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【企業分析】VISA

V (NYSE)
時価総額: 3,730億ドル
株価: 180ドル
売上高: 240億ドル
営業利益: 160億ドル
(2021年)

事業内容: クレジットカード事業
設立年:1958年、2008年上場
本社: 米国🇺🇸カリフォルニア州フレズノ
代表者: Alfred F. Kelly Jr. (CEO)
従業員数: 21,500人

概要

VISA本社

VISAは、世界最大の国際的な決済ネットワークを保有・提供する企業。

クレジットカードのイメージが強いがVisa自体はあくまで決済ネットワークを提供する会社であり、クレジットカードの発行などは行っていない。Visaの決済ネットワークを利用して決済を行うカードをVisaブランドという。

Visaが利用されている地域は世界200か国以上であり、これはMastercardと並んで世界最大規模の決済ネットワークとなっている。

プロダクト・ビジネスモデル

クレジットカード業界は非常に寡占化が進んでいるので、業界情報とVisaの情報がかなり似通っている節もあるため、ここでは、業界情報とVisaの収益構造を併せて解説していく。

クレジットカード業界のビジネスモデルは大別すると2つ。クレジットカードの決済ネットワークを提供する会社(VisaやMastercard)と、カード発行業務も併せて行う会社(American express)だ。

ネットワークのみ提供

収益はあくまでカードの利用金額や回数に伴う決済ネットワーク使用代金。

収益源はそこのみに限定されるものの、カード利用代金の踏み倒しなどというようなリスクを負わないし、カード発行の手間もかからない。

カード発行とネットワーク提供

カードを発行するという業務を合わせて行う。大きな違いはその1点で、金利収入やカード決済に伴う手数料などを追加で得ることができる。

しかしその分のリスクもあり、クレジットカード利用の踏み倒しなどのリスクや、発行するための手間や費用が掛かってくる。また、カードを発行するために広告宣伝なども行う必要がある。

基本的なビジネスモデルは上記の2つであって、業界ではVisaやMastercardはネットワーク提供のみを行い、American expressはカード発行も併せて行っている企業である。

クレジットカード業界のお金の流れ

クレジットカード業界のお金の流れは以下のとおり。

①:【加盟店▲1万円:ユーザー+1万円】
消費者が1万円の買い物をすると、加盟店(いわゆる小売店や飲食店などユーザーがカードを使う場所)は、お金をその場では受け取らずに商品・サービスを提供する。

②:【加盟店+9500円:管理会社+500円:ユーザー▲1万円】
加盟店から管理会社(クレジットカードの使用金額などを一括管理している会社)に対して『1万円の買い物があった!』と連絡をする。そこで管理会社は1万円から加盟店手数料(500円と仮定)を引いた金額を加盟店に支払い、ユーザーからは1万円を徴収する。

③:【管理会社▲400円:カード発行会社+400円 】
その後加盟店は500円の利益の中から、カードを発行した会社(銀行が多い。三井住友ビザカードなら三井住友銀行のこと)に手数料(400円と仮定)を支払う。

④:【カード発行会社▲250円:Visaなど+250円】
最後にカード発行会社はVisaなどの決済ネットワーク提供会社に決済ネットワーク使用代金を支払う。

どんどん下流(ユーザー側)から上流(Visa)側にお金が流れていくイメージだ。

クレジットカード業界では、カードを発行する銀行などの組織を「イシュアー」、加盟店などを管理する会社を「アクワイアラー」と呼ぶ。

この2つの名前で解説されるケースも多いので注意してみてみよう。

VISAの収益源

おもにVisaの収益源は3種類で、それぞれの売り上げ比率は大まかに以下のとおり。

【VISAの収益源(比率)】

サービス手数料:45%
データ処理手数料:35%
クロスボーダー手数料:20%

コロナによる旅行需要減少でクロスボーダー手数料が大きく落ち込んだ。

サービス手数料
自社カードを使った金額に依存して変化する手数料。

平均的に1000円の使用額に対し1円程度と言われている。

データ処理手数料
自社ネットワークの利用回数に応じて発生する手数料。

1回の取引当たりで1円程度が発生しているケースが多い。

クロスボーダー手数料
カードを使った国と加盟する国が異なる場合に発生する手数料で決済処理と為替処理にかかる費用のこと。

3種類の収益の中でもっとも利益率が高いといわれているため、コロナで海外旅行が出来ない事態は大きな収益下落へとつながった。

VISAの競争優位

①参入障壁が非常に高く、新規参入がほぼ不可能な業界でシェア1位
②全世界で通用する知名度とブランド
③これまで世界規模で決済ネットワークを運営させてきた信頼と実績
④今後のECなどの電子決済手段の普及
⑤発展途上国での決済インフラの発展

この中で注目したいのが、③のこれまでの信頼と実績です。やはりお金を直接扱う業界である以上、信頼性は非常に大きなファクターになってきています。

現在、世界中で消費トレンドになっているのが【BNPL】という消費スタイルです。これはBuy Now Pay Laterの頭文字をとったもので、後払い決済のことです。

BNPLが今後進展していくと、現在主要トレンドのクレジットカード決済が廃れていってしまうという懸念もあるのですが、実際にVisaの存在価値が大きく損なわれるか?と考えるとそうとも言えません。

決済における安全性などを加味すると、BNPLなどに決済シェアを奪われることはあるでしょうが、大型取引などは引き続き安心を求めての利用が継続していきそうです。

また、BNPLはそもそもVisaなどのカード会社の審査が厳しいことが流行の背景にあります。そのため、BNPLも一時的なトレンドで終わるのでは?という見方もできるわけです。

なぜなら、BNPLの滞納が大きくなってくるとそのビジネスが成り立たなくなるからですね。

VISAの課題

①現状の決済ネットワークを使用しない直接決済サービスの普及が課題。たとえば小売店の〇〇Payなどの普及で中抜きをさせない決済サービスが大きく普及するとVisaとしては逆風となる

②電子決済の普及やビットコインなどの代替決済手段が技術革新によって広まっている。代替されるリスクに注意。これは上記の〇〇Payと似ているが、全体的なクレジットカード決済離れにつながるので、改めて記載。

③消費額・海外旅行需要に収益が連動しやすいので、コロナの長期化は大きなダメージになるというリスクも持つ。コロナ状況下で株価下落要因の1つとされているのがクロスボーダー取引の減少。この取引は手数料率が高いため、収益性が高いのだが、コロナに伴う海外旅行の減少を受け大きく収益性が悪化している。

市場動向

世界市場シェア 

2021年のクレジットカード・デビット業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はユニオンペイ、2位はビザ、3位はマスターカードとなります。

クレジットカード会社の市場シェアと業界ランキング(2021年) 

取扱高の世界1位は中国のユニオンペイでした。日本国内でも銀聯(Union Pay)マークがついた加盟店をよく見かけるようになりました。ユニオンペイはクレジットカードよりもデビットカードに近いカードとなります。

2位はビザ、3位はマスターカードです。取扱高では上位3社のポジションは不動です。

5位にペイパルが入っていますが、ペイパル決済のクレジットカードに紐づいております。国際的に使える電子財布(デジタルワレット、銀行口座ではないが、決済用の資金の移動ができる口座)大手という位置づけです。

市場規模

クレジットカードとデビットカードの2020年の市場規模を、民間最終消費支出額である62兆ドルとしている。民間最終消費支出額は世界銀行の数値を参照。

中国、英国、フランス、ドイツはデビットカードの比率が高く、日本や韓国ではクレジットカードの比率が高いことが特徴です。

現金や銀行間決済によりもより効率的な決済を実現できることでクレジットカードやデビットカードの業界は成長を続けてきました。一方で、クレジットカードの決済や与信システムを介さずに決済を行える暗号資産(ブロックチェーン)、P2Pアプリ間送金、BNPLといった分野も急速に伸びており、今後のクレジットカード会社各社の戦略に注目が集まります。

