業利益:▲1.2億ドル
(2021年)

事業内容: 広告データテクノロジーの提供
設立年:2009年、2016年上場
本社:米国カリフォルニア州
代表者:Jeff Green創業者兼CEO
従業員数:1,967人

概要

The Trade Desk社は、2009年に創業した米国カリフォルニア州を拠点とするデジタル広告配信プラットフォーム企業です。2011年からは主に広告代理店に対して、広告のバイサイドにフォーカスしたDSPプラットフォームを提供しています。DSPは「Demand-Side Platform(デマンドサイドプラットフォーム)」の略で、広告出稿の効果を高めるため、より安く効率的に広告枠を仕入れるための仕組みです。

2014年には日本市場にも参入し、日本法人のThe Trade Desk Japan株式会社がサービスの提供を開始しました。

Trade Deskはプログラマティック広告を配信する際に必要となるDSP(Demand Side Platform)のツールを提供している会社です。
 プログラマティック広告とはネット広告をリアルタイムで入札形式で買い付ける形式の広告となります。
 通常のネイティブ広告やアドネットワークの場合には「どこに広告を出稿するのか?」という「面」を抑えて出稿をしていくのが基本です。一方でプログラマティック広告とは「どの様な属性の消費者に向けて広告を出稿するのか?」という「人の属性」を抑えて広告出稿を行います。
 消費者のニーズが多様化する中で「人の属性」を抑えて細かくターゲティングをして広告出稿を行うことはマーケティングの観点では必須になってくると思います。またプログラマティック広告は様々なメディア横断で自動で買付をしてくれるため、広告主からするとイチイチ広告枠を考えて出稿作業をして、という手間は抑えられたりということもあったりします。

トレードデスクのオフィス

プロダクト・ビジネスモデル

広告出稿者向けのオムニチャネルのデジタル広告プラットフォームとなります。

ユーザーのターゲティングを行ったり、ユーザーのデータを蓄積・分析したり、APIにより外部サービスと連携したり、広告運用のレポーティングを行うことができたりします。要はプログラマティック広告運用の業務の大半がThe Trade Desk上で完結できる構成になっています。上記の画像内で「広告バイヤー」という言葉を使っているのも一つポイントだったりします。
 対応している広告チャネルとしてはWeb広告だけではなく、CTV(Roku等)・スマホ・PC・オーディオ(Spotifyなど)など多岐に渡ります。

Trade Deskの特徴としては、あくまでテクノロジーの提供であって、広告運用サービスを提供するものではないといった所があります。後ほどまた説明しますが「サービス」の部分に入り込んでしまうと、大手広告代理店と競合する立ち位置になってしまい中々大変なんですね。
 それを回避することで、世界最大の広告代理店のWPPのデジタル広告運用でTrade Deskを使ってもらい、WPPが受注した広告運用費からもマージンを取っていくことに成功したりしている訳です。

DSPとは?
 さて、Trade DeskのメインプロダクトであるDSPとは何か?というお話です。その為にはまずはプログラマティック広告とは何か?という話を簡単に説明する必要があります。
 ネット広告の歴史で行くと、先ずはバナー広告が最初に生まれました。1994年ごろの話です。その後Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンが生まれリスティング広告という概念も生まれました。リスティング広告とは検索エンジンの検索内容に応じて出てくる検索窓の下の広告枠ですね。
 その後インターネットは更に進化し、Cookie情報などのユーザーデータをもとにクロスチャネルでターゲティングを行い、ユーザーに広告を出すといったことができる様になりました。大手のメディアなどは自社のアドネットワークを立ち上げ、自社のページ以外にも広告配信を行う様になりました。Google AdSenseなどもこの分類です。
 アドネットワークの登場により、それ以前は売れなかった広告枠にも広告主が付くようになるといったメリットがありました。個人のブロガーに広告収入が入るって冷静に考えて凄いことですよね。
 一方でアドネットワークを使っても捌けない広告枠があるといった問題があり、それを直接取引で捌ける仕組みを作ろう、というのがプログラマティック広告の始まりでした。(色々省きすぎている気もするのですがご了承ください)
 プログラマティック広告とは、ユーザーがとあるWebサイトを訪問した際にCookie情報などから瞬時にユーザー属性を識別、広告枠の入札を行い、落札し、広告配信を行うといったシステムです。この一連のプロセスが僅か0.1秒ほどで行われます。
 その様な高速で行われるプロセスのため、媒体側・広告主側ともに作業は自動化しておく必要があります。その際に媒体側で使われるツールがSSP(Supply Side Platform)、広告主側で使われるツールがDSP(Demand Side Platform)です。Trede DeskはこのうちDSPを作っています。

