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【企業分析】HSBCホールディングス

HSBC (NYSE)
時価総額: 1,030億ドル
株価: 515ドル
売上高: 500億ドル
税引前利益: 189億ドル
(2021年)

事業内容: 市中銀行、投資銀行、プライベート・エクイティ
設立年: 1991年(持株法人設立)、1865年(香港上海銀行)
本社: イギリス🇬🇧 ロンドン カナリー・ワーフ
代表者: ダグラス・フリント(会長)、スチュアート・ガリバー(CEO)トーマス・サザーランド(創業者)
従業員数: 30万人

概要

HSBCは「Hong Kong and Shanghai Banking Corporation」の略であり、イギリスに本店を置く世界最大級の銀行です。英名に「HongKong(香港)」とあるのは、HSBCは香港で創設されたあと、上海で営業をスタートし、その後は本店をロンドンに移したためです。

HSBCは世界最大級の金融機関であり、2008年にはアメリカの経済誌が、世界の有力企業番付で1位と評しています。世界的な有力銀行であるバンク・オブ・アメリカはこの年3位であり、同様に世界のメガバンクと名高いシティグループは24位でした。HSBCは香港で創設されましたが、香港がイギリスから中国に返還されたことをきっかけに、本店をイギリスへと移します。これは、中国共産党の統治下において懸念される、政治的なリスクを考慮したことが背景にありました。

この当時から、HSBCは海外投資に積極的な姿勢を見せています。共産国家の影響を受けることなく、海外投資を積極的かつ、継続的に行なうとした、当時のHSBCの理念は現在も一貫して守られています。

これまでのHSBCの収益源を平均すると、イギリス本土から得た利益は全体の約20%であり、香港や中国に投資した利益はそれをはるかに上回っています。

このように海外へ積極的に進出しているHSBCは、「The world's local bank」を標榜しています。日本語では「世界の現地銀行」と言います。つまり、全世界に数多くの支店を持ち、現地に暮らす人々の金融の利便性に貢献しているのです。

支店はヨーロッパ各国をはじめとする、アメリカやアジア、アフリカ、中東など世界中に及びます。2006年時点で、支店の数は世界中で1万店を超えています。保有する金融財産は2兆米ドルを超えています。

HSBC世界本部(ロンドンHSBCタワー)

プロダクト・ビジネスモデル

HSBCのイギリス部門が収益源に占める比率は20%であり、最大の収益源は22%の香港部門である。

ウェルス・アンド・パーソナル・バンキング(WPB)、コマーシャル・バンキング(CMB)、グローバル・バンキング・アンド・マーケッツ(GBM)の3つの事業を通じて製品とサービスを管理する。ヨーロッパ、アジア、中東および北アフリカ、北アメリカ、ラテンアメリカを含むさまざまな地理的地域で運用される。

WPB事業は、リテール・バンキング、ウェルス・マネジメント、アセット・マネジメント、保険を提供する。中小企業、中堅企業、企業などの商業顧客のニーズに応えるCMB製品およびサービスには、信用と貸付、国際貿易と売掛金のファイナンス、財務管理と流動性ソリューション、商業保険と投資が含まれる。GBMは、世界中の政府、企業、機関投資家および個人投資家をサポートする。

PB事業

ウェルス&パーソナルバンキング
お客さまが日々の財務を管理し、富を管理、保護、拡大できるよう支援します。国際的なネットワークと幅広い専門知識により、世界中の個人、家族、企業オーナー、投資家、起業家をサポートします。

HSBCのネットワーク全体から専門知識を結集し、お客様一人一人に対応するチームを作ります。お客様のニーズに応じて、支店、セルフサービス端末、電話サービスセンター、インターネットやモバイルバンキングサービスなど、様々な方法でサポートさせていただきます。また、富裕層や超富裕層のお客様の将来設計をお手伝いするなど、お客様のご要望に応じたサポートを行う専門のリレーションシップ・マネージャーもいます。

国際的なネットワークと幅広いサービスは、お客様の自国でのサポートだけでなく、海外でのビジネスチャンスにつなげる。

CMB事業

国内市場に特化した小企業から国際的に事業を展開する大企業まで、HSBCのグローバルなリーチと専門知識は、お客様の繁栄と成長を支援します。

HSBCコマーシャル・バンキングは53の国と地域で事業を展開し、お客様にとって最も重要な先進国市場と発展途上国市場をカバーしています。リレーションシップ・マネージャーとデジタル機能を通じて、起業家とビジネスチャンスを結びつけています。

お客様の日々の金融ニーズに応えること、クロスボーダー取引やトレジャリーサービスを提供すること、お客様の持続可能性の向上を支援すること、そしてHSBCグループの他の部門が提供する商品やサービスへのアクセスを提供することにより、これを実現しています。

HSBCグループの中核として、運転資金、タームローン、買収資金やプロジェクトファイナンスでお客様をサポートする財務力、効率的な財務管理を支援するデジタルツール、株式・債券市場からの資金調達を支援する専門知識を持っています。