デビットカード・クレジットカード業界の仕組み

クレジットカード会社の業務内容には大きく分けて3つあります。カードをカード会員に発行するイシュアーという業務、カード決済の導入をしているお店(加盟店)を増やすアクワイアラーという業務、各カードのブランドである決済ブランド(ビザ、マスター等)のライセンスを付与する業務です。日本の場合は、ほぼイシュアーとアクワイアラーが同一のカード会社が行いますが、米国では加盟店開拓の専門業者もいます。

VISA,マスターカード、JCBなど決済ブランドを持つクレジットカード会社はライセンスフィーを決済の度に得られます。他のカード会社(銀行系の○○カード等)にとっては、加盟店からの決済金額に応じた決済手数料と利息収入(キャッシング、リボルビング)が収益源となっています。

国際ブランドカードとその他決済手段の違い

クレジットカードとは、カードの保有者が商品を購入する際に後払いを可能にする(信用を供与する)カードのことです。日本ではDCカード、UCカード、VIEWカードといった様々なクレジットカードがありますが、ビザやマスターカードとの違いは、世界で使えるかどうかです。JCBも国内のカードブランドですが、世界中に加盟店を持つため、国際ブランドのクレジットカードと言えます。デビットカードは、後払いでなく、その場で銀行口座より決済代金の支払いが行われるカードです。

QRコード決済のPayPayやアリペイ、ICカードのスイカやペイパル(PayPal)も決済手段と言えます。特徴としては、あらかじめチャージされている金額の範囲で決済であったり、クレジットカードと連携に基づく信用供与での決済であったりするので、通常はデジタルウォレット(デジタル財布)やデジタルペイメント(デジタル決済)という形で、クレジットカードやデビットカードとは区別されています。

業績

経営者 

アルフレッド・F・ケリー・ジュニアは、2016年12月に最高経営責任者としてVisaに入社し、2019年4月に取締役会会長に選出されました。

Alfred F. Kelly会長兼CEO

ケリー氏は、キャリアの大半をアメリカン・エキスプレスで過ごし、1987年から2010年まで勤務していました。その23年の間に、2007年7月から2010年4月まで社長を務めるなど、複数の上級職を歴任しました。

Visa入社直前には、アルファベットの支援を受けニューヨークを拠点とするテクノロジーおよびデジタルメディア企業Intersectionの社長兼最高経営責任者を務めていました。

ケリー氏は2015年にTowerBrook Capital Partners, L.P.の経営アドバイザーを務め、同時にローマ法王フランシスコのニューヨーク訪問の議長を務めました。2011年4月から2014年8月まで、ケリー氏は、スーパーボウルXLVIIIの資金調達と開催のために設立された「2014 NY/NJ Super Bowl Host Company」の社長兼最高経営責任者を務めていました。

アメリカン・エキスプレス入社以前は、1985年から1987年までホワイトハウスの情報システム部長を務めていました。また、1981年から1985年までペプシコ社で情報システムおよび財務計画のさまざまな役職を歴任しました。

現在、ケリー氏は、VisaとCatalystの取締役、ニューヨーク大司教区のいくつかの団体の取締役、バチカンとの包括的資本主義のための協議会の後見人を務めています。

Payments Leadership Councilの議長、Mother Cabrini Health Foundationの理事会議長も務めています。また、ニューヨーク・プレスビテリアン病院とボストンカレッジの評議員も務めています。2015年、ケリー氏はローマ教皇フランシスコにより、聖グレゴリウス大公騎士団に任命されました。ケリー氏は、アイオナカレッジでコンピュータと情報科学の学士号と経営学修士号を取得しています。

財務状況

BALANCE SHEETS

株価推移

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