本当に「育成のソフトバンク」なのか。「育成力」を数字で西武と比べてみた。
中畑清さんのこの記事を読みました。
中畑氏、ソフトB勝因はDH制ではなく熱い育成への取り組み
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191029-00000092-spnannex-base
個人的にはパリーグが強くなった要因として「DH制」の影響もあるとは思いますが、それ以上にソフトバンクの躍進と、その他5球団が「打倒ソフトバンク」を目標に切磋琢磨し全体のレベルが引き上げられた、という主旨には同意できます。
たしかにソフトバンクは強い。否定する気はまったくありません。でもね、その強いソフトバンクを退けてリーグ優勝したのは西武なんですよ。それも2年連続。もう少し「西武もすごいなー」となるかと思ったけれど、世の中「ソフトバンク強し」一色。そりゃ、ロッテとの対戦成績のアヤもあると思いますよ。でもね、西武VSソフトバンクのシーズン直接対決では、今年は12勝13敗で昨年は13勝12敗。胸張って「西武の方が強い」とは言いませんが少なくとも互角じゃないですか。それなのに…
ということで、日本シリーズ終了以降、悔しい!もやもやする!そんな気持ちをずっと抱えていたわけです。
ここから先は、そんな哀れな西武ファンの戯言と思ってください。ソフトバンクファンの方すみません。
今回あらためて脚光を浴びているのは、中畑さんの記事にもある「育成力」。確かに千賀・甲斐・石川・牧原・周東らの活躍は素晴らしかった。でもね、ここでまたモヤっとするのです。「育成力」まで西武が劣るとは思えない。ソフトバンクが強いのは間違いないけど、なんでもかんでも褒めりゃいいってもんじゃない。あれほどたくさん育成選手を抱えることができたら、芽が出る選手の「絶対数」も多いに決まっている。もちろんそれだけ選手を抱えられる資金力だって、広い意味で「育成力」に違いないけど。じゃあ育成契約した選手のうち、戦力になった「割合」はどうなんだ。そっちの方が、本当の意味で「育成力」と言えるんじゃないでしょうか。
ということで、ざっと調べてみました。(以下、wikipedia情報を元にしています)
●制度がスタートした2005年以降2018年までの、ドラフト会議における育成指名選手数
ソフトバンク / 58人 西武 / 8人
う…毎年よく獲るなーとは思っていたけど、想像を超えてました。。。あらためてその資金力に驚愕します。(実際は外国人選手を含めるともっと多い)
●そのうち、支配下登録されないまま退団した選手(他球団への移籍含む)
ソフトバンク / 26人 西武 / 0人
育成契約は「3年間」がひとつのメドになっているので、まだその期限が来ていない2017・2018年ドラフト選手を除くと、48人中26人。実に54%が支配下選手になれないまま、すでに退団しています。やはり厳しい世界。
●支配下登録を経験した選手(既に退団している選手含む)
ソフトバンク / 17人 西武 / 5人
●一軍の試合に出場した選手(既に退団している選手含む)
ソフトバンク / 15人 西武 / 3人
ソフトバンクは26%が何らかの形で一軍の舞台を踏んでいます。
4人に1人が戦力になったと考えると、思ったより多い印象があります。
しかし、ここで一つ重要な点を指摘しなければならないでしょう。
上記一軍を経験した15人のうち、9人までが2005~2010年でのドラフト指名選手に集中しています。
この中には千賀・甲斐・牧原の名前もあります。
一方で2011年以降では指名した44人のうち、21人が支配下になれないまま退団。一軍経験者はわずか6人(約13%)。
それ以前の6年間で一軍経験者は14人中9人(64%)ですから、ずいぶんと差があります。
この期間に何があったのか。スカウトが変わった?獲得方針が変わった?はたまたアマチュア選手の層が薄くなった?なんだか気になってしまいますが…
こうして見ていくと、ソフトバンクには確かに「育成力」もありそうです。特に2010年までに獲得した選手の活躍には目を見張るものがあります。
そして支配下を勝ち取った選手は、かなりの確率で「戦力」になっています。そのあたり「見る目」もしっかりしているということでしょうか。
とはいえ、その陰で多くの選手が育成契約のまま2~3年で戦力外・退団となっているのも事実。やはり現在の選手層は、豊富な資金力あってこそというのは否めません。
そんなわけで、西武と比べようにも数が少なすぎて比較にならないという誤算はありつつ、ソフトバンクは「資金力ありきだけど、育成力もまあまあ」という判定をさせていただきます。
…以上、なんとも中途半端な結論となってしまいました。
でもこうして振り返ってみて、感じたことがあります。
ソフトバンクの58人に対して西武の8人。
藤澤・水口・戸川・斉藤・高木・中熊・大窪・東野。
藤澤は残念ながら退団してしまいましたが、少なくともファンにとっては、育成選手といえども全員が大きな期待を背負った、大切な「ライオンズの一員」です。
日本シリーズ優勝は羨ましい。資金力があるのも羨ましい。ジェラシーに駆られてこんな文章を書き始めてしまった。でも「抱えている選手が多い」ことが羨ましいとはどうしても思えなかった。
一人ひとりの顔を思い浮かべ、いつか一軍の舞台で活躍してくれることを期待する。ファンとしての楽しみが大きいのはやっぱりライオンズなんだ。そう確信しました。
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