羽根英樹さん講演会〜需給を読む事が飯の種。あまのじゃく投資法イベントドリブントレード。 その1[自己紹介 イベントドリブンとは何か] 2023.7.1開催
2023.7.1に開催されました羽根英樹さんの講演会の書き起こしになります。
今日はおそらくKabu Berry始まって以来ファンダの話を全くしない講演を予定しております。今日はイベントドリブントレードという話をさせていただこうと思います。
あまのじゃく投資法イベントドリブントレードというタイトルに今回しました。あまのじゃく投資法とは何かということですが、端的に言って異端の投資法で、正攻法ではないトレードです。投資法ではなくてトレードですが、皆さんがやっておられるのは普通だとファンダメンタルズを中心にしてやっておられると思うので、ほとんどの方にとっては全然関係ないというか違う話になるかと思いますが、しばらくお付き合いください。
自己紹介
まず自己紹介からします。僕は小さい頃から社会の仕組みとか雑学が大好きで、実は勉強嫌いでした。勉強は嫌いだったけどそういう雑学みたいなことが大好きで、何でも知りたかったので何で何で何でと言うから、親にしょっちゅう聞くので鬱陶しがられてました。これも小学校ぐらいの時からずっとそんな感じだったと思います。
時は経ちまして大学生の時代はパチンコがバイト代わりでした。パチンコで稼いでいたわけです。この中にもパチプロっぽい方もおられることは存じておりますが、意外にトレードやってる人でパチンコから入った人、パチンコから入ったと言えるかどうかわかりませんが、結構似たところがあります。例えば期待値であるとか、勝ちやすいやり方にドンとつぎ込んで負けることはやらないとか、そういう共通点がいろいろあります。私のトレードのルーツはここかなと思います。
もっと昔にはうちの父親が株をやっていて、今もやっていますが、新聞の株式欄とかよく開いてあったので数字の羅列よく見ていました。うちの親父が当時の、三洋電機を買っていたので、三洋電機の株が上がるのか下がるのかみたいなことを小学校の時から見てはいました。ただ株1000さんみたいに実際にそれで自分でやってみようとは全然思わなかった。
私はバブル崩壊直後の91年頃から相場の世界に入りました。まず最初は何回か小ロットで現物株を買いました。銘柄は多分山陽特殊鋼だったかな。その辺はもう本当に遊びみたいなものです。本格的にやり始めたのは93年頃からで、商品先物から入りました。この辺が皆さんとは全然違うと思います。商品先物は今もそうかもしれませんがいかがわしいです。ダーティーなイメージがすごくありまして、いつだったか株か何かの飲み会の時に、商品先物やっていると言ったら、すごく嫌な目で見られたことがあります。こいつ詐欺でもやっているのではないかみたいなね。そういうイメージがあるんだなと思いました。これ株やっている人に商品先物の話したらダメなんだなってこの時つくづく思いました。
その時はサヤ取りという手法を実践していまして、1995年頃に相場の師となる人と出会いました。師匠の話を本当はしたいのですが、私が勝手に師匠と言ってるだけで、あんまりそんなこと言うなと言われていますのでここはちょっと伏せておきます。99年株式で急落のリバウンドを取るトレードを開始しました。これは結構システムトレードとしては定番の方法ですが、こういうのを始めました。これ結構利益出る時は出ます。未だにちゃんと機能しています。今でもやります。
2000年に最初の著書、サヤ取り入門を出版しました。パンローリングという今もお世話になっているところから最初の著書を出版しました。2000年だからもう今から23年も前の話です。2001年初めてのTOB、ポケットカードだったと思いますが、初めてTOB銘柄の売買をしました。これ面白かったです。ここからちょっとTOBというイベントに興味を持ったという感じです。
2005年、この辺からリバランスを利用したイベントトレード、この辺は昔J Coffeeさんという人の本があって、こういうのが紹介されていました。ちなみになぜこの225とTOPIXのリバランスに興味を持ったかというと、実は商品先物の指数でもこういうリバランスがあるのですがほとんど知られていません。もう今だから言っちゃいますが、ジムロジャース商品指数というのがあるのです。ジムロジャース商品指数というのは商品指数の中では割とマイナー、今もありますがマイナーです。でもそれで運用するファンドというのが世界中にいっぱいあります。
このジムロジャース商品指数の中になぜか日本の小豆が入っていたのです。小豆なんて本当ローカルでマイナーなものです。そんなのでここにファンドが入ってきたらどうなるかというと、水たまりの中でクジラが暴れるみたいな感じです。このクジラに対して逆張りするというトレード何十回とやりましたが、先物ってロールオーバーといって限月を変えていかなければならないのです。毎月毎月限月変わる時になったらその限月が売られて次の限月が必ず買われるわけです。そこに逆にサヤ取りの形でぶつけると、これ損した記憶がなくて勝率が100%でした。もう今なくなっちゃいましたが、こういうのがすごく機能したことがあって、それでこのリバランス面白いなと思って、日経225やTOPIXでもリバランスあるんだなと思ってトレードを始しました。
その頃、僕の知り合いで土屋健三さんという人がいるのですが、株式の指数でリバランスの売買をやっている人いるよって紹介を受けたのが夕凪さんという、今日来ておられますが、夕凪さんは結構こういうのすごい得意だったのでいろいろ教わりながらトレードしていました。
2009年、これリーマンショックの後ですが、公募増資がすごく増えて、もうリーマンショックの後で会社なりふり構わず増資をやり始めたのです。もう公募増資バブルみたいな感じで儲かったわけです。公募増資って基本的にショートで、受け渡し前にショートして、増資を受けて、当時は禁止ではなかったのですが、それで現物を渡したら、もうそれで自動的に儲かるみたいな、そういう感じだったのです。今はちょっと禁止されています、その手法は。
その後2010年頃から商品先物の出来高急減で軸足はほぼ株式市場に。この後も商品先物ってほとんどもう今石油とか金が一部やっていますが、一部僕もまだ未だに商品先物実はちょっとやっていますが、全体の運用金額からみたら本当に微々たるものです。
2012年ソフトバンクグループのeアクセスへの株式交換による買収案件に参加しました。これが結構面白かったので、M&A案件を多く売買するきっかけになりました。これもイベントの一つです。この後もTOB公募増資など各種のイベントトレードを実践して、2019年この本ですが、イベントドリブントレード入門というのを出版、これもパンローリングから出版しまして、2020年以降、敵対的TOBが後でちょっと言いますが多発しまして、TOB合戦TOBバブルの状態、今もそれに近いのですが、そういうことになりました。
現在、パンローリングなどで活動しています。
イベントドリブンとは何か
ではイベントドリブンとは何かという話をします。いろいろなイベントというものがありまして、この中にその狭義のイベントドリブンと広義のイベントドリブン、要は狭い意味でのイベントドリブン、広い意味のイベントドリブンもあります。本来イベントドリブンということは、この下の狭義のイベントドリブンのことを指します。この狭義のイベントドリブンでイベントドリブンという言葉を使う人はあまり実はいなくて、本来はこのM&AとかTOBとか企業合併とか、この辺りのことを狭義のイベントドリブンと呼んでいます。
今手法としてはこれ全部やっているのですが、考え方はこの狭義以外のこの辺と、この狭義のイベントドリブンは全然実は違います。やり方もちょっと違うので、そこはちょっとまたお話しします。
それではイベントドリブンとは何か。まずよく勘違いされるのですが、テーマ株や材料株投資とやっぱり勘違いされる方もいます。勘違って言ったら失礼かもしれません。同じようなものじゃないかというふうに思われる方も多いと思うのですが、テーマ株材料株、確かにやっていることは似ているかもしれないです。そこでこんな経験話をします。
僕は温泉が大好きで、僕関西に住んでいるのですが、関西でもちょっと郊外に行ったら山の近くに日帰り温泉があるのです。ある日帰り温泉の風呂にお昼間に行ったのです。そしたら昼間だったので、行ったら2人ぐらいしか広い湯船にいなかったのです。そしたら2人ちょっと酒が入っていたみたいで、株の話ずっとしているのです。こちらはゆっくりお風呂入りたいのに株の話かよとか思ってました。でも3人しかいませんから、そのうち1人が上がっていったのです。ちょっとさっき上がるわみたいな感じで、そのおっさんと僕2人きりになってしまったのです。
