カブトナリ

カブトナリ

最近の記事

【読書メモ】十戒

皆さんこんにちは。今日は夕木春央の『十戒』を紹介します。 あるきっかけで個人所有の小さな無人島に集まった9人のうち、1人が殺されます。犯人からのメッセージにより、残された人々に課された戒律は「決して殺人犯を見つけてはいけない」でした。 物語の主人公は、美大浪人生の里英です。彼女は父と共に、伯父が遺した無人島へ渡ります。この無人島でリゾート開発の話が持ち上がり、その関係者とともに視察を兼ねた息抜きに参加したのでした。 しかし、すぐに里英は事件に巻き込まれていきます。通常、こ

    • 【読書メモ】サイゴンから来た妻と娘

      皆さんこんにちは。「サイゴン」とは、現在のホーチミン市であり、かつての南ベトナムの首都です。サンケイ新聞のサイゴン支局長だった著者は、その地で家庭を持ちます。彼の妻はベトナム出身で、連れ子がいました。 本書は、ベトナムの庶民の生活をリアルに描き出しています。昭和50年頃の話ではありますが、現代日本からは想像もできないような混沌としたエネルギッシュな街の風景が描かれます。特に、ベトナム人女性が「世界で最も気が強い」と評される点に触れ、その強さが如何にして表れるかのエピソードが

      • 【読書メモ】少年と犬

        皆さん、こんにちは。今日は私の好きな作家の一人、馳星周の『少年と犬』について紹介したいと思います。これは彼の有名な不夜城シリーズのようなノワールとは異なり、一匹の犬とその犬が出会う人々、そして彼らの周りで展開するさまざまなストーリーを描いた作品です。 物語は東日本大震災後の東北のある町から始まります。主人公の男性は、コンビニの駐車場で賢そうだが少し汚れた犬と出会います。「男と犬」という章では、この男性が家族を助けるために渋々不正な行為に手を染めますが、犬との奇妙な縁が幸運を

        • 【書評】リーチ先生

          皆さんこんにちは。『リーチ先生』は、バーナード・リーチというイギリス出身の陶芸家と、日本人青年沖亀乃介の交流を中心に展開します。この物語は、一人の外国人芸術家が日本文化に魅了されたという話ではなく、異文化間の深い理解と絆の形成を描いたものです。 横浜の洋食店で給仕として働いていた亀乃介少年。彼は偶然にも高村光太郎と出会い、その縁で光太郎の父である彫刻家・高村光雲の書生となります。この新たな生活が彼の運命を大きく変えることになります。光雲のもとで働いている時にリーチが訪れ、亀

        【読書メモ】十戒

          DANKETSU(団結集会in金沢)

          フードアナリストでありインフルエンサーのあすかりんさんが主催するチャリティーイベントに参加しました。能登の復興のために集まってくれた有名シェフが腕を振るいます。ちなみにみなさん、日中は能登の被災地での炊き出しを行い、その後で金沢でイベントの開催です。 立食形式というと、動線が悪かったり料理の取り合いになったりで、空腹のまま帰ることもあったのですが、この会に関しては大満足、お腹いっぱいです。あすかりんさんが自らマイクを取り、仕上がった料理をアナウンスし、希望者は順番に取りに行き

          DANKETSU(団結集会in金沢)

          【読書メモ】僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう

          皆さんこんにちは。永田和宏氏の対談集「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」は、各界のレジェンドたちの軌跡を追う一冊です。山中伸弥氏(iPS細胞研究所所長)、羽生善治氏(棋士)、是枝裕和氏(映画監督)、山極壽一氏(京都大学総長)という、今やその分野の象徴とも言える人物たちとの深い対話を通じて、彼らが経験した失敗や挫折、そしてそれらを乗り越えた過程を綴っています。 この対談集は、ただ単に成功者の光り輝くエピソードを集めたわけではなく、彼らが「何者でもなかった頃」に直面した挑

          【読書メモ】僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう

          【読書メモ】ウソはバレる

          皆さんこんにちは。イタマール・サイモンソンとエマニュエル・ローゼンによる著作「ウソはバレる」は、現代向きにソーシャルメディアマーケティングの指針を示しています。インターネットの普及による情報の透明性が高まり、消費者の製品やサービスに対する見方が根本的に変わった現代社会において、企業がいかにして消費者と向き合うべきかを説いています。 従来のマーケティング理論では、ブランドの構築や顧客との絆が成功の鍵とされてきました。しかし、この本ではそうした考え方が現代社会では通用しなくな

          【読書メモ】ウソはバレる

          【読書メモ】絶滅生物の折り紙

          皆さんこんにちは。図書館の棚でひっそりとその存在を主張していた『絶滅生物の折り紙』は、一見するとただの趣味の手引き書のように見えます。しかしページをめくるごとに、この本がただものではないことがわかります。マンモスやドードー鳥、モアなど、この世から姿を消してしまった生物たちが、折り紙という形で蘇ります。もしかするとこの本は、絶滅した生物たちへのオマージュであり、生物多様性の喪失に対する静かながらも強い警鐘を鳴らしているのかもしれません。 折り紙は日本の伝統的な芸術の一つであり

