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第60回 会社四季報

㈱東洋経済新報社の「会社四季報」は、投資家にとっての教科書と言って良いシロモノです。
以前は、㈱日本経済新聞社も「日経会社情報」という季刊誌を出していたのですが、2017年春で休刊になっています。
ですから、今や四季報と言えば、㈱東洋経済新報社の「会社四季報」だけという状況になっています。

さて、この四季報ですが、季刊誌ですから、新春号、春号、夏号、秋号があります。
新春号ではなく、冬号にすればいいじゃんと思うのは、私だけでしょうか!?
それぞれ、12月、3月、6月、9月の中旬に発売されます。
そして、この4冊の中でも、最も重要だとされているのが、6月中旬発売の夏号になります。
なぜ、そう言われるかと言えば、日本は3月を会計年度末に設定している企業が非常に多いからです。

新年は1月からですが、国や地方公共団体は4月を新年度と考えます。
これに付随する上場企業も多く、4月から3月を会計年度として処理しているのは全体の75%程度となります。
次に多いのが12月末の14%、その次が2月末の4%ですから、他の月はどれも1%未満となってしまいます。

3月末を会計年度末としている企業は、5月中に決算の数字を公表し、6月中に株主総会で承認を経て、登記しなければなりません。
つまり、四季報が新しい決算と予想の数字を手に入れるのは5月ということになり、それが最初に反映されているのは夏号になるからです。
また、夏号に新たに反映されるのは、3月末決算企業だけではありません。
2月末決算企業も4月に発表することから、夏号に新しい数字が掲載されるのです。
つまり、75%+4%になり、実に5社に4社の新しい数字が載る訳です。

そして、その業績ですが、四季報の各会社の記事中の左下に記載されています。
中間決算や四半期決算も一部掲載されているのですが、やはりみるべきところは通期です。
通期に関しては、今期と来期、更に過去3年間の実績が掲載されています。
左から、年度、売上高、営業利益、税前利益、純利益、1株益、1株配当の順に記載されています。

ここで最も注目するべきは、売上高です。
1株益、1株配当を見たくなるのが人と言うものですが、これらは単なる結果に過ぎません。
1株益、1株配当が増えていても、売上高が増加しなければ、近い将来頭打ちになります。
なぜなら、売上高が変わらずに利益が伸びているのは、内部の効率化による結果だけであり、効率化と言う作業は、直ぐに頭打ちになるからです。
利益を青天井に伸ばすためには、売上高が伸びていることが不可欠と言えるからです。

中長期投資を考えるなら、まずは売上高が伸びていることが不可欠です。
そして、今後も伸びる予想がなされていることが必要です。
伸び率は10%程度が理想です。
新興企業によっては、20%や30%を予想するものもあります。
ただ、急拡大する企業は、内部の充実が疎かになることも多々あり、成長が続かないことが多いです。
だから、安定的に成長していく企業を選ぶべきでしょう。

次いで、営業利益です。
こちらも、売上高同様、成長を続けているものが良いです。
ただこちらは、様々な要因により、率として上下することが多いので、余り安定的でなくても良いです。

そして、1株益を確認します。
これは、成長企業として、株価の位置を確認するためです。
通常、10%程度成長を続けている企業なら、PER15倍前後となっていることが多いでしょう。
ですから、PER15倍以下なら割安、PER20倍以上なら割高と考えられます。
ただ、これはあくまで目安ですから、絶対的なものでは無いことに注意してください。

また、この時に、配当金は余り考えなくて良いでしょう。
そもそも配当金は、企業が生んだ利益を再投資せずに、株主に対して分配するものです。
より良い投資先があるなら、配当金を出すのではなく、再投資に回す方が企業価値は上昇します。
つまり、株価自体が上昇するということです。
しかし、企業として成熟してくると、再投資先というものがなかなか見つかりません。
かといって、社内に貯め込んだところで、利益が生まれる訳ではありません。
だから、早めに株主に返還するということで、配当金を出す訳です。

10年先の株価10倍を考えるなら、目先の配当金より株価上昇を狙うべきです。
なぜなら、配当金を受け取ってしまっては、再投資先を新たに見つけなければならないからです。
また、同じ銘柄を買うにしても、配当金を単元株分まで集めるのは、かなり時間がかかると思います。
配当金は、「複利効果」を考えれば、悪手だと言わざるを得ません。

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