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【企業分析】Okta

OKTA (NYSE)
時価総額:130億ドル
株価:82ドル
売上高:13億ドル
営業利益:▲7,400万ドル
(2022年)

事業内容: クラウド管理サービス
設立年:2009年,2017年上場
本社:米国サンフランシスコ
創業者: Todd McKinnon(CEO), Frederic Kerrest(COO)
従業員数:5,030人

概要

米国のクラウド管理サービス企業。企業向けにID管理システムを提供し、様々な企業を統合化アプリに接続する。同社はログイン、モビリティ管理、多元的な認証、ライフサイクル管理、ディレクトリ製品をIT顧客に提供する。また、開発者のための開発ツール、認証、APIアクセス管理などを展開する。本社はカリフォルニア州サンフランシスコ。

Okta, Inc.は主にアクセス管理に関するセキュリティプロダクトを提供している企業です。Oktaの領域はIAM(Identity and Access Manegement)などとも呼ばれます。
 2009年に米国で創業された企業ですが、創業当初はSaasure Inc.という社名でした。(語源はSaaS Asureとかですかね、良く分からないですが…)
 その後2010年にOkta, Inc.という社名に社名変更をしています。この"okta"という単語は、実は気象学における雲の量を表す単位として使われている言葉だそうで、この当初からクラウドサービス向けのセキュリティプロダクトを提供することを想定していた様です。

近年、会計や人事、社内チャットや会議など、多くのソフトウェアがクラウド上でサービスとして提供(SaaS)されるようになりました。
ソフトウェアを導入する企業からすれば一括で買い上げて導入するより初期費用が安く済みますし、ソフトウェアの販売者側も、長期的な収入・関係構築を期待できます。

しかしそれに伴い、IDやパスワードの使いまわしや、簡単に予測できる内容(123456など)が設定されるなど、セキュリティ面での問題が生じています。
特に、クラウド上にデータを保管することが増えている今、この問題は大きなものでした。

これらを解決したのがオクタです。
オクタの提供する、信頼性・拡張性に優れた、IDやパスワードを一元管理できるクラウドプラットフォーム”Okta Identity Cloud”を使用することで、ユーザーは安心してサービスやソフトウェアに接続することができます。

シングルサインオン(SSO / 一度認証・ログインすれば、以降は紐付けられた複数のシステム、ソフトウェアを認証なしで利用できる仕組みやサービス)をはじめ、多要素認証、APIアクセス管理など、幅広いサービスを提供しており、ユーザーの利便性と、企業にとって重要なセキュリティの信頼度を両立しています。
また、企業の管理者は、従業員ごとのアクセス権限付与、履歴のチェックも容易になります。

オクタは主に、これらのSaaSビジネスにおける、サブスクリプション収益を売上としています。

2022年1月末時点で15,000を超える顧客が”Okta Identity Cloud”を使用しており(なお2021年1月末は10,000を超える顧客としていた)、統合済みのプロバイダーは7,000以上にのぼります。
このプロバイダーには、AWS、シスコ、クラウドストライク、Google Cloudなどをはじめとした、多様なインフラ、セキュリティ、アプリケーションが含まれます。

プロダクト・ビジネスモデル

OktaはOkta Identity Cloudという名称でプロダクトを提供しており、主要なユースケースとして従業員のセキュリティ(Workforce Identity)と顧客のセキュリティ(Customer Identity)の2つを想定してパッケージングがされています。

プロダクトライン
 Oktaは元々は従業員のアクセス管理(主にSSO)を主軸にして事業を展開していたのですが、徐々にプロダクトラインを広げ上記の様なラインナップになっています。Workforce IdentityとCustomer Identityは一部内包される機能が被っており、以下の様な関係性になっています。MFA(多要素認証)やライフサイクル管理(アクセス権付与/削除の自動化)やアクセス管理機能は両方で必要になる機能の様ですね。これらの機能は2020年に全てマイクロサービス化した為、ユーザーは自由に組み合わせて開発を行い自社のプロダクトや社内ITシステムに組み込んで使うことができることが特徴の様です。(当初はSaaSプロダクトへのアクセス管理のみが想定されていましたが、今ではオンプレにも使えますし、自社プロダクトに組み込むことも可能です)