          【読書メモ】絶滅生物の折り紙

          【読書メモ】スラムダンク勝利学

          皆さんこんにちは。辻秀一氏の「スラムダンク勝利学」は、スポーツ心理学と自己成長について学べる一冊です。スポーツドクターとしての深い見識を背景に、自己実現のための具体的な手法を示しています。本書は、マンガ「スラムダンク」の魅力的なエピソードとセリフを用いて、目標達成のための心理学的概念を解き明かします。 意識、下意識、セルフイメージの探求 「スラムダンク勝利学」は、主人公、桜木花道が序盤で学んだレイアップシュート「置いてくる」を例に、意識、下意識、そしてセルフイメージの三つ

          【読書メモ】スラムダンク勝利学

          【読書メモ】Harvard Business Review 2024年4月号

          皆さんこんにちは。DEIを知っていますか? DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)は、多様性を認め、公平性を保ち、包括的な環境を実現することを目指す概念です。このテーマについて考える機会を得たのは、ハーバード・ビジネス・レビューの最新号を通してです。 特集記事のひとつは世界最大のヘルスケアカンパニーであるジョンソンアンドジョンソンのDEIへの積極的な取り組みに焦点を当てています。同社の歴史は、設立時から女性が社員の過半数を占めていたことが象徴するように、多様

          【読書メモ】Harvard Business Review 2024年4月号

          【読書メモ】オールド・ボーイ

          皆さんこんにちは。最近読んだ漫画「オールド・ボーイ」は、一言で言えば、読者を深い思索の旅に誘う異色のハードボイルド作品です。この漫画は、10年間もの間、理由も知らされずに謎の施設に監禁されていた主人公が、ある日突然自由を得て、自分をこの状況に陥れた犯人を追い求めるというストーリーを展開します。 深まる謎、複雑化する人間関係 物語は主人公の解放から始まり、彼が自身を監禁した人物の正体とその動機を探る過程を追います。しかし、探求は単純な復讐劇に留まらず、主人公だけでなく周囲の人

          【読書メモ】オールド・ボーイ

          【読書メモ】サブスクリプション

          皆さんこんにちは。サブスクリプションモデルは、昨今のビジネストレンドの中で最も注目を集めている概念の一つです。このモデルがどのようにして現代の市場に浸透し、多くの企業にとって不可欠な戦略になったのかを深く掘り下げたのが、ティエン・ツォの「サブスクリプション」です。本書では、サブスクリプションビジネスモデルの基本から、その成功要因、さらにはこのモデルを採用することの利点と課題までを詳細に解説しています。 サブスクリプションモデルとは 「サブスクリプション」という言葉は現代社会

          【読書メモ】サブスクリプション

          【読書メモ】イーグル

          皆さんこんにちは。先週はスーパーチューズデー、アメリカの政治が最も熱くなる時期でした。この機会に、政治の舞台を背景にした熱いドラマを描いたかわぐちかいじの名作「イーグル」についてご紹介します。1998年から2001年にかけて連載されたこの作品は、アメリカ大統領選挙の裏側をリアルに描き出し、読者を政治の世界の奥深くへと誘います。 物語の中心: 青年記者鷹志と大統領候補ケネス・ヤマオカ 「イーグル」の主人公は、青年記者の鷹志。彼は母の死による深い悲しみに暮れている最中、アメリカ

          【読書メモ】イーグル

          【読書メモ】サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用

          皆さんこんにちは。 ビジネスとマーケティングの世界は、常に進化し、新たな理論やアプローチが登場しています。その中で、「サービス・ドミナント・ロジック」という理論は、従来のビジネスモデルに革新的な変化を提案しています。この理論の核心は、価値の創造と認識に関する私たちの理解を根本から見直すことにあります。 顧客が価値を決定する 「サービス・ドミナント・ロジック」では、価値は提供者が決めるのではなく、受け手、つまり顧客が決定するものとされます。これは、商品やサービスが顧客の手に

          【読書メモ】サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用

          【読書メモ】白亜紀往事

          皆さんこんにちは。 劉慈欣は、彼の代表作「三体」により世界中のSFファンから高い評価を受けている中国の作家です。しかし、その長大な三部作(続編もあります)に取り組むことに躊躇する読者も少なくありません。そんな読者にぜひお勧めしたいのが、一冊で完結する「白亜紀往事」です。本作は、遠い白亜紀の時代を舞台に、恐竜と蟻という異なる種族が共存する奇想天外な世界を描き出しています。 この物語の始まりは、恐竜の歯に挟まったトカゲ肉を取ってあげたことから始まる、不思議な友情です。これをきっ

          【読書メモ】白亜紀往事

          【読書メモ】ザリガニの鳴くところ

          皆さんこんにちは。ディーリア・オーエンズによる「ザリガニの鳴くところ」は、自然の美しさと厳しさ、人間の孤独と強さを繊細に描き出した作品です。1950年代から1960年代のノースカロライナの沼地を舞台に、家族に捨てられ、社会から孤立した少女、カイアの生涯を追います。彼女の生きざまは、自然の中で見つけた教訓と、少数ながらも深い人間関係を通じて、読者に強い印象を残します。 孤独の中の成長 カイアの物語は、捨てられた少女がいかにして自らの力で生き延び、自然の中で学び、成長していくか

          【読書メモ】ザリガニの鳴くところ