色物と新作落語 〜10月中席池袋〜

10月15日、池袋演芸場。
春風亭昇々さんの初主任興行の千秋楽。

最初から浪曲、玉川太福さんの登場で場内は一気に盛り上がる。さすが池袋のお客さん、太福さんの新作「地べたの二人」を周知のようで待ってました!という雰囲気。相変わらず、声のトーンが心地よくて情景が浮かびやすい。その場その場でお客さんの空気を掴んでのギャグも丁度いい。以前から、落語をやっても様になる語り方だと思ってはいたが、マクラで前座さんをいじりながらちょっとだけ披露した「平林」は、やはり様になっていた。

その後、コント青年団さんと大好きな芸人さんが続く。贅沢な並びだ。ネタは、何度も観たことのあるネタだが、毎回、その場の空気感でアドリブのワードや時事ネタを入れ込んでマイナーチェンジしたり、間合いを変えているようで、いつも新ネタのように楽しめる。僕のようなおじさんが好みそうな毒っけもあり、抜群の安定感とほんの少しの(いい意味での)不安定感を併せ持つ寄席には絶対に欠かせない芸人さんだと思う。
その日は、その後、講談や指揮者モノマネ、マジック、ボーイズ芸と色物さんが多い日で、落語芸術協会の色物の層の厚さを感じさせてくれた。

そして、主任の昇々さん、相変わらず冒頭から全力で繰り広げられる「昇々ワールド」の新作落語が楽しかった。落語に入った瞬間に一気に自分の世界感を見せる事が出来る、数少ない芸人さんだと思う。「指定校推薦」という、ごくごく身近なテーマを色々な角度でえぐって行って笑いを重ねて行っているのも落語らしくていい。押しが強いようでいて、情景や登場人物の
表情などがはっきりと浮かび、キャラクターに対する愛情が随所に見え隠れするのが昇々落語の魅力だと思う。

色物と新作落語の魅力が際立つ楽しい寄席だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?