プライシング
 価格設定はWorkforce IdentityとCustomer Identityでは異なっています。使い方が違うので別のプライシングにした方が良いという事ですね。
プライシング:Workforce Identity
 こちらについては、プライシングは使う機能ごとに、1 Userあたり月●ドルという価格設定になっています。例えば以下の様なイメージになります。
 ・SSO:$2/mo/user
 ・Universal Directory:$2/mo/user
 ・MFA:$3/mo/user
 ・Advanced Server Access:$15/mo/server
 基本的には年間契約の様なのですが、1顧客あたりの最低契約金額は$1,500という事で、SSOだけ使うにしても少なくとも60人以上の組織での使用が想定されている値段設定になります。そもそもアクセス管理は組織の規模が小さい場合は手動で対応する事ができますので、小規模の会社に大してはOktaのプロダクトは活きてこないといった事もあるかもしれません。
プライシング:Customer Identity
 Customer Identityの場合は、想定される最大MAUをベースに料金が決まってくる価格設定となっています。3つの価格帯がある様なのですが、最も廉価なDeveloper Editionでは1,000MAUまでの想定であれば無料で使用する事ができる様です。最大5万MAUまでをこのDeveloper Editionの枠内で対応する事ができ、その際の価格は$1,000/moとなっている様です。
 Developer Editionの上には、One App EditionとEnterprise Editionの2つの価格帯が用意されており、顧客の1つのサービスのみをサポートするか、複数をサポートするかによって分かれて来るようです。Enterprise Editionの場合は最大10億MAUまで対応できる様です。(10億とかになるとFacebookとかGoogleでもない限りは対応できそうなレベルですね)
Platform Service
 Oktaはメインのプロダクトラインの他に、以下の様にOkta Platform Serviceというものも提供しています。これらは元々はOkta Identity Cloudの基盤的な役割を果たしている機能でしたが、Oktaはこれらについてもマイクロサービス化し、かつAPIやSDKの形で顧客が自由にカスタマイズできる様に再開発しました。

Platform Serviceは以下の7つで構成されています。
・Directories:ユーザー情報DB
・Integrations:外部サービスとのインテグレーション機能
・Insights:データ分析
・Identity Engine:認証機能
・Workflows:ワークフロー
・Device:デバイス管理
 これらのPlatform Serviceを個別にAPIやSDKの形で顧客に使える様にすることで、顧客が自社のシステムや他社サービスに自由にカスタマイズして組み込んでOktaを使うことができる様です。それにより顧客のあらゆるユースケースに柔軟に対応する事ができます。また、ノーコード/ローコードでのカスタマイズができる様で、ガチガチの社内SEがいない場合でも比較的簡単にカスタマイズして組み込むことができるのが特徴の様です。
 Oktaは柔軟性/オープン性を強みにしていますので、世の中のOkta以外の開発者にも広く受け入れてもらうことが要になってきますが、以下サイトの様な良い感じの開発者向けサイトも公開していたりとその辺りもしっかりと力を入れている様です。

3つの強み

管理者が使いやすい(ライフサイクル管理)

オクタのサービスはすぐに見れば操作可能な簡単な管理画面で、ユーザー・連携アプリ・認証ポリシーを一元管理できます。

自社の中で情報システムを保有し自社内の設備によって運用する「オンプレミス」の統合やネットワークの見直しを必要とせず、ユーザー登録のみで利用可能。

IDの追加・修正・削除などを、クラウド上で一括管理できるので、従業員の退職時の対応や、M&A・グループ企業のITインフラ統合などにも対応できます。

セットアップにかかる時間は約60分と言われており、メンテナンスによるサービス停止や事故もほとんどありません。

また、サブスクリプションになっている料金プランが比較的安価なため、誰でもが気軽に利用できるメリットもあります。

「多要素認証(MFA)」と「ゼロトラスト」による強固なセキュリティ

多要素認証(Multi‐Factor Authentication)とは、ワンタイムパスワードや生体認証などを併用して認証を強化する機能のことです。

スマートフォンを利用する時のさまざまな多要素認証の他、標準で地域認証、端末認証、ネットワーク認証へ対応しています。認証におけるセキュリティポリシーの統一にも利用が可能。

また、オクタは「ゼロトラスト セキュリティ」を提案しています。ゼロトラストとは、多種多様なアクセスに対し、絶対に信用せず(ゼロトラスト)必ず確認をするというセキュリティの仕組みのことです。

このゼロトラストを、面倒な手間を最小限に抑えて提供し、適切なユーザーのみが適切な情報に適切なタイミングでアクセスできる仕組みをオクタは目指しています。

優れた連携力と顧客基盤

オクタには、シングルサインオンを実現する7,000以上のアプリや、IDを一元管理できるクラウドサービスが250以上揃っています(2021年4月時点)。

これは、ほとんどの主要なアプリやサービスに対応出来ていると言っていい数値です。

オクタの顧客は大手企業が多く大口の顧客が増加していることに加え、特定の業種に顧客が偏っていないというのも特性の一つです。つまり、顧客全体が倒れてしまうリスクが小さいということです。

現在、Microsoft、Amazon(AWS)、Googleクラウド、BOX、SAP、Shopifyなどの会社とも業務提携し、顧客を大手企業から中小企業にまで拡大しています。

また、2021年5月には同業他社であり最大のライバル会社であった「Auth 0(オースゼロ)」を買収しています。それにより、手薄であった個人顧客への拡大も視野に入ってきました。

顧客基盤が個人から大手企業、大学や政府機関にも渡り、収益性が高く離脱率の低いものとなっています。

市場動向

OktaがこのID管理の領域でどの様な位置づけにいるのかについては、毎度お馴染み調査会社GartnerのMagic Quadrantで見てみると、昨年のものではありますが、ぶっちぎりの業界リーダーとして評価されている事が分かりますね。ここまで他社を圧倒しているのは中々見た事が無いので凄いなと思います。二番手につけているMicrosoftは要はActive Directoryですので、独立系(IAM以外のプロダクトを持たないという意味合い)のベンダーの中で行くと二位のPing Identityに大差をつけているという事になります。

プロダクトの特徴については一通り重要な部分は説明できたかと思いますので、続いては市場や競合企業についても説明していきたいと思います。
市場
 Oktaはターゲットとする市場については以下の様に定義をしています。Workforce IdentityとCustomer Identityに対しOkta Identity Cloudを提供することができ、対象とするシステムはクラウドでもオンプレでも良いという想定ですね。

これらの市場に対するTAMとしてはOktaは以下の様に合計$55Bnと見積もっています。日本円にして6兆円弱のTAMですね。
2020年1月期の売上が$586Mnでしたので、100倍の拡大余地があると主張している訳です。

ちなみにOktaは2017年のIPO当初はそのTAMを$18Bnと表現していました。IPO当初はWorkforce Identityのみに焦点を当てていたので今想定されている$55Bnよりもかなり小さくなっています。
 Workforce Identity自体も$18Bnから$30Bnとかなりおおっくなっていますが、その増加要因の分解は以下の様になっています。

TAM自体も年率19%成長をしており非常に有望であることが分かりますね。拡大余地が現時点で100倍あり、かつその市場は年率20%弱で成長していると、Oktaの売上高成長率は30%台なのにPSRが30xを超える高値で株価が推移しているのはこの辺りにも理由がある気がします。
 この様に市場が拡大していっているマクロトレンドとしては以下の様に①クラウド化の進展、②デジタルトランスフォーメーションの進展、③ゼロトラストセキュリティの考え方の浸透、などがあります。

前者2つは普通にまぁそうだよねと納得できると思うのですが、この3つ目のゼロトラストセキュリティとは何者でしょうか?
 詳しいことは以下の専門の方が書かれた記事を読んでいただければと思いますが、簡単に纏めるとエッジデバイス(PCやモバイルなど)が保護されている前提でセキュリティを構築するのは止めましょうという考え方になります。

従来のセキュリティでは社内のデバイスはウィルスに感染していない前提で、ファイヤウォールを社内外の境界に引くというのが一般的な防御策でしたが、インターネットが進化したことで、どれだけ気を付けてもウィルスに感染するときは感染するという世の中になってしまいました。ファイヤーウォールの弱点としては、一旦ウィルスがウォールの内部に入ってしまうとそれを防ぐ術が少ないという点になります。
 それは危ないよという事で、デバイスごとにちゃんとセキュリティを管理しましょうねという流れがあり、それに対してOktaは最適なプロダクトの一つであるということになります。
 ちなみに以前に紹介したCrowdStrikeもゼロトラストセキュリティを実現するためのプロダクトの一つとなります。

競合企業

 先に述べた通りGartnerのMagic Quadrantでは圧倒的トップに位置付けられているOktaですが、2番手と3番手の競合、Microsoft(Active Directory)とPing Identityについても簡単に調べてみたいと思います。

Microsoft(Active Directory)
 MicrosoftのActive Directoryといえばこれまでは最も有名なアクセス管理ソフトウェアだったのではないでしょうか。特に日本の大手企業だとActive Directoryを全く使っていない企業はあまり見た事が無いかもしれません。Microsoft自身はFortune 500の90%の企業が使用していると公表しています。また最初にリリースされたのは1999年であり、20年以上の歴史を持つプロダクトになります。
 Windowsへのログインや、会社のサーバーへのアクセス管理などが最も使われるシーンかなと思います。Office365を契約している顧客はベーシックな機能を無料で使うことができ、この辺りの製品バンドル戦略はOktaとは異なる強みになります。
 他方でActive Directoryには弱みもあり、Microsoft製でないクラウドサービスとのインテグレーションはOktaにかなり劣る様です。例えばHRシステムとの統合の観点でいくと具体的にはWorkdayとはスムーズに統合できますが、G SuiteやSAPのSuccessFactorsなどとはサーバーを立てて個別にセットアップが必要になってくるようです。OktaがサポートしているSaaSは6,500個以上に及ぶようですが、Active Directoryでは2,800個ほどと、Oktaがかなりリードしている印象を受けます。
 昨今は必ずしもOffice365を導入しなくても、G Suiteや他のSaaSサービスで業務を完結させる企業も増えて来ていますので、SaaS業界の台頭はOktaにとってはかなりの追い風になりそうです。

Ping Identity
 Ping Identityは2000年に設立された、アクセス管理ソフトウェア(IAM)の会社であり、2019年に上場を果たしています。TickerはPINGです。 Active DirectoryよりもPing Identityの方がOktaに近いプロダクトな気がしますが、Pingの売上はOktaの半分、成長率も半分以下であり、この数字からだけでも明らかにOktaの方が顧客から選ばれる良いプロダクトであると分かるかと思います。
 以下は昨年のPingの上場時のプロダクトに関する説明資料ですが、何というかOktaと似ているなというか、Okta意識しすぎじゃないですか?という印象を抱きます。実績や成長性がOktaにかなり劣っている事を考えると、Oktaに投資判断をする上ではActive Directoryとの競争環境を主に意識すれば良いかなと正直思います。

業績

第4四半期の売上高は前年同期比63%増、サブスクリプション収益は前年同期比64%増
●2022年度の売上高は13億ドル、前年比56%増、サブスクリプション収益は前年比57%増
●残存パフォーマンス義務(RPO)は前年同期比50%増の26.9億ドル、現在の残存パフォーマンス義務(cRPO)は前年同期比60%増の13.5億ドル

