「愛山・談幸二人会」について〜「忠臣蔵」は面白い!!

 12月23日、「愛山・談幸二人会」へ。
何回かやっている会らしいが、不覚にも初参戦。
実力のある二人が、無駄のない二人が、程のいい二人が、たっぷりと聴かせてくれる、そんな会だった。

 講談の神田愛山先生。もちろん名前は聞いてはいたが生で観たのは初めて・・・。しかし、一瞬でファンになった。決してお客さんに媚びない。そして、前に出ない芸なのに迫力満点、そんな芸風が繰り出す「清水の次郎長伝飯田の焼き討ち」。これが面白くないわけがない。
どこか神田伯山さんの口調に似ているが、さらに円熟味と渋さが際立っているのだから、終始前のめりで聴いてしまった。

 2席目の立川談幸師匠は「淀五郎」。
今日の会では、絶対に珍しい噺を演ってくれると期待していたが、やはりである。途中で、「中村仲蔵」かと思ったが「淀五郎」、どちらにしても胸が騒いだ。長年の落語好きの僕だが、「淀五郎」を生で聴いたのは初めてなんじゃないかな。多分、円生師匠の音源を子供の頃何度か聴いていたような・・それで、あらすじは知っていた。談幸師匠は、くどくどと説明のいる噺を、実にさらっと、わかり易く語ってくれる方。どこを削ったのか、どこの言葉をどう変えたのか、全く分からないがただただものすごく自然に、その状況が頭に入ってくる。歌舞伎の階級やしきたり、「仮名手本忠臣蔵」の話の背景などの説明が、全然煩わしくなく、むしろ、落語のあらすじの一部のようで面白く聴こえてくる。

 この噺、あの「中村仲蔵」にアドバイスを求めに行っているところが、落語ファンとしては堪らない。仲蔵が、澤村淀五郎に「目の前でやってみな!」と言ってダメ出しをしてあげるシーンは、勝手ながら『談志師匠がモデルなのでは?』と思えるぐらい「立川談志像」が見え隠れしていて面白かった。落ちは、「蔵丁稚」とほぼ一緒なんだな!?それぐらい元の歌舞伎の脚本が素晴らしく、歌舞伎のパロディをするという事の意味合いが強い噺なんだろうなぁ・・とか噺の背景についても考えてしまう、ワクワクするようないい噺だった。

 仲入りを挟んで、再び談幸師匠の「風邪の神送り」。
この噺も珍しい噺の方だと思う。「風邪の神を送る」というコミカルな設定
を(江戸の)風情として、振り切って演じている談幸師匠に可愛らしさも感じられて、そういった部分も面白い噺。この噺は、その後の「お名残惜しい」とつぶやくセリフとのギャップ(温度感)と、突拍子もなく付けられた落ちが、落語らしさでもあり、落語の魅力でもあったりするのだろうなぁ。

 そして、主任の愛山先生の「赤垣源蔵別れの徳利」。
マクラでの毒舌と「忠臣蔵」の史実を語る学者肌な語りに惹き付けられた。
僕も、以前、仕事の関係で「忠臣蔵」の史実や「仮名手本忠臣蔵」について調べた経験があったので、全てが合点がいくというか、「腑に落ちる」というのは、まさにこの事!!というマクラだった。それも、「忠臣蔵」の世界に引き込ませるための話術だったんだろうと思う。
 本編は、軽妙なテンポと迫力の一言。
迫力と凄みはあるが、嫌な重厚さはないのが、またいい。話の世界に入り込み、ちょっと離れたところで登場人物たちを見ているような、そんな感覚に陥らせてくれる。さらには、登場人物の表情、距離感、色彩なども、はっきりとリアルに見えてくる、そんな噺だった。
 
 談幸師匠もだが、二人共決して大げさだったり臭くは演らない。その分、しっかりとじっくりと世界観を浮かび上がらせてくれる。渋くてカッコいい二人の会、贅沢な時間だった。
 周りに教えたいような、教えたくないような感じがする会、僕は、必ず、また行くだろう。


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