おっさん酔っ払っているから、僕にも話しかけてきて「兄ちゃん株せえへんのか、株」。「いやあんまりしないんですけど」。かかわり合いになりたくないじゃないですか。こっちはゆっくり入りたいのですよお風呂に。「兄ちゃん株せえへんのか、株」。「いやあんまりやらへん」。「株やるやろ、株」。勝手に決めつけるなよって話。「兄ちゃん株やるんやったらな、ガラスやガラス。旭硝子」。「なんでなんですか」。「今のiPhoneすごい売れとるやろ」。その当時ちょうどスマホが売れ始めた時期だったみたいで。「旭硝子はiPhoneのガラス作っとるんや。これは絶対来るで」と勧められてしまいました。絶対来るでって競馬ちゃうっちゅうねんって感じ。
関西の人、関西のおばちゃんはよくなれなれしいみたいな話をしているのですが、実はおっさんもなれなれしいのですよ、本当に。知らない人でも平気で、例えばこう、モーニング、喫茶店のモーニング食べて、スポーツ新聞読んでいたら横から「昨日の阪神戦こんなのあかんやろ」みたいな。全然知らない人なのですよ。本当に何回も話しかけられたことあるのですが、まあそれは置いといて、材料株投資とかテーマ株っていうのは、そういう、旭硝子がiPhoneで上がるとかいうものです。
何がそういうものかよくわからないのですが、そのおっさんの言うその材料ですよね。ディスってないですよ別に。材料株投資もディスってませんけど、ちょっとバカにしてますけど。ごめんなさいね、狭義のイベントドリブンとそれ以外では、やり方がちょっと違います。これ言った通りです。あとでちょっと説明します。
過去データの検証が肝。定量分析と書いています。定量分析もちょっとこれ後で説明しますけど、考え方としては、過去に起こったことはまた起こるという、そういう考え方をもとにやります。テクニカルでもファンダメンタルズでもない異端のトレード方法。イコールあまのじゃく投資法だと、ということでそういうタイトルに今回しました。
実はこの本の後ろにもですね、「人と違うやり方で儲けるあまのじゃく売買法」というのを帯に書いてあるのですが、これ実は僕はタイトル決めるときに、あまのじゃく売買法にしませんかって出版社に言ったら却下されまして、一応帯に残してくれました。さすがにそれじゃ売れないだろうと編集の方が思ったみたいなのですが。
需給の変化がメシのタネ。何でトレードしているのかというと、需給です。需給って言うとですね、例えば信用倍率なんかを需給だと思っているかと思うのですが、信用倍率そのものだと、これだけで需給はなかなか語りにくいかなって思います。貸借のショート、空売りとの信用倍率というものがあるのですが、実はもっと大きな貸株のレンディング市場って言うのですが、機関投資家とかがよく借りてやっているレンディング市場っていうのがあって、そっちの数字が入っていないので、本当のショートと本当のロングの比率っていうのはよくわからないのですよね。だからあんまりその貸借倍率というのを気にしてもしょうがないのですが、実際その貸借倍率の過去データを検証しても、あんまりこういい結果が僕の場合は出なかった。
ちょっとじゃあ例を挙げますね。これワイズテーブルという、株主優待投資される方のご用達の銘柄なのですが、これ2月8月の優待権利で、これ2月ここが2月の権利日に向かって、そうですね12月の終わり頃からバーンと上がっています。なんで上がるのかといったら、優待欲しいからね。上がるわけですよね。これが需給なわけです。普通の銘柄であれば、そういうことは起こらない。別に権利日になって上がっていくということはないわけですよね、優待がなければ。これは優待を欲しい人が上がっていくから、どんどん権利日に向かって上がっていく。特にこのワイズテーブルというのは非貸借銘柄、要はショート、空売りできない銘柄なので、クロスができないのです。クロスができないから買うしかない。上がっていく。しかもこれ時価総額が小さいので、結構時価総額の小さい銘柄、こういう動きすることが多いです。
実際じゃあ、今度コロワイドで10年分ぐらい、最終日を100として、ちょっと指数化して検証したのですが、やっぱり60日ぐらい前からジグザグですけど上がっている。要は10年の平均値がこれなので、全体的に見たら、やっぱり権利日が近づくと上がっていくというお話なのです。これ検証方法としては、定量分析というやり方にちょっと近いやり方をしています。
その2へ続く