DSPとは基本的には広告の入札をコントロールするツールですが、それを支えるために色々な機能が付随しています。Trade DeskのHPを参考に簡単にまとめてみたいと思います。

①インベントリ&マーケットプレイス(RTB)
 これがDSPのコアになるRTB(Real Time Bitting)の機能になります。広告のオープンマーケットで入札を行い、落札し、広告を出稿する機能です。
 また、オープンマーケットだけではなく、PMP(プライベートマーケットプレイス)という、一部の招待された広告主だけが参加できる広告取引所にTrade Desk経由で参加することも可能です。
②プランニングツール「Planner」
 広告出稿のプランニングを行うためのツールです。後述するAIエンジン「Koa」の分析結果も活用して、広告出稿前に広告予算配分のプランニングを行うことが出来ます。
 予算、コンバージョン等の目標値、期間、地域などのパラメータを入力すると最適な広告プランを自動作成することが出来ます。
③AIエンジン「Koa」
 このAIエンジンはTrade Deskが開発したもので、インターネット全体のデータを分析し、広告主が最適価格で広告出稿できるように支援するエンジンです。プログラマティック広告は自動化されていると言えど「この単価までなら出しても良い」といったパラメータは事前に設定する必要がありますのでそのサポートをするわけですね。また最適価格のレコメンデーションの他、クロスチャネル・クロスデバイスの最適な予算分配のレコメンドなども出来る様です。
④データマネジメントプラットフォーム(DMP)
 DMPとは要はエンドユーザーの情報を蓄積しているデータベースですね。個人を特定できるような情報までは持てませんが、どのデバイスがどの様な属性の人のものなのかといった事をデータとして貯めることができるもので、Trade Deskは独自のDMPを持っており、Trade Deskの顧客は追加料金なしでそれを使うことができます。
 DMPはプログラマティック広告のシステムを成立させるためには必須のもので、広告の入札・落札を行う際にはDMPのデータを基礎として行われます。
 顧客が独自に持つDMPやCDPをAPI連携で組み合わせて更に強化することもできますが、顧客が自社でDMPを用意せずともプログラマティック広告を運用できるのは、DSPベンダーとしては必須になります。
⑤クロスデバイスターゲティング
 エンドユーザーって普通は複数のデバイスを持っていますが、その複数のデバイスが同一ユーザーのものだと認識して、デバイスを跨ってターゲティング広告を打つためのプロダクトです。
 この属性の人にはこのデバイスに対して広告を打つと最も効果が高い!みたいな事を分析したりすることができます。
2-4.連携先のメディア
 DSPを使うにあたっては連携先のメディアの豊富さも非常に重要になります。Trade Desk連携先としては以下の様に非常に豊富な連携先があります。
 GoogleやYahoo!、Aol、msnなどの検索サイトはもちろんの事、BBCやCNBCなどのニュースメディア、RokuやSpotifyなどの広告モデルのエンタメサービスなど、色々な接続先に広告を配信することができます。

上記に限らず、接続先は7,000以上あるそうなのですが、AlibabaやTencent、Baiduなどの中国系企業との連携というのも強化しているそうです。以下の様に米国のほか中国・香港や日本、東南アジアなどにもフットプリントを伸ばしており、特に中国市場での売上拡大も今後期待できるのかなと思います。

配信先の豊富さも重要ですが、配信先を決める際の基礎になるDMPの拡充も非常に重要です。その点においてもTrade Deskは色々なデータプロバイダーからデータ提供を受けてDMPを強化、顧客が最適な広告配信が行えるようにサポートしています。


2-5.ビジネスモデル
 ビジネスモデル上の特徴としては、①あくまで広告の売り主(メディア)からは独立し中立性を保っているという事と、②マネージドサービスの領域には踏み込まず既存の広告代理店からの中立を保っていることが挙げられるかなと思います。
 ①についてはDSPなのである種当たり前なのであまり深く説明する必要は無いかなと思います。一方で②については重要だと思っています。
 ②の「サービスの領域に踏み込まないこと」は要は「広告運用業務には踏み込みません」という事で、広告代理店様のシマは侵さないという事ですね。日本もそうですが、既得権益に近い大手広告代理店とガチ勝負をしてしまうといつか潰されてしまうので大変なんですね。
 そこでTrade Deskは広告主に直接使ってもらうという売り方もありつつ、広告代理店に広告運用の一つとしてTrade Deskを使ってもらうという売り方もしています。
 そうやって既存の商流を崩さないことで広告代理店にもマージンが落ち、かつ広告主もコスト削減ができ広告のパフォーマンスも向上でき、全員損をしないという構造を作っている訳ですね。
 理想のビジネスモデルとしてはIR資料にもある通り、広告代理店(Agency)が予算の一部をTrade Deskに振ってくれるような形になる様です。

