第13回 投資家が必要とする重大な要素

前々回に説明した投資法を実際に試そうと思っても、直ぐに機会が来るわけではありません。
天井三日底百日ではありませんが、投資期間に対して、待ちの期間が非常に長くなります。
そのため、待てずに焦りの心が芽生えてしまいます。
焦る心は、条件の緩和に繋がります。
条件の緩和は、リスクの上昇に繋がります。
リスクの上昇は、損失の拡大に直結します。
実際のところ、このことを理解してもらってから話を進めたいところですが、その結果を待つと、暫く何も書けないので、無視して話を進めます。

投資をする上で最も重要なことは、「勝ち続けること」ではなく、「大負けしないこと」です。

楚漢戦争期に、項羽は劉邦に「垓下の戦い」で大敗します。
敗れた項羽は、守備を強固にして起死回生の時を待つことにしたが、包囲した劉邦の軍から楚の歌が聞こえてきたため、楚出身の項羽の部下たちは、望郷の念から戦意を喪失させてしまった。
これが有名な「四面楚歌」ですが、部下たちが戦意を喪失したのと同時に、項羽も戦意を喪失してしまい、最後は決死の突撃を行い自刃します。
実は、項羽が劉邦に負けた戦いは、これが最初で最後でした。
それまでも、項羽は劉邦と戦い、何度も何度も劉邦を破り、何度も何度も勝ちを納めていました。
その都度劉邦は、命からがら、時によっては身一つになって、恥も外聞もなく逃げていたのです。

つまり劉邦は、「何度負けても死ぬような大敗をしなかった」から、天下を取れたのです。
逆に項羽は、「一度の負けで以後の勝負を諦めて自刃した」から、天下を取れなかったのです。
歴史にもしはありませんが、垓下の戦いの後、項羽が本気で逃げていれば、劉邦が天下を取れたかどうかは分からないと言えるでしょう。

このことは、投資でも同じです。
格好悪くても、成功しようと最後までもがくという心意気が大事になります。
引き際をキレイに、などという美学は、投資には必要ありません。
投資の世界では、「儲けた人」が成功者で、偉くて、かっこいいんです。
それこそ、「儲けられない人」には、価値がありません。
まぁ、わざわざ自分は儲けられない投資家だと言う必要はありません。
アクセス数稼ぎのネタでは面白いかもしれないですけどね。

さて、そこで「大負けしない」方法ですが、言葉で言うのは簡単です。
また、単に「理解」するだけも簡単です。
ただ、こういう時に言う「理解」という言葉は、実際の理解ではなく、単なる知識として脳が記憶しているだけ、本当の理解に至るものではありません。

実は、人の行動には3段階あります。
「知る」、「理解する」、「実行する」です。
「投資で再起不能になるような大負けをしてはならない」と私みたいな投資家が書けば、多くの人が「そうか!!」と頭の片隅に置いてくれると思います。
ただ、これは「知る」というレベルです。

「大負けをする」というのは、金銭を失うという意味だけではありません。
投資家としてのヤル気を失うことも、また「大負け」なのです。
成功し続けるには、成功者が持つ積極的な「心」と、成功できる「技」、更にやり続けられる健康的な「体」が必要です。
だから、続けられる投資家は、ヤル気を失わないようにします。
技である自身の投資法に満足せず、更に磨きをかけることを考えます。
体調が悪いと判断が鈍ることにもなるので、健康の維持を心がけます。
ここまでが分かれば、それは「理解する」レベルだと言って良いでしょう。

そして、これを現実的に実行できれば、「実行する」になります。
仕事が忙しいとか、他に楽しいことが出来たとかで、投資へのヤル気が減るなんてことは、金銭的に大負けしてなくても、精神的に「投資」が大負けしています。

自分の投資法を確立できたものの、実は限られた条件でしか儲けられないという投資法があります。
例えば、短期投資の買い下がりです。
上げ相場であれば、一度売られても直ぐに戻りに入ります。
こういう時は、買い下がればそのうち反発し、利益にならなくても損益無しで撤退できます。
ところが、一旦、下げ相場になると、風景がガラッと変わります。
下げても簡単には反発せず、買っても、買っても、含み損が拡大する一方になってしまうのです。
だからこそ、自分の投資法が確立出来たら、その欠点を見極めて修正する努力が必要になります。
環境や時期が限られている投資法は、非常に多いのです。

また、酒の飲み過ぎなんかも厳禁です。
二日酔いで、大事な日に、相場に参加できなかったなんてことになったら、目も当てられません。
事件や事故の発生で、相場が一変するなんてことは、良くあります。
こんな時に、体調不良で参加できなかったとなれば、投資家として笑い者になると思ってください。

いやいや、自分の知っている投資家はいい加減で適当な人だと言う人がいるかもしれません。
もしそうなら、騙されてはいけません。
それは単に表面的にそう見えているだけなのです。

多くの成功している投資家は、全て他責とはせず自責と考え、自分に対して非常に厳しいです。
ただ、環境やタイミングを待つことに長けていることから、この待ちの期間を、遊んでいたり、さぼっていたりするように見えているだけです。
だから初心者の人は、成功している投資家の見た目に、騙されないようにしましょう。

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