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羽根英樹さん講演会〜需給を読む事が飯の種。あまのじゃく投資法イベントドリブントレード。 その2[定量分析] 2023.7.1開催


2023.7.1に開催されました羽根英樹さんの講演会の書き起こしになります。


その1[自己紹介 イベントドリブンとは何か]  https://note.com/kabuberry_/n/nfe4c759bc104


定量分析とは何か


定量分析とは何かとまたお話します。次にミズノの冬季オリンピックの例です。オリンピックというのは4年に1回あるわけです。過去のオリンピックの時の値動きを平均化しています。オリンピックの開会式の線がここなのですが、ここを基準の100にしています。でも冬季オリンピックやっている最中はずっと下がっていくわけですよね。というのはオリンピック前には期待で上がるのですが、始まっちゃったらもう買う人いなくなるので下がっていくと。実は他の大きなスポーツイベント。ワールドカップとか、それから夏季のオリンピックでも同じようなことがやっぱり起こっています。本当に同じようなグラフになるのですね。特にワールドカップや夏季オリンピックの場合は、もう開会式より前から2、3日前から下がっているような状態だったと思います。

いわゆるこれも銘柄を見たら材料株とかテーマ株の一つかもしれないのですが、過去の検証をするということをやると、タイミングが分かるわけです。例えばさっき言っていたおっさんの旭硝子ですが、あのおっさんの旭硝子の場合は何がまずいかといったら、その時点で今が相場のどのあたりにいるか分からない。いつ買っていいか、いつ売っていいか分からないわけです。でもこのミズノの場合は過去の検証があるので、だいたい例えば20日くらい前に買って開幕の時くらいに売って更に空売りしても取れるんじゃないかというタイミングが分かるわけなのですよね。タイミングが分かる、売り時買い時が分かるというのがイベントドリブンだと思っていただいて、テーマ株との違いと思っていただいたら結構です。

テクニカルの話

ここからですね、ちょっとすみません、テクニカルを否定する話をするので、テクニカルやっている方あんまり気を悪くしないようにしてください。RSIの話をします。RSIっていうのは逆張りでