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本のある日常

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書店員として働く私が、本のことについて書いたエッセイ集です。
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2024年1月の記事一覧

書店員だけど接客の正解がわからない

私は小さな本屋で働いている。 個人店の小さな本屋なので、お客さんとの距離が近い。 せっかくお客さんとの距離が近いんだから、会計の際に小粋な一言でも言って、お客さんにまた来てもらいたいと思う。 例えば、お客さんの買った本を見て「私もこの本好きなんですよ」とか言えば、話が弾むかもしれない。 ただ実際にやってみると、笑顔で返してくれる人もいたが、苦笑いをする人や無視する人もおり、落ち込んでしまった。 「話しかけ方がまずかったかな・・・」などお客さんが帰ってから反省会をすることもし

歴史小説の門を開ける

長年、歴史小説には苦手意識を持っていた。 漢字が多いし、文体も固い。 なにより、登場人物の名前がみんな似ていて、誰が誰だかわからなくなり、物語に全然入っていけない。 そんな私だが、最近夜な夜な「戦国無双」というゲームを楽しんでいる。 「戦国無双」は歴史上有名な武将を操り、敵をばったばったと切り倒していくアクションゲームである。 仕事終わりで疲れている夜に、自分が強い武将となって雑兵をなぎ倒すのがいいストレス解消になっているのだ。 武将になりきって戦っていると、登場するキャ

私が本を読める場所

私は家ではあまり本が読めない。 読もうとしても、YouTubeやアニメやら他のことに気が移ってしまう。 そんな私が集中して本を読めると思うのは、電車の中だ。 電車では読書以外にやることがない。 スマホは見れるが、電車内が明るくて画面が見づらいし、情報量が多くて脳も疲れてしまう。 でも目的の駅までボーッとしてるのも退屈。 そんな状況はまさに読書にぴったりなのである。 駅のホームで文庫本を読み始めるから、電車を待つ時間も苦にならない。 電車に乗ってからもあっという間で、集中し

本屋納めと本屋始め

本好きにとって、その年の最後に行く本屋と、新しい年になって最初に行く本屋はやはりちょっと特別である。 年末は「これが最後の本屋か」となぜか襟を正すような気持ちになるし、年始に本屋に行くのはワクワクする。 2023年、私の本屋納めは12月30日だった。 朝、吐く息が白くなる寒さの中、なじみの古本屋に向かう。 道中の公園では、何匹もの鴨が寒い川に浮かんで年を超そうとしている。 見るとやる気がなく川に流されている鴨もいる。 古本屋の道すがら、公園を散歩するのは気持ちがいい。 古