カブトナリ

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最近の記事

【読書メモ】リバース

皆さんこんにちは。湊かなえの作品にはいつも心を揺さぶられますが、「リバース」もその例外ではありません。この作品は、「深瀬和久は人殺しだ」というショッキングな一文から始まります。サラリーマンとして平凡な生活を送る深瀬和久に突然届いたこの手紙。彼は一体なぜ、誰に、こんな手紙を送られたのか。その謎を追う物語が、彼の現在と大学時代の過去を行き来しながら展開されます。 物語の中心となるのは、大学時代の友人との関係です。大学を卒業してからも彼らとの絆は続いていましたが、ある事件が彼らの

    • 【読書メモ】熔ける

      皆さんこんにちは。 井川意高氏の自伝「熔ける」は、ギャンブルに深く没頭し、その結果として特別背任で起訴され実刑を受けた経験を赤裸々に描いています。しかし、この本は単なる告白にとどまらず、彼の幼少期からの厳しい育ちや、ビジネスマンとしての数々の成功、さらには銀座や六本木、西麻布での華やかな交友録まで、多岐にわたる内容を網羅しています。 「熔ける」は、井川氏のギャンブル依存症の視点から語られ、その底なしの誘惑と破壊力を生々しく描写しています。彼がどのようにして106億円という巨

      • 【読書メモ】アイスランド 大使の食卓

        皆さんこんにちは。今回は『アイスランド 大使の食卓』についてご紹介します。この本では、在日本アイスランド大使ステファンさんの奥様が、様々なアイスランド料理のレシピを紹介しています。 アイスランドの特産品としては、ラム肉やタラ、サーモンなどの魚介類があります。実は、皆さんがスーパーで購入するシシャモも、アイスランド産のものが多いのです。本書では、これらの特産品を使ったおもてなし料理から、アイスランド家庭の定番料理レシピまで幅広く紹介されています。アイスランドは女性の社会進出が

        • 【読書メモ】馬場のすべて教えます

          皆さんこんにちは。 今日紹介するのは競馬キャスターの小島友実さんによる、競馬場の馬場に関するマニアックでディープな本『馬場のすべて教えます』です。 本書では、JRAの各競馬場(と東西2箇所のトレセン)の芝コースやダートコースについて、芝の品種や砂の種類、養生の手法やそれに使う機器など、安全で公正なレースを行うためにどのように競馬場の馬場が運営されているかを知ることができます。新しい芝の品種や新型の機器の登場による進歩もありますが、何より現場の皆さんのプロフェッショナルな馬場

        【読書メモ】リバース

          【読書メモ】地面師たち

          皆さんこんにちは。 今日は、2017年に実際に起きた、積水ハウスが55億円を騙し取られた土地詐欺事件を基に描かれた小説『地面師たち』についてご紹介します。この小説は、現実の事件をベースにしつつも、フィクションとして緻密に描かれた作品です。 物語の概要 『地面師たち』は、不幸な事件で家族を失い、絶望の淵に立たされた男が主人公です。ひょんなことから詐欺グループに加入し、地面師として不動産詐欺に手を染めることになります。物語は、彼が詐欺師として暗躍する過程と、その裏で展開される

          【読書メモ】地面師たち

          【読書メモ】金沢競馬わくわくブック

          皆さんこんにちは。『金沢競馬わくわくブック』は、競馬YouTuberのショコ壱番屋さんをナビゲーターに迎え、地方競馬場である金沢競馬の魅力を紹介する一冊です。この本は、地方競馬ならではのノスタルジックな魅力や中央競馬との違い、競馬場内のグルメスポットなどを豊富な写真とともに詳細に紹介します。2023年7月に開催された『ウマ娘』とのコラボイベントのリポートも収録されており、競馬ファンはもちろん、初めて地方競馬を訪れる方にも楽しめる内容となっています。 この本では、地方競馬なら

          【読書メモ】金沢競馬わくわくブック

          【読書メモ】宝島

          皆さんこんにちは。終戦直後の沖縄コザ地区、米軍基地から物資を盗み出す「戦果アギヤー」と呼ばれる少年たちがいました。彼らはある日、最大の基地である嘉手納基地に忍び込みます。そこでは米軍の反撃にあい、メンバーは命からがら、リーダーは生死不明で散り散りになります。 帰らぬリーダーの消息を辿るうち、ある噂を耳にします。「予定外の戦果を得た」 戦時中から返還までの激動の沖縄を舞台に少年から男になっていく登場人物たち。「鉄の暴風」と呼ばれた本土決戦を子供時代に経験し、親を失いアメリカの

          【読書メモ】宝島

          【読書メモ】黒の試走車

          皆さんこんにちは。梶山季之の『黒の試走車』は、1962年に発表された経済推理小説であり、当時の高度成長期の日本における自動車業界の激しい競争を背景にしています。この物語は、産業スパイ活動や企業間の熾烈な情報戦をリアルに描写し、企業情報小説という新しいジャンルを確立しました。 物語の主人公、朝比奈豊はタイガー自動車の社員です。彼はライバル会社から機密情報を盗み出すために産業スパイとして暗躍します。同時に、自社から情報が漏れた原因を突き止めるために奔走し、仲間の謎の死の真相に迫