Oktaの最高経営責任者(CEO)兼共同創業者であるトッド・マッキノン(Todd McKinnon)は次のように述べています。「アイデンティティ管理は、急速に進化する今日のセキュリティ環境の最前線に位置しています。経営幹部や開発者は、従業員や顧客があらゆるテクノロジーを安全に利用できる自由を提供するために、ますますOktaを利用するようになっています。当社は、ワークフォースソリューションと、OktaとAuth0の顧客向けアイデンティティソリューションにおける強力な実行力と堅調な需要により、トップライン指標で2022年度通期を終了しました。Oktaは、クラウドとハイブリッドIT、デジタルトランスフォーメーション、ゼロトラストセキュリティという3つのメガトレンドに後押しされて拡大し続ける巨大市場に対して、クラウドネイティブのアイデンティティ管理ソリューションプラットフォームを提供しています。」

2022年度第4四半期決算のハイライト

●売上高:総売上高は、前年同期比63%増の3億8,300万ドルでした。サブスクリプション収益は3億6,900万ドルで、前年同期比64%増。Okta単独ベース(Auth0に帰属する5,600万ドルを除く)では、総売上高は39%増加しました。

●残存パフォーマンス義務(RPO):RPOもしくはサブスクリプション収入バックログは、前年同期比50%増の26億9,000万ドルとなりました。今後12ヶ月間に認識される予定の契約サブスクリプション収益である現在のRPOは、2021年度第4四半期と比較して60%増の13億5,000万ドルとなりました。

●計算上の請求額:獲得した繰延収益を差し引いた計算上の請求額は、前年同期比91%増の6億300万ドルでした。計算上の請求額には、2022年度第1四半期末に実施された請求プロセスの改善による影響が含まれています。これらの改善を除くと、計算上の請求額は5億4,000万ドルとなり、前年同期比で 71%増加しました。

●GAAPベースの営業損失:GAAPベースの営業損失は、2021年度第4四半期の5,500万ドル(総売上高の23%)に対し、2億1,400万ドル(総売上高の56%)となりました。

●非GAAPベースの営業利益/損失:非GAAPベースの営業損失は、2021年度第4四半期の非GAAPベースの営業利益800万ドル(総売上高の3%)に対し、2,400万ドル(総売上高の6%)となりました。

●GAAPベースの純損失:GAAPベースの純損失は、2021年度第4四半期の7,600万ドルに対し、2億4,100万ドルでした。1株当たりGAAPベースの純損失は、2021年度第4四半期の1株当たりGAAPベースの純損失は0.58ドルに対し、1.56ドルでした。GAAPベースの純損失および1株当たりGAAPベースの純損失には、2022年度第4四半期のAuth0に帰属する1億1,500万ドルおよび0.74ドルがそれぞれ含まれています。

●非GAAPベースの純利益/損失:2021年度第4四半期の非GAAPベースの純利益が800万ドルであったのに対し、非GAAPベースの純損失は2,900万ドルとなりました。2021年度第4四半期の非GAAPベースの基本的および希薄化後の1株当たり純利益は0.06ドルに対し、非GAAPベースの基本的および希薄化後の1株当たり純損失は0.18ドルでした。

●キャッシュフロー:営業キャッシュフローは、2021年度第4四半期の営業キャッシュフローが3,500万ドル(総売上高の15%)に対し、1,400万ドル(総売上高の4%)となりました。フリーキャッシュフローは、2021年度第4四半期の3,200万ドル(総売上高の14%)に対し、500万ドル(総売上高の1%)でした。

●現金、現金同等物、短期投資は、2022年1月31日時点で25億ドルでした。

2022年度通期決算のハイライト

●売上高:総売上高は、前年同期比56%増の13億ドルでした。サブスクリプション収益は12億5,000万ドルで、前年同期比57%増。Okta単独ベース(Auth0に帰属する1億4,000万ドルを除く)では、総売上高は39%増加しました。

●計算上の請求額:計算上の請求額の合計は、17億2,000万ドルで、前年同期比76%増となりました。計算上の請求額には、2022年度第1四半期末に実施された請求プロセスの改善効果が含まれています。これらの改善を除くと、計算上の請求額は15億7,000万ドルで、前年同期比60%増となります。

●営業利益/損失:GAAPベースの営業損失は、2021年度のGAAPベースの営業損失2億400万ドル(総売上高の24%)であったのに対し、7億6,700万ドル(総売上高の59%)でした。2021年度の非GAAPベースの営業利益800万ドル(総売上高の1%)であったのに対し、非GAAPベースの営業損失は7,400万ドル(総売上高の6%)でした。

