第68回 3236プロパスト

私が抽出した銘柄の中で、最もPER(株価収益率)が低い企業は、3236プロパストです。
時価191円に対して、この24年5月期の予想は50.1円、25年5月期の予想は58.9円となっています。
つまり、PERは3.81倍、3.24倍となる訳です。

     売上高 営業利益 経常利益 純利益  1株益  1株配
単21.5    18,886  1,714  1,299     920   29.5   2.0
単22.5    17,689  2,127  1,691  1,135   33.0   2.0
単23.5    20,015  2,557  2,098  1,562   45.6   2.0
単24.5予   23,300  3,200  2,600  1,700   50.1   4.0
単25.5予   26,000  3,400  3,000  2,000   58.9   4.0

PERは15倍程度が平均であり、4倍弱となると超割安だと基本的には判断できます。
それなのに、どうして3236プロパストは超割安のままなのでしょうか!?
そもそも5月決算企業なので、今の数字は四季報の春号にも記載されています。
ですから、新しい数字と言う訳ではなく、多くの投資家に知れ渡っている数字なのです。
少ないですが、配当金も出していますし、これだけ見ているとなかなか買われない原因が分かりません。
そこで、この銘柄の深堀りをしてみましょう。

3236プロパストは、不動産開発企業です。
新規の開発だけでなく、再生開発も手掛けています。
再生開発とは、中古不動産を仕入れて転売することです。

実は、中古不動産の転売は、そう簡単に出来るものではあれません。
例えば、昨今、都心部でも問題になっている空き家問題。
普通に持ち主を探して買い取れば良いと考えがちですが、そう簡単にはできません。
なぜなら、持ち主が分からないからです。

持ち主は不動産登記を見れば良いとこれまた単純に考えがちですが、登記は単なる対抗要件に過ぎません。
ですから、真の持ち主が登記しているとは限らないのです。
また、空き家となっているのは、元々の所有者が死亡していることが多い、つまり相続不動産である可能性が高いのです。

そして、相続不動産の場合は、揉めて相続人が決定しないということも多々あります。
こういう時は登記をされていないどころか、持ち主が相続人の共有財産となり、権利関係が非常に複雑になってしまいます。
だから今年から、国は相続人に対して登記を義務付けたのですが、その効果が表れるのは暫く先になると思います。

つまり、中古不動産の転売と言うのは、非常に需要はあるものの、簡単に出来るものでは無いということなのです。
そこに手を出して成果を上げているのだから、もっと評価をされても良いのではないかと思います。
そこで、財務的な視点から、3236プロパストを見てみましょう。

  1株純資産 自己資本比率 総資産 自己資本 剰余金 有利子負債倍率
単21.5 178.20  25.5   24,089  6,152 3,735   2.69
単22.5 209.23  25.1   28,714  7,201 4,800   2.78
単23.5 252.97  28.0   30,950  8,680 6,293   2.38

新型コロナ問題が明けた2020年に第三者割当増資で資金調達していることで、自己資本比率は50%まで行かないにしても、28%と不動産会社としたら問題ない部類に入ると思います。
剰余金も増え、有利子負債も圧縮中です。

次にキャッシュフローを見てみましょう。

   営業益 フリーCF 営業CF 投資CF 財務CF 現金等残高 現金比率
単21.5  1,714   -3    383   -386   1,114   3,665   15.21
単22.5  2,127  -2,625  -2,718      93   3,376   4,432   15.43
単23.5  2,557   237      174    63   553   5,229   16.89

ここで大きく気になるところは、22年5月期の営業益がプラスなのに、営業CFがマイナスだと言うことです。
これは、多額の借入金を返還したということでしょう。

更に、ここ最近の投資CFがプラスだと言うところでしょうか!?
つまり、不動産会社としての生命線となる仕入れが上手くいっていないというところでしょうか!?
投資CFのプラスは、直ぐに業績に現れるということはありませんが、数年先には明確に現れます。

- これってもしかして、景気の悪化を見越して!? -
そう考えるのは、経験の長い投資家だからでしょうか!?
実は、リーマンショックの時に、当時の新興不動産企業は軒並み破綻してしまいました。
8948ランドコム、8947ノエルなどが、その例です。

3236プロパストや8925アルデプロ、8918ランドなんかは、倒産せずに生き残ることに成功しましたが、それでも当時に受けた傷は、完全に癒えていない状況だと思います。
となると、今後の金利上昇も加味して、3236プロパストは業務拡大を一時的に抑制しようと考えているのでしょうか!?
もしそうなら、四季報が書いているような成長は期待できず、多くの投資家が見送っていることも、ある意味納得できると思います。
ただ、安定的に事業を行っていると考えれば、今後の不動産銘柄売りに巻き込まれて、株価が急落するようなことがあれば、非常に魅力的だと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?