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脱炭素時代の主役「水素」関連株を深掘り!日本市場の本命は?

まったなしの環境問題に直面し、各国政府や企業は脱炭素社会へ向けた取り組みを進めています。この流れの中、燃やしても水になるだけの水素をエネルギーとして利用する動きが世界各地で起きています。

今回はそんな「夢の燃料」である水素について、水素とは何かの基本から、水素関連株(銘柄)について、水素が注目される理由、水素関連業界の今後、水素関連の具体的な注目銘柄について解説します。


水素とは

世界的な脱炭素の流れの中、日本は、2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすると表明しています。脱炭素社会の実現に向け、水素は不可欠なエネルギーであり水素への関心が高まっています。なぜ水素が注目されるのか。それは水素がもつ2つの特徴のためです。

そもそも水素とは、地球上で最も軽く、無色無臭の気体です。水素は宇宙にもっとも多く存在する元素で約9割を占めます。酸素と結びつくことで水になります。地球上では、気体の水素や、ほとんどが水や炭化水素などの化合物の状態で存在しています。

水素には大きな特徴が2つあります。1つ目は、水素はさまざまな資源から作り出すことができることです。水素は水を分解して取り出すことができます。石油などの化石燃料や太陽光など自然エネルギーからも製造することができます。

また、製油所での石油精製プロセスや化学工場などでも、副次的に水素が発生します。資源が少ない日本において、作りだすことができる水素は魅力的なエネルギーです。

2つ目の特徴は、水素を燃料として使用した時に二酸化炭素を排出しないことです。水素は燃やしても水になるだけです。そのため温室効果ガスの削減に繋がります。

水素エネルギーは環境保全の観点から注目されています。水素を使用しての発電や、水素と酸素を反応させて電気や燃料電池を作ったりすることができます。脱炭素社会を実現するために水素を使用したエネルギー開発が今後発展していくと予測されています。

水素の関連銘柄とは

水素の関連銘柄は多岐に渡ります。水素を作る、運ぶ、貯める、使う技術を持つ企業。水素の貯蔵タンクや水素を供給するための機械、ガスの圧縮機などを製造する企業です。水素と空気を利用して発電する燃料電池(FC)燃料電池自動車(FCV)の開発、製造する企業も水素関連銘柄です。FCVの補給場所となる水素ステーションに関連する企業などもあります。

また、家庭用燃料電池「エネファーム」を開発企業も水素関連です。エネファームを設置することで自宅の都市ガスから水素を取り出し酸素と反応させることで発電ができます。

世界的な脱炭素の潮流があり再生エネルギーが注目されています。炭素依存社会からの脱却に向けて水素の活用が重要視されています。日本政府においても水素ステーションを2025年までに320ヶ所、2030年までに900ヶ所の整備を目標としているため関連企業に注目が集まっています。

水素関連業界の今後

環境改善が世界的に重視されている限り、水素関連業界が発展していくことが予測されます。水素協議会(本部ベルギー)は、2050年までに世界の水素関連市場が2.5兆ドルに達し、二酸化炭素(CO2)の排出の削減は60億トン、さらに3000万人の雇用を生むと試算しています。そのため、水素エネルギー関連は株式市場においても重要なテーマになると思われます。

ただ、今後も成長が期待される業界である一方で、水素関連事業は、まだ収益化まで至っていない企業が多いのも事実です。水素はこれまでの化石燃料より割高な状態であり水素エネルギーのコスト削減が実現するまではコストが先行して増える傾向があります。

水素関連銘柄への投資の注意点

株式市場にとっても水素は重要テーマの一つですが、投資には注意が必要です。ビジネスにはフェーズがあります。水素ビジネスは大きな可能性がありますが、現状は収益を上げる段階というよりは、まだ先行投資 の段階です。

水素関連ビジネスで赤字を出している企業もたくさんあり、多くの企業が将来の収益化に向け努力をしています。そのため、投資をする企業を選択する時は、 水素関連事業以外にも安定した事業があるか も確認する必要があります。

今後も何か新しい水素関連のニュースをきっかけに相場が水素テーマで盛り上がり、水素関連銘柄の株価が上昇することはあるでしょう。まだ収益化段階にないビジネスの場合、そういった上昇局面につられて買うことはあまりおすすめできません。

相場のテーマが去ってしまうと、利益を上げていない企業が株価を維持することは難しい です。なので、赤字段階の企業などの場合、相場が下落している時に少しずつ買い、相場がそのテーマで再び盛り上がった時に売るという戦略を取るのも一つの手です。

水素関連は中長期的に注目されるテーマなので、また何か新しい材料でテーマが盛り上がる可能性は十分にあります。水素関連ビジネスが投資段階から収益化段階へフェーズが移る過程で、相場が水素をテーマとして取り上げることを繰り返す可能性が高いです。

水素関連株は、短期的な利益を狙うというよりは、中長期の視点を持ち、じっくりと腰を据えて投資することが大切です。そして、水素関連の新しい技術やニュースにアンテナをはっておくことも重要です。

水素関連の注目銘柄

脱炭素の流れを受け、各社で水素関連の事業化の動きが高まっています。重工大手や設備メーカーが相次いで水素事業を拡大しています。川崎重工(7012)は、水素液化機や液化水素運搬船、貯蔵タンク、水素ガスタービン発動機などを開発しています。

水素を作る、運ぶ、貯める、使うと水素関連の上流から下流まで一体で手掛けています。三菱重工業(7011)やIHI(7013)なども水素の製造や供給などの事業化を進めています。

Jパワー(9513)は、石炭の一種である褐炭由来の水素の製造をオーストラリアで開始しています。オーストラリアには水素の原材料となる褐炭が豊富に存在しています。川崎重工や国内水素販売トップの岩谷産業(8088)などもJパワーとともに日豪間の水素サプライチェーン構築事業に参画しています。

FCVや水素ステーションなどインフラ整備への関心も高まっています。FCVは、電気自動車(EV)に比べ航続距離が長く水素の充填時間も短いうえ、走行中に排出するのは水だけと環境に優しい究極のエコカーです。FCVは、トヨタ自動車(7203)が「MIRAI(ミライ)」、本田技研工業(7267)も「クラリティ フューエル セル」を発売しています。

FCVのインフラとなる水素ステーションの整備も始まっています。石油元売り最大手のENEOSホールディングス(HD)(5020)は、規制緩和が進んだことで、これまで難しかった市街地の給油所でFCV向け水素充填サービスを開始します。岩谷産業は簡易型水素ステーションの建設を推進。

2023年度までに日米で水素ステーションを20年度の2倍に当たる106カ所に増やす計画です。足元で約200億円の水素事業を30年までに10倍程度に伸ばす予定です。新コスモス電機(6824)は、水素ステーション向けガス警報システムを販売しており、国内ステーションの約8割に採用されています。

この他、新電力大手のイーレックス(9517)や水素ステーションを手掛ける三菱化工機(6331)、燃料電池用の高圧水素コンプレッサーを製造する加地テック(6391、2部)なども水素関連銘柄として市場を賑わしています。

まとめ

脱炭素社会の実現のため、水素は不可欠なエネルギーです。今後も水素エネルギー関連銘柄は、株式市場で重要なテーマとなります。環境に優しいクリーンなエネルギー水素の関連銘柄の動向をチェックしましょう。 

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