●GAAPベースの純損失:2021年度のGAAPベースの純損失2億6,600万ドルに対し、GAAPベースの純損失は8億4,800万ドルでした。1株当たりGAAPベースの純損失は、2021年度の1株当たりGAAPベースの純損失は2.09ドルに対し、5.73ドルでした。GAAPベースの純損失および1株当たりGAAPベースの純損失には、Auth0に帰属する3億8,500万ドルおよび2.60ドルがそれぞれ含まれています。

●非GAAPベースの純利益/損失:非GAAPベースの純損失は、2021年度の非GAAPベースの純利益は1,600万ドルに対し、6,800万ドルでした。非GAAPベースの基本的および希薄化後1株当たり純損失は、2021年度の非GAAPベースの基本的および希薄化後1株当たり純利益がそれぞれ0.13ドルおよび0.11ドルであったのに対し、0.46ドルとなっています。

●キャッシュフロー:営業活動によるキャッシュフローは、2021年度の1億2,800万ドル(総収入の15%)に対し、1億 400万ドル(総収入の8%)でした。フリーキャッシュフローは、2021年度の1億1,100万ドル(総収入の13%)に対し、8,700万ドル(総収入の7%)でした。

以下の「非GAAPベースの財務指標」の項では、非GAAPベースの財務指標に関する説明を行い、GAAPベースの情報と非 GAAPベースの情報との調整を以下の表に示しています。

業績見通し
Oktaの2023年度第1四半期および通期の業績見通しには、Auth0の買収による予想貢献額(購入会計調整額控除後)が含まれています。

2023年度第1四半期について、当社は以下を見込んでいます。
●総売上高は3億8,800万ドルから3億9,000万ドルで、前年同期比で55%の成長率
●非GAAPベースの営業損失が5,100万ドルから5,000万ドル
●加重平均発行済株式数を約1億5,500万株と仮定した場合の非 GAAPベースの1株当たり純損失は0.35 ドルから 0.34 ドル

2023年度通期については、現在、以下を見込んでいます。
●総売上高は17億8,000万ドルから17億9,000万ドルで、前年比37%から38%の成長率
●非GAAPベースの営業損失は1億8,500万ドルから1億8,000万ドル
●加重平均発行済株式数を約1億5,700万株と仮定した場合の非GAAPベースの1株当たり純損失は1.27ドルから1.24ドル

経営者 

創業者はTodd Mckinnon氏(現CEO)とFrederic Kerrest氏(現COO)の2人なのですが、LinkedInの経歴を見る限り、2人は共に2003年~2008年ごろにSalesforce.comで営業や事業開発の仕事をしていた様です。ちょっと詳しくは見ていないのですが、時間軸から言っても同時期にSalesforceで一緒に仕事をしていて意気投合、共にSaaSの未来を感じてSaaS向けのセキュリティプロダクトを作ろうというきっかけだったんじゃないかなと思います。

Todd Mckinnon氏(現CEO)

エンタープライズ ソフトウェア及び、クラウド トランスフォーメーションに対する深い理解に根ざした、明確なテクノロジー ビジョンに基づき、Todd は25 年以上にわたりリーダーシップを発揮しています。Okta を創業する前は、Salesforce.com のエンジニアリング部門を統括し、チームを15 人から 250 人以上に、サービストランザクションを 200 万件から 1 億 5,000 万件以上に拡大させました。PeopleSoft 社でも 8 年にわたるエンジニアリングや管理職の経験があります。

Todd は、ブリガムヤング大学で経営学と情報システム学の学士号、カリフォルニア州立工科大学サンルイスオビスポ校でコンピュータサイエンスの修士号を取得しました。生粋のベイエリアっ子で、Family House のアドバイザーを務め、平等とインクルージョンの推進に取り組んでいます。エクササイズとマウンテンバイクをこよなく愛する夫であり、父親でもあります。

