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第18回 『hedge』

自分が不利益を受ける事象そのものを、変化させることはできません。
地震や水害が起こることが予知できても、起こさないようにすることは絶対にできません。
しかし、その事象から受ける不利益は変化させることができます。
地震や水害に遭遇しても、被害を受けないようにすることは可能です。

だから、『risk』が大きいときは、可能な限り『risk』を縮小化させるという行動をとる必要が出てきます。
この『risk』を縮小させる行動を『hedge』と言います。
「あれ!?『risk』は変化しないんじゃないの??」、「矛盾している!!」と思われるかもしれません。
当然、事象に起因する自分の状況は、そのままで全く変化しません。
だからこそ知恵を絞って、置かれている状況を変化させずに、『risk』を軽減する方法を探すことになるのです。

『hedge』の方法は、大別すると2種類あります。
「『risk』が発生する確率そのものを引き下げる方法」と、「『risk』が現実のものとなった時に、そこから受ける悪影響を引き下げる方法」です。

ここで、再び『例えの谷』を利用して考えてみましょう。
『例えの谷』の丸太橋で、「『risk』が発生する確率そのものを引き下げる方法」とは、踏み外して丸太から落ちる確率を引き下げることになります。
言い換えれば、渡り切れる確率を引き上げることです。

例えば、靴から裸足になるのはどうでしょうか!?
靴は、走ったり、歩いたりする時に、足の裏を保護することに向いています。
この為、足裏の感覚は、靴を履いているとどうしても鈍ってしまいます。
しかし、丸太の上では、その利点が欠点となってしまいます。
だから裸足になれば、足裏が直接丸太と密着して渡り易くなる、つまり『risk』が低減するということです。

他にも、丸太の両端を固定するということはどうでしょうか!?
誰が固定するのかと言う問題を今は考えず、丸太が動かなくなるだけでも『risk』は大きく低減することになります。
このように、渡り易くすることが、『hedge』というものになる訳です。

また、「『risk』が現実のものとなった時に、そこから受ける悪影響を低減させる方法」と言うのは、実際に足を滑らして落ちてしまっても、死なないようにすることです。
落ちても死ななければ、落ちても良い、問題ないということになります。

例えば、命綱を体に結ぶというのはどうでしょうか!?
足を踏み外して丸太から落ちても、命綱によって体は支えられます。
だから、谷底に激突死することはありません。

他にも、丸太の下に網を張ってもらうというのもあります。
落ちても、網が体を受け止めてくれる。
このように、落ちても死なないような手立てをしておくことも、『hedge』ということになる訳です。

そして今例示した4つの『hedge』の方法。
裸足、丸太の固定、命綱、ネットがあれば、『例えの谷』の丸太から落ちて谷底に激突死するという『risk』はどうなるでしょうか!?
『risk』は、かなり低減されているのではないでしょうか!?
それこそ、更に丸太を2本組み合わせて、手すりを設置すれば、『risk』はどこまで逓減できるでしょうか!?
私的には、『no risk』、つまり『safety』に変化していると思います。
100万円、いや10万円、いや、1,000円でも、私なら渡ると思います。
いやいや、賞金なんて出すようなレベルではない。
逆に、急いでいる時ならば、1,000円払ってでも渡らして貰おうと考えます。
みなさんは、どのように考えますか!?

ところで、我々投資家が知っておくべきことが、ここにあります。
それは、賞金を出されてもやりたく無いことが、お金を払ってもやりたいことに変わるということです。
やりたくないという理由が、『risk』にまつわることなら、その『risk』を『hedge』することが商売の種になるということです。

やりたいけど危ないこと・・・・。
例えなくても、これを読んでくれているみんなが考えているのが、投資でしょう。
みんな、元本を減らしたくない。
安全に資産を増やしたいと考えているはずです。
しかし、投資家の考えなどはよそに、相場は大きく上下運動を繰り返します。
その投資家を、損失発生という『risk』から『hedge』してくれるのが、投資法ということになります。
投資法を正しく運用できていれば、大損することはありません。
が、上手く行っている時ほど、耳元で悪魔が囁きます。
「今回だけは例外で考えたら良いじゃん!!」

この囁きは、『hedge』機能を失わせるものだと胸に刻まなければなりません。
例外的な取り扱いなど、『百害あって一利なし』なのです。
例え、その例外が成功してもです・・・・。

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