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第80回 営業利益、経常利益、純利益

今回は、損益計算書で営業利益、経常利益、純利益と分けて記載することについても、もう少し深堀りしてみます。

「売上高」から「売上原価」を差し引いたら、「売上総利益」が出てきます。
が、この「売上総利益」は、企業も投資家も、殆ど顧みません。
なぜなら、商品の保管や販売に要する費用を含めた金額までが経費として重要であり、商品そのものの製造費だけを見ても、企業活動に大きな意味を見出せないからです。
逆に言えば、「売上総利益」に、「販売費及び一般管理費」を加算した「営業利益」が大きな意味を持ってくる訳です。
そして、この「営業利益」が、企業が本業と位置付けている事業内容の収益を表しているのです。

企業は定款の中で、事業内容を明確に設定しています。
この定款は、企業にとっては設立目的であり、存在意義であり、社会的使命でもある訳です。
そして、この設定されている活動の結果が、「営業利益」に反映されている訳です。
つまり、「営業利益」が赤字なら、極端に言えば、設立目的も、存在意義も、社会的使命も果たしているとは言えません。
なぜなら、赤字では将来的な事業継続が不可能であり、いくら社会に有益な事業であっても、撤退を余儀なくされてしまうからです。

ですから、営業利益が赤字の企業は、本業自体を見直さなければならなくなります。
この時に、「売上総利益」率が、重要な判断基準になります。

まず、「売上総利益」が赤字の場合は、話になりません。
本業そのものが赤字なわけですから、本業そのものを見直さなければなりません。
今の本業を諦めて事業転換するか、続けるかの判断に迫られます。
続けるなら、本業を抜本的に見直し、黒字化を実現する明確な計画を立てなければなりません。

次に、「売上総利益」が黒字の場合は、その率が問題になります。
「売上総利益」率が低く、「販売費及び一般管理費」を吸収し切れないなら、「売上総利益」が赤字の時と同様、利益率を高くする明確な計画を立てなければなりません。
「売上総利益」率が高いときは、「販売費及び一般管理費」の支出が多過ぎるからです。
この時は、「販売費及び一般管理費」を見直します。
広告宣伝費の削減や本社機能の縮小という手立てを打ちます。

ところが、「営業利益」が赤字でも、「経常利益」が黒字になっている企業があります。
「経常利益」は銀行の利息などの他に、保有証券や不動産から損益も含まれます。
企業が定款に、「保有不動産の賃貸」を目的に加えていれば、賃貸料は「売上高」に含まれ、「営業利益」に計上されます。
ところが、加えていなければ、賃貸料は「売上高」に含まれず、「営業外利益」として計上されます。
このように、定款に記載された目的によって、「利益」そのものが計上される欄が変わります。
ですから、資産が多い古い企業では、こういうことが稀にあります。

そこで、「営業利益」よりも、「経常利益」の方を重視する投資家もいます。
ただ、「営業外利益」の大きい企業は、定款の目的を改正して、「売上高」に組み替えるべきだと考えます。
「営業外利益」は、あくまで企業にとっては副産物であり、そのまま放置するような企業は目的を見失っているのと同じで、この後の成長を期待できないと考えるからです。

ところで「営業外費用」が大き過ぎて、「営業利益」が黒字で、「経常利益」が赤字になっている企業があります。
この場合は、資金調達の費用、つまり借入金の利息が多過ぎると考えるのが普通です。
ですから、「営業利益」を大きく伸ばせるなら問題ないのですが、そうで無ければ新株発行などの資金調達をして、借入金の返済に充てる必要が出てくるでしょう。

最後に、一時的な損得を加えて「税引き前当期純利益」になります。
不動産や機械を中心とした固定資産の購入や売却、投資有価証券の評価額の変化などがここで反映されます。
今から20年ほど前の2000年前後、日本の会計は世界基準に変更されました。
この中で、株式や不動産の計上価格は、時価と決められました。
それ以前は、取得価格か時価のどちらかを選べたため、どの企業も取得価格で計上していました。

時価に限られると、投資有価証券の価格の変化で、業績が大きく左右されることになってしまいます。
ですから、2000年代初頭は、旧財閥系企業中心に、(株式の)持ち合い解消の売りが出て、株価は暴落し、その多くは外国人によって購入されました。
日本の株式の過半数を外国人が保有しているのは、このためです。

そして、この有価証券の計上額が時価に限られることが、これからの日本を苦しめます。
国債は、利回りが上昇すれば、既発国債の価格が下落します。
既発国債の価格が下落すると、保有している銀行や企業は、時価で評価しなければならないため、「特別損失」を計上しなければならなくなります。
そうすると、今後説明するバランスシート(貸借対照表)が傷ついてしまいます。
この辺りのことは重要なので、次回もうちょっと詳しく説明したいと思います。

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