第19回 『hedge』から生まれる『risk』

『risk』を減らすために『hedge』をする。
この時に気を付けなければならないのは、『hedge』することにより、新しい別の『risk』を生じさせてしまうことです。

『hedge』によって新たに『risk』が生まれる・・・・!?
そう言われても、なかなかピンと来ないと思います。
しかし、現実的に、『hedge』したことにより、新たな『risk』が生み出され、その生み出された『risk』が、元々の『risk』よりも巨大だと言う笑えない状況がしばしば起きているのが現実です。

前回の『例えの谷』で、命綱《ロープ》という『hedge』を出したことを思い出してください。

- いやいや、それは危ないでしょう!! -

こうツッコミを入れた人も居たと思います。
そして、このツッコミは、正解です。

例えば、体に命綱を巻き付けた場合。
落ちた時に、命綱体を支えてくれることは間違いありません。
しかし、支えると同時に、体に大きな負荷がかかります。
腹部に巻き付けていれば、腹部に大きな圧力がかかり、内臓破裂に至るかもしれません。
良くて大ケガ、最悪死亡ということになりかねない訳です。

また、体ではなく、例えば腕や足でも危ないです。
その部分だけに負荷が加わる為、脱臼するかもしれません。
まぁ、死ぬよりマシでしょうが・・・・。

更に、体に負荷が掛からないような結び方をしていても、落ちたと同時に、ロープはブランコのような動きをします。
真ん中で足を踏み外して落ちたら、一旦は真下に落下します。
しかし、ロープの長さの限界に至ると、落下の動きは止まります。
すると、次の瞬間、崖が命綱を支えている個所を支点として、その落下エネルギーは横移動の運動エネルギーに変化します。
つまり、元居た崖に激突するという訳です。
上手く態勢を立て直して、足で崖を蹴ることができれば無傷でしょう。
しかし、そんな器用なことができなければ、体ごと崖に激突することになってしまいます。
そうなれば、打撲程度で済めば良いですが、悪ければ骨折、最悪の場合は激突死になります。

つまり、命綱という『hedge』を生み出して、崖下への激突死と言う『risk』を回避できたとしても、崖壁への激突死と言う別の原因での死亡事故が起きれば、余り『hedge』の意味を成さなくなる訳です。
踏み外したら100%死亡ですが、命綱があれば、その100%が50%になるだけで意味があると感じる人もいれば、意味は無いと感じる人もいるからです。
このことは、『risk』の捉え方の違いが、『hedge』の捉え方にも影響するということです。

少し話が逸れたので戻します。
つまり、『hedge』をしたことにより、内臓破裂や崖壁への激突死という新たな『risk』を生じさせました。
それなら、打開策としては、この新たな『risk』を『hedge』すれば良いのです。
内臓破裂しないように、また脱臼しないように、結び方を考える。
そして、命綱が左右に振れないように、工夫をする。
このように新たな『risk』が生まれても、その『risk』を『hedge』することができれば、元々の『risk』も『hedge』できたということになる訳です。

投資家の中で良く耳にするの『hedge』が、分散投資というものです。
『卵は一つのカゴに盛るな』という言い方をされますが、実はこの考えは非常に厄介なものです。
初心者は、『なるほど』と考え、分散投資が良いものと思い込み、複数銘柄に投資する。
が、分散のメリットは、同時にデメリットでもあるのです。
一つの銘柄が下げても、他の銘柄が上げれば利益になる。
言い換えれば、一つの銘柄が上げても、他の銘柄が下げれば損失になるということです。
つまり、効果が平均値に収束し、投資の面白みを感じることができない訳です。

そう、この格言が最も厄介なところは、この投資の面白みを感じられないところにあります。
面白みが無いと、ヤル気を失う。
ヤル気が無くなれば、投資に費やす時間、つまり研究する時間が減る。
研究時間が減れば、投資が上達しない。
投資が上達しないと、投資家として正しい行動が取れなくなる。
正しい行動が取れなくなれば、結果的に大損をして退場する。

つまり、分散投資をすることにより、集中投資から生じる個別材料の暴落という『risk』を『hedge』するという意味では正しいです。
ところが、面白みが減ることにより、真面目に投資に取り組むことをしなくなる。
これが新たな『risk』の発生という訳です。
この『risk』を『hedge』するのは、自分の意識次第です。
大して儲からなくても、研究を続けて、実績を積み重ねる。
そうすれば、ある時、分散投資の利点より、欠点の方が大きく見えてくるようになります。
こうなれば、素人の投資の『risk』から解放されたと言える訳です。

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