GMB事業

HSBCグローバル・バンキング&マーケッツは、企業、政府、金融機関に金融サービスや商品を提供しています。

お客様をサポートするためにあらゆる銀行サービスを提供し、お客様に効果的にサービスを提供するためにデジタル機能への投資を続けています。

仕事の中心は、質の高い人間関係です。世界中で変化のスピードが増す中、私たちはクライアントが長期にわたって競争力を維持し、発展途上国と先進国の両方の市場で商機を最大限に生かせるよう支援します。

そのために、業界最高水準の行動規範とコンプライアンスを確保することをお約束します。

市場動向

英国のリテールバンキング業界は、強力な力に押され、変革の必要性を感じています。顧客の期待、規制要件、新たな競合相手、テクノロジー、人口動態、経済の変化など、進化する力に対応して、状況は大きく変化するでしょう。銀行は、衝撃と変化から何を受け入れたいかを決める必要があります。銀行にとって、現状維持という選択肢はありません。銀行は機敏でオープンであるために、さまざまなリテールバンキングの動向を探る必要があります。銀行は、2020年に勝ち残るために、課題に対処し、改革を行う必要があります。変化するリテールバンキングの状況に対応し、市場、顧客、リスク規制、業務の変化を統合する戦略を策定し、現実の世界で大規模な変革を実施しなければならないのです。

金融サービス部門は、英国経済に1320億GBPをもたらし、経済総生産の6.9%を占めた。この部門はロンドンで最も大きく、同部門の生産高の半分がここで生み出されています。英国の金融サービス部門は、国の経済生産高に占める割合で、2019年にOECDで第9位となった。

リテールバンキングは、消費者金融とも呼ばれ、銀行が個人消費者にサービスを提供することである。提供されるサービスには、普通預金や当座預金、住宅ローン、個人ローン、デビットカード/クレジットカードなどがある。英国のリテール・バンキング部門は、様々な強力な力によって変貌を遂げつつある。経済環境は引き続き不透明であり、規制要件は進化しています。顧客は、優れた顧客サービスとともに、より個別化したサービスを求めており、同時に、技術革新は従来のビジネスモデルや提供モデルに挑戦し、さらに困難な競争相手を迎え入れつつあります。

このような背景から、銀行は不動産について再考する必要があります。支店網は、そのような動きがもたらす敏感さにもかかわらず、さらに合理化し、再利用する必要があるでしょう。バックオフィス機能は、おそらくこれまで以上に、銀行業務を成功させるために不可欠なものと見なされるようになる必要があります。一方、本社機能は、コストや規制遵守の観点から見直す必要があり、移転の対象となる可能性もあります。さらに、リテール銀行の運命はイノベーションとテクノロジーの実現に左右されるようになるため、従来とは異なるテクノロジーやクリエイティブな人材にアクセスし、受け入れる必要があり、そのためには場所と労働環境の両面で変化を余儀なくされるでしょう。

英国の銀行における総資産ランキング

本現在、少数の大手企業が市場を支配しています。しかし、技術の進歩や製品の革新に伴い、中堅・中小企業は新規契約の獲得や新規市場の開拓により、市場での存在感を高めています。

英国の銀行におけるマーケットシェア

香港

2021年、香港上海銀行の資産価値はほぼ10兆香港ドル。資産価値を基準にすると、同銀行はこの地域でトップの金融機関であった。香港上海銀行はこの年、720億米ドルの純利益を上げ、世界で最も収益性の高い認可銀行となった。

香港では物流に次いで金融業が盛んであり、金融業の中でも銀行業が最も大きな割合を占めている。香港には190以上の銀行があり、10万人以上の従業員が働いている。この数には外資系銀行の駐在員事務所は含まれていない。

銀行だけでなく、数多くの金融サブセクターが香港の金融業界には不可欠である。香港の保険会社は香港のGDPの3.9%を占め、9万人以上を雇用している。香港の株式市場は世界最大級であるだけでなく、新規株式公開の件数も世界第3位である。

香港の銀行における総資産ランキング

業績

収益、営業利益、純利益

収益は減少傾向が続いています。日本をはじめ、採算性が低いとした国々から相次いで撤退したからです。

HSBCは2010年代前半にかけて、犯罪行為で得たお金を、架空口座を使って何度も送金を繰り返すなどの手段を通じて、あたかも正当に得たお金のように見せかけるマネーロンダリング(資金洗浄)に対して十分な防止策を取らなかったことや、富裕層の脱税行為を手伝ったという疑惑などが噴出し、各国の政府当局から罰金を科されたり、あるいは和解金を支払ったりしました。その対応策として、業務縮小を余儀なくされたという事情もあります。

営業利益率は、上海株の暴落に端を発するチャイナ・ショックが起こった2016年に大きく低下していますが、その後は持ち直しており、20%~30%前半をキープしています。他行と比較しても遜色ありません。

HSBCの部門別収益(2018年)

HSBCは4つの部門に分かれています。リテール・バンキング&ウェルス・マネジメント事業は、個人を対象とする銀行業務や資産管理サービスを指しており、約4割と最大の収益源となっています。

商業銀行事業は全体の3割弱を占めており、世界50をこえる国と地域で150万もの企業を対象とする銀行業務を行っています。

グローバル・バンキング&マーケッツは、いうなれば投資銀行事業です。投資銀行は、ざっくばらんに言ってしまえば、企業によるM&A(合併・買収)や、企業や政府系機関等が資金調達を行う際に、専門家の立場からアドバイス・お手伝いをするなどといった役割を果たしています。どちらかというと大企業を対象としている業務ですね。

グローバル・プライベート・バンキング事業は、富裕層を対象とする金融サービスになります。

HSBCの地域別収益(2018年)

アジアとヨーロッパで全体の8割弱を占めています。うち、イギリスの収益は約19%、香港の収益は約31%となっており、イギリスに本社がありながら、香港への依存度が強くなっています。2016年には一時香港への本社移転も検討されましたが、見送りになっています。

EPSBPSROE

業績の停滞を反映して、EPS、BPSともに横ばいで推移しています。

キャッシュフロー(CF)

変動の激しいキャッシュフローですね。銀行業の場合は参考程度にとらえるのがよいと思います。

銀行業は頻繁にお金をやり取りするため、そのやり取りがキャッシュフローに反映されているからです。具体的には、営業CFには、獲得した利ざやだけでなく、貸出金や預金、預け金といった元本の増減まで反映されてしまっています。

営業CFがマイナスということは、「現金が流出超過である」ことを指しますが、銀行業においては、それをもってして危険とは一概にみなすことはできませんので、注意が必要です。

HSBCの配当

リーマン・ショック翌年の2009年に大きく減配しており、その水準をまだ回復できていません。銀行株は、HSBCに限らず、バンク・オブ・アメリカやシティグループなどいまだにリーマン・ショック前の配当金水準を回復できていないものが多くあります。

ここ3年、配当金は据え置きとなっていますが、2009年以降、減配はありません。2016年は配当性向700%超えとなっていますが、配当金水準は維持されています。

しかし、2020年はコロナウイルスの感染拡大による、イギリスの中央銀行からの要請を受け、配当金支払いを停止。年内は配当金を支払わないことも決まりました。2021年に入り、配当金支払いは再開されましたが、コロナショック前の水準は回復できていません。

沿革、経営者 

HSBCの歴史

HSBCは、「国際的なニーズに対応する地方銀行」という発想から生まれました。
設立メンバーである香港上海銀行(The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited)から名付けられたHSBCは、ヨーロッパ、インド、中国間で拡大する取引の資金調達を支援するために1865年に設立されました。

当行設立の発案者はスコットランド国籍のトーマス・サザーランドです。彼は当時、ペニンシュラ・オリエンタル汽船会社に在籍していました。彼は香港と中国沿岸に地方金融機関に対する大きな需要があることに気付きました。彼の尽力により、1865年3月に香港に銀行が設立され、1ヶ月後には上海支店が設立されました。

設立から間もなく、顧客へのサービス拡大のために支店が次々に開設されました。貿易金融は、当初からこの銀行の地方および国際業務の強みであり、歴史を通じて得意分野として認識されています。19世紀の終わりまでに、当行はアジア最大の金融機関に成長しました。

20世紀に入り、国際紛争や1930年代の大恐慌など、さまざまな困難や変化に直面しました。20世紀の終わりには、成長、買収、多様化によって、HSBCは大手地方銀行から世界有数の金融グループへと変貌を遂げました。

HSBCは、1991年に持株会社のHSBCホールディングスplcを設立し、1992年にはミッドランド銀行を完全に傘下に収めました。その後、HSBCは本拠地をロンドンに移しました。

1998年11月、HSBCは統合ブランドの導入を発表し、世界中の顧客、株主、従業員によるHSBCの認識を強化するために、すべての事業でHSBCと六角形のシンボルを使用することになりました。

HSBCの社風は、その経験によって作り上げられたものです。HSBCは、革命、経済危機、新たなテクノロジーなど、あらゆる変化を経験し、その変化に適合して生き抜いてきました。だからこそ、21世紀の課題も克服できるはずです。

経営者

ノエル・ポール・クイン(Noel Paul Quinn、1962年1月13日生まれ)は、ジョン・フリントの後任として2020年3月からHSBCの最高経営責任者(CEO)を務める。

クインCEO

2015年12月からHSBCのグローバル・コマーシャル・バンキング部門のチーフ・エグゼクティブを務めていました。2016年9月にグループ・マネージング・ディレクターに就任。2011年から2015年にかけてクインは香港を拠点にアジア太平洋のコマーシャル・バンキングの地域ヘッドでした。

クインは1987年にミッドランドバンクの子会社であるフォワードトラストグループに入社。ミッドランドバンクは1992年にHSBCによって買収された。HSBCによるスワン・ナショナル・モーター・ファイナンスとエバーショルト・リーシング・リミテッドの買収を主導し、それぞれの事業のジェネラル・マネージャーに就任した。

その後、HSBCの専門金融・株式金融部門長、HSBC保険サービス北米の戦略・開発グループディレクター、コマーシャルファイナンス欧州部門長、コマーシャルバンキング英国部門長(2008-2011年)を歴任した。

株価推移

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