財務状況

資産(総資産$3,115Mn)
・現預金&短期投資:$2,514Mn
・未払金:$86Mn
・設備:$63Mn
・のれん:$48Mn  など…

 という事で、総資産の80%が現金で構成されている財務構成になっているんですね。2020年1月末の時点では現預金はおよそ$1,400Mnでしたので半年で$1,100Mn現預金が増えた事になります。これは6/8に発表された転換社債による$1,000Mnの調達が主な増加要因となります。

先日大型買収を発表したFastlyは5月に資金調達を行いその3か月後に買収発表といった形でした。不必要なほど大型の資金調達を行う場合はM&Aなどのアクションを仕込んでいる可能性もありますので、もうじきOktaはM&A発表してくる可能性もありそうです。この後触れますが、ここまで年1回ペースでM&Aを行っていますので、そろそろなのかな…と。
負債(負債総額:$2,429Mn)
・転換社債:$1,732Mn
・前受金:$391Mn
・前払金:$94Mn  など
 という事で、ほぼ転換社債と前受金で構成される負債になります。転換社債は基本的には株式に転換されますので、お金を返す必要はなく、前受金も返金は発生しない形の負債ですので、財務上は極めて安定していると言えます。
純資産:割愛
利益剰余金はかなりマイナスですが、まぁ特筆することはありません。何も問題ありません。
 という事でOktaのBSはかなり潤沢な資金を備えており、将来の成長投資もかなりガツガツ進めていけるというそんな形になっています。非常に期待できると思います。
6.M&A
 Oktaはこの数年で公表されているだけでM&Aを3件行っており、プロダクトラインや機能の拡張を進めています。それぞれどの様なM&Aを行っているのか簡単に振り返ってみます。
①Stormpath(2017年3月)
 Stormpathはアイデンティティ管理(権限管理)サービスとそれを外部サービスと接続するためのAPIを開発している会社でした。Oktaは今ではPlatform的なサービスも提供していますが、2017年当時はまだまだ外部サービスとの接続機能は強化中の段階だった様で、Stormpathの買収目的としては外部サービス連携の強化だったと思われます。
 スキームの詳細までは調べられていないのですが、どうやら事業譲渡に近い形だった様で、Stormpath社とのライセンス契約や従業員の移籍などを組み合わせ、Stormpath社にOktaの株式を渡しているという形の様です。何か税務的には怪しい匂いもしますが、詳細が気になるところです…

②ScaleFT(2018年7月)
 どんなスキームであれStormpathはM&Aにほぼ近い形であったとの前提で、2件目のM&AはScaleFTという会社の買収でした。
 ScaleFTは先ほども説明したゼロトラスト前提としたアクセス管理の為のプロダクトを開発している会社でした。
 この買収の目的は世の中のゼロトラストの流れに素早く対応するためのOktaの機能強化といった所でしょうか。

③Azuqua(2019年3月)
 3件目の買収はAzuquaというノーコードでアプリケーションの統合とワークフローの自動化を行う事のできるプロダクトを提供している会社です。ノーコードも世の中の流行りの一つですね。
 買収当時の調査だと、Oktaの顧客は平均83個のCloudサービスを社内で活用しており、顧客の9%は200個以上のCloudサービスを使っているという状況の様です。アメリカだとクラウドの浸透度が桁違いですね。
 その様にクラウドアプリが増えてくると、スムーズにサービスを連携したり、アクセス/権限管理を自動で設定したりとったことが非常に手間がかかる様になります。当然APIは各サービスが解放している事が多いので、コードを書いてガリガリ開発すれば良いのですが、80個とかましてや200個とかサービスを使っていると全てに対して社内エンジニアで開発を行うのは普通は無理ですよね。なのでこういったノーコードアプリの必要性が増してくる訳ですね。
 買収目的としては改めて言う必要もないですが、ノーコード開発対応ですね。

株価推移

オクタの株価チャートはこのようになっています。
リモートワーク関連銘柄として、一時は非常に力強く上昇しましたが、次第に停滞気味となり、2021年11月頃からは下落に転じています。(2022年3月21日時点)

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