          【読書メモ】黒の試走車

          【読書メモ】ぎんなみ商店街の事件簿 SISTER編

          皆さんこんにちは。今回は井上真偽の「ぎんなみ商店街の事件簿 SISTER編」についてご紹介します。このシリーズは、古き良き商店街で起こる事件を解決する物語で、「BROTHER編」と「SISTER編」という2つの視点から展開されます。今回は、三姉妹が主人公の「SISTER編」を読みました。 もちろん「SISTER編」の舞台も銀波商店街。物語は、三姉妹が探偵役となり、商店街で起こる様々な事件を解決していく姿を描いています。時系列は「BROTHER編」と同じなので、同じ事件に出く

          【読書メモ】ぎんなみ商店街の事件簿 SISTER編

          【読書メモ】ぎんなみ商店街の事件簿 BROTHER編

          皆さんこんにちは。井上真偽による「ぎんなみ商店街の事件簿」シリーズは、古き良き商店街で起こる事件を解決する物語で、読者を温かな気持ちにさせると同時に、スリリングな推理の楽しさも提供します。シリーズは「BROTHER編」と「SISTER編」の2冊があり、それぞれが異なるキャラクターを中心に展開されます。今回は「BROTHER編」を読みました。 舞台は銀波商店街。物語は、元太(24歳)、福太(高校生)、学太(中学生)、良太(小学生)の四兄弟が探偵役となり、商店街で起こる様々な事

          【読書メモ】ぎんなみ商店街の事件簿 BROTHER編

          【読書メモ】土偶を読む

          皆さんこんにちは。土偶についてはご存知ですか?これらが何を象徴しているか?一般的には豊穣の象徴であり、妊娠した女性を表しているとされています。これが長らくの通説であり、私もそう考えていました。しかし、これは土偶に関する数ある説の一つに過ぎず、そのモチーフについて客観的な根拠は乏しく、研究者の間でも統一された見解はないようです。 この本では、考古学者ではなく人類学者である竹倉史人さんが、土偶についての独自の考察を展開します(表紙にはネタバレが含まれています)。ハート形土偶や「

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          【読書メモ】魚で始まる世界史

          皆さんこんにちは。今日紹介するのは、歴史の教科書ではあまり触れられない、魚が西洋史に果たした役割にスポットを当てた越智敏之の著書『魚で始まる世界史』です。この本は、ニシンやタラなどの魚がヨーロッパの経済や文化の発展にどのように寄与したかを詳述しています。これらの魚がいかにして大航海時代の推進力となり、新大陸への影響を与えたかが興味深く語られています。 この本では、魚が単なる食料以上のものとして位置づけられている点が特徴的です。キリスト教をはじめとした宗教との密接な関わりや、

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          【読書メモ】『硫黄と銀の室町・戦国』

          皆さんこんにちは。 『硫黄と銀の室町・戦国』は、日本が14~17世紀に採掘し、東アジアへ大量輸出した硫黄と銀の歴史に注目した著作です。この本は、鹿毛敏夫によって編集され、多岐にわたる専門家が共同で寄稿しています。硫黄と銀の採掘がいかにして東アジア全体の貿易構造に重要な影響を及ぼしたかを、生産から消費に至るまで幅広く探求しています。なぜ『硫黄と銀』という組み合わせなのかも、冒頭で語られています。 本書は三部構成となっており、第一部では硫黄と銀の世界史を扱い、第二部では硫黄山・

          【読書メモ】『硫黄と銀の室町・戦国』

          【読書メモ】国宝(下) 花道篇

          皆さんこんにちは。下巻『花道篇』では、喜久雄が三代目花井半二郎として名を馳せてから晩年までの道のりを追います。彼は先代の実子である俊介との関係を再構築し、後進の育成にも尽力する中で、芸の完成度を極めていきます。しかし、彼の周囲で起こる悲しい出来事や彼自身が経験する精神的な孤独は、彼の芸をさらに磨き上げる要因となります。 シリーズを通じて、喜久雄の芸術的な成長と人間としての深い孤独が巧みに描かれています。彼が何を得て何を失ったのか、読者に想像の余地を与えています。物語の地の文

          【読書メモ】国宝(下) 花道篇

          【読書メモ】国宝(上) 青春篇

          皆さんこんにちは。吉田修一の『国宝(上) 青春篇』は、歌舞伎という伝統芸能の世界を背景に繰り広げられる、若き歌舞伎役者・喜久雄の成長物語です。物語は長崎でのヤクザたちの新年会で組長が亡くなる事件から始まります。この事件で父を失った主人公・喜久雄は、その場に居合わせた人気歌舞伎役者・花井半二郎の元で面倒を見てもらうことになり、彼のもとで歌舞伎役者としての厳しい修行を積むことになります。 喜久雄は才能を開花させ、半二郎が怪我で舞台に立てなくなった際、彼の代役として選ばれます。し

          【読書メモ】国宝(上) 青春篇

          【読書メモ】十戒

          皆さんこんにちは。今日は夕木春央の『十戒』を紹介します。 あるきっかけで個人所有の小さな無人島に集まった9人のうち、1人が殺されます。犯人からのメッセージにより、残された人々に課された戒律は「決して殺人犯を見つけてはいけない」でした。 物語の主人公は、美大浪人生の里英です。彼女は父と共に、伯父が遺した無人島へ渡ります。この無人島でリゾート開発の話が持ち上がり、その関係者とともに視察を兼ねた息抜きに参加したのでした。 しかし、すぐに里英は事件に巻き込まれていきます。通常、こ

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