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【読書メモ】井上真偽『ベーシックインカム』

井上真偽による短編集「ベーシックインカム」は、AI、遺伝子操作、VR、エンハンスメントなどの近未来技術を扱ったミステリー作品であり、読者に心地よい「裏切られ感」を提供してくれる一冊です。

本作品の最大の魅力は、科学技術の急速な進歩とそれに伴う倫理的な問題を、巧みな叙述トリックを交えながら描いている点にあります。各話は予想外の結末へと導かれ、読者は絶えず驚かされます。私は3話目あたりから、読者として「どのように裏切られるのか」と疑いながら読み進めるも、その予測を超える展開に、作家の高い技術力を感じました。

井上真偽は、現代の技術進歩がもたらす様々な可能性と問題点や扱う側の倫理観を巧みに物語に織り交ぜ、読者に深い印象を残します。それはただのサスペンスやミステリではなく、科学技術の進展が私たちの社会や個人にどのような影響を与えるかを問いかける作品です。

この短編集は、技術に対する深い洞察と、予測不可能なストーリーテリングが融合した、独特の世界観を持つ一冊です。井上真偽の「ベーシックインカム」は、ミステリー好きはもちろん、現代技術に興味を持つすべての読者におすすめしたい作品です。

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