その結果、直接的な顧客のほとんどは広告代理店の様で、世界最大手の広告代理店のWPPやOmnicomなどもTrade Deskの顧客の様でこの2社及びグループ会社からの売上だけで全体の20~30%を占めていることは注意が必要です。
 またマネタイズについては基本的には広告取引額の20%をTrade Deskを貰い受けるという従量課金型のビジネスモデルとなっています。
 従量課金型&一部顧客への大きな依存、Fastlyと似ていますよね。この様なビジネスモデルは伸びる時は凄いのですが、急に業績予想を大きく下回ったりする事があるので、注意は必要です。

市場動向

TradeDeskがどの様な市場を見据えて戦っているのかについても見てみましょう。ディスプレイ広告が今のTradeDeskの主戦場な訳ですが、それだけで$50Bnほどの市場規模になっています。DSPベンダーの取り分は20%ですので、$10Bnくらいになります。昨年の調査だとDSPの市場規模$9.7Bnほどですので、概ね数字はあってきますね。

市場調査は世界のDSPベンダーの売上の合計(市場規模)を集計した調査になりますが、2019年時点での市場規模は$9,770Mnでした。TradeDeskの昨年の売上は$661Mnですので、市場シェアとしては昨年時点では6.8%程度だった事が分かります。

6.8%という数字だけ見るとそこまで大したこと無いですね。一方でUSマーケットだけに絞るとどうなるでしょうか?
 TradeDeskの売上は83%ほどが米国内の売上です。すると約$550Mnほどの売上が昨年米国内であったという事になります。一方で2018年時点の数字ですが世界全体に占めるDSP市場の内米国の割合は38%でした。これが2019年も変わらないとすると2019年の米国DSP市場は約$3,700Mnです。
 そこから考えるとTradeDeskの米国内のシェアは14.8%となります。メジャープレイヤーだけで15社くらいの競合がいる中ではまずまずな数字かなと思います。
3-2.コネクテッドTV
 さて、世界の広告市場$700Bnのうち特に金額が大きく、TradeDeskが狙いうる市場の一つがテレビ広告市場になります。
 現在のテレビ広告市場だけで$230Bnの規模があり、ディスプレイ広告の4.6倍の規模になっています。TradeDeskが狙いを定めているのがこのテレビ広告のリプレイスです。
 Rokuのnoteにも書きましたが、特に米国ではケーブルテレビからRokuなどのコネクテッドTVへの急速なリプレイスが進んでおり、特にRokuの広告売上は直近では年率70%前後での成長となっています。

コネクテッドTVの場合はユーザーの属性や嗜好に合わせて広告をカスタマイズして流すことができるのが特徴です。その場合はDSPの様なツールを噛ませた方が効果が高いのは間違いないですね。
 コネクテッドTV化の流れが更に加速した際にTrade DeskがコネクテッドTV広告市場において存在感を持てているのかは非常に重要になります。
 以下はTradeDeskの米国国内でのコネクテッドTVのリーチ数になります。TradeDeskは既にコネクテッドTV経由で8,000万世帯以上はリーチできているそうです。米国の総世帯数は1.2~1.3億世帯ですので、既に2/3程度の世帯向けにはコネクテッドTV経由で広告配信ができる体制が整っているという事になります。

今後ケーブルテレビよりもコネクテッドTVの方が面が増えるという事もありますし、広告単価もコネクテッドTVの方が高く取れるというのも特徴の一つです。以下の試算の通り、コネクテッドTVの方が細かいターゲティングができるが故に2倍の広告単価を取れるという試算になっています。

こうなってくると、Trade Deskの直接の顧客である広告代理店もこれまでのテレビ広告からコネクテッドTV広告推しに切り替えるインセンティブも湧きますので、業界全体としてもこの流れは更に加速していくのかなと思います。
 Rokuの広告売上成長は70%ほどですが、TradeDeskのコネクテッドTVセグメントの売上成長はYoYで100%を越えているそうです。
 AmazonのFire TV上の広告プラットフォームはTrade Deskにも開放されており、米国の2大コネクテッドTVのAmazonとRokuのどちらが勝者となってもTrade Deskの業績に大きな影響が出ないというのも良いポイントの一つとなります。

最新プラットフォームSolimarとは

The Trade Desk社は2021年7月、最新の広告配信プラットフォーム「Solimar」を発表しました。設定した目標に応じて、インターネットに接続されたテレビ「コネクテッドTV」を含むデジタル広告を最適化するためのソリューションです。

Solimarの特徴のひとつは、プライバシーを考慮し、企業が収集した自社の顧客やWebサイトの訪問者に関する「ファーストパーティデータ」を活用して、精度の高い広告配信ができることです。広告配信用の識別子としては、これまで一般的に「Cookie」が使われてきましたが、プライバシー保護の観点から利用規制が強化されています。そこでThe Trade Desk社は、新たな識別子「Unified ID 2.0」を開発し、新しい方法での広告ターゲティングを可能にしました。

The Trade DeskのAI「Koa」とは

The Trade Desk社の製品に活用されているAI技術は「Koa」と呼ばれます。KoaはSolimarの前身である「Next Wave」から導入され、広告の分析や最適化における重要なエンジンとして機能しています。

デジタル広告の配信においては、配信手法を最適化するまでに試験的な運用期間が必要となりますが、KoaはThe Trade Desk社のデータを活用して、配信手法の改善に向けたレコメンデーションを提示します。これにより、最初から精度の高いデータを活用することで、試験運用期間を短縮することが可能になります。

Koaの背景にあるAIの仕組み

he Trade Desk社は、2021年第2四半期において前年の約2倍となる2億8,000万ドル(約307億8,000万円)の収益を達成しており、デジタル広告市場の拡大を背景に、今後も大きな成長が見込まれています。2014年には日本市場にも参入し、日本法人のThe Trade Desk Japan株式会社がサービスの提供を開始しました。

最新プラットフォームSolimarとは

Discover Solimar from The Trade Desk



 

The Trade Desk社は2021年7月、最新の広告配信プラットフォーム「Solimar」を発表しました。設定した目標に応じて、インターネットに接続されたテレビ「コネクテッドTV」を含むデジタル広告を最適化するためのソリューションです。

Solimarの特徴のひとつは、プライバシーを考慮し、企業が収集した自社の顧客やWebサイトの訪問者に関する「ファーストパーティデータ」を活用して、精度の高い広告配信ができることです。広告配信用の識別子としては、これまで一般的に「Cookie」が使われてきましたが、プライバシー保護の観点から利用規制が強化されています。そこでThe Trade Desk社は、新たな識別子「Unified ID 2.0」を開発し、新しい方法での広告ターゲティングを可能にしました。

The Trade DeskのAI「Koa」とは

The Trade Desk社の製品に活用されているAI技術は「Koa」と呼ばれます。KoaはSolimarの前身である「Next Wave」から導入され、広告の分析や最適化における重要なエンジンとして機能しています。

デジタル広告の配信においては、配信手法を最適化するまでに試験的な運用期間が必要となりますが、KoaはThe Trade Desk社のデータを活用して、配信手法の改善に向けたレコメンデーションを提示します。これにより、最初から精度の高いデータを活用することで、試験運用期間を短縮することが可能になります。

Koaの背景にあるAIの仕組み

次に、Koaに活用されているAIの仕組みについて紹介します。

AIの定義はさまざまですが、一般的には「人間のような高い知能を持ったコンピューター」のことを指し、以下のような特徴を持っています。

自律性(誰かの指示がなくても自動的に作業をする)
適応性(経験や学習を積むことによってパフォーマンスが向上する)
AIを実現する技術には、反復学習によって膨大なデータからパターンを抽出する「機械学習」や、自動的に学習し続けて精度を高める「ディープラーニング」などがあります。

デジタル広告の配信では、これまで手動で広告のパフォーマンスを確認しながら、オークション形式で出稿していく手法が一般的でしたが、AIの活用によってこれらの負荷を軽減し、成果を高める手法が広まりつつあります。

広告のバイサイドにおいては、決められた広告予算内で売上を最大化するため、過去の広告出稿実績の分析、出稿先の選定、必要なコストなどの算出にAIが使われています。また、広告のサプライサイドでは、広告収益の最大化を目的として広告枠の情報を一括管理し、収益性の高い広告をAIが判断して自動配信する仕組みなどが提供されています。このように24時間365日行われる広告枠の取引の中で、AIを活用した広告運用の自動化が進んでいるのです。

競合状況

GartnerのMagic Quadrantも見てみましょう。

この表で右上にいればいるほど優秀な企業という事になりますが、上記の通り、TradeDeskはLEADERの格付けを得られています。
 Googleはまぁそうだろうなと思いつつ、MediaMathが気になる所ですがコロナ直後の広告費カットの影響なのかあまり良い財務状況ではない様で、身売りも検討していた様です。この後Exitの報道は出ていませんが、GoogleとかFacebookとかに売却されてしまうと厄介なのかもなと思いました。

上記のMagic QuadrantはGartnerのアナリストの評価ですが、顧客からの評価も上々です。5社だけが選ばれているGartnerのCustomer ChoiceにGoogle/Facebook/Amazonなどと並んで選出されていたりもします。

結論として、アナリスト視点でも顧客視点でも非常に高い評価を得られている所や今後マーケット自体も大きく拡大傾向にあるという観点から、あまり競合企業というものは強く意識しすぎなくても良いのかなと思いました。
 またWPPなどの大手代理店がTradeDeskを選んで使っていることからもプロダクトが他社よりも優れているということも読み取れますね。

競合他社(情報処理・外注サービス)の株式時価総額(2021年6月末)

業績

売上
 売上については過去数年分の成長を先ずは見てみましょう。2014年から2018年までの間は継続してYoY50%を越える成長となっていましたが、2019年に入ってやや減速気味となっています。
 これは2010年代前半から市場が急激に立ち上がり始めたWeb向けのプログラマティック広告の需要増加が落ち着き始めているからかなと思います。

2019年以降の売上をQごとに分解すると以下の様になります。

その中で成長率が加速しているセグメントが何になっているのかを簡単に見てみると、コネクテッドTV、モバイルビデオ、オーディオの3セグメントです。やはり動画・音楽コンテンツ向けの広告が伸びているという事ですね。

この3セグメントが伸びているとはいえ、全体に占める割合はまだまだ低いのが現状です。モバイルビデオは下記のMobileのセグメントの一部かと思いますが、メインはFacebookなどのモバイルアプリ上の広告だと思います

 となると3セグメント合わせて10%にも満たない水準かと思いますので、10%のものが70~100%成長したところで、全体への寄与は7~10%ほどという事になります。
 今後この3セグメントの成長率も継続し、かつ全体に占める割合も増えてくるという事があれば、成長率の再加速もある様な気もしますが、それにはあと1年ほどは少なくともかかりそうな印象です。
4-2.Gross Spend・テイクレート
 TradeDeskはKPIをあまり公開しないので、分析が難しいのですが、年単位のテイクレートは計算できるので見てみたいと思います。
 計算してみると、2016~2017年には20%を割っているものの、2018年以降はテイクレートが盛り返し21%にまで達しています。付随サービスを色々と追加し、追加の売上が取れ始めているという良い傾向なのかなと思います。

今後懸念するポイントとしてはDSPが完全にコモディティ化し、テイククレートが一気に低下してしまうことがないかという所になります。
 他のDSPベンダーも大体は手数料を20%に設定している様なのですが、その業界標準が崩れないかという所は気になったりします。

Gross Profit
 粗利の水準としては基本的には75%以上の高い水準をキープしています。
今年のQ2は急に売上が減った為か、粗利率も69.8%まで下落してしまっていますが、逆にQ3は急に売上が増えたことで粗利率も大きく改善しています。

経営者 

Jeffrey Terry Green(1977年生まれ)は、共同創業者兼CEOです。2007年にマイクロソフトに買収されたデマンドサイド広告プラットフォームであるAdECNを共同設立した経験も持っています。

2001年にブリガムヤング大学で文学士号を取得し、南カリフォルニア大学でマーケティングコミュニケーションの学位を取得しました。

グリーンは、ソルトレイクシティに拠点を置くマイクロソフトのMSN部門でテクニカルアカウントマネージャーとしてキャリアをスタートさせました。2003年に、彼はデジタル広告にプログラマティック取引をもたらすためにAdECNを設立しました。  AdECNは、2007年にMicrosoftに販売した最初のデマンドサイド広告交換サービスになり、AdECNExchangeのCOOになりました。  Greenは、2009年に、マイクロソフトの元従業員であるDave Picklesと、第2世代のプログラマティック広告テクノロジー企業であるTheTradeDeskを共同設立しました。

 2016年9月、The Trade DeskはIPO(NASDAQ:TTD)を開始し、初日は「デマンドサイドプラットフォームに対する大きな信頼の投票」と報告され、以来、最高のプラットフォームの1つとして挙げられています。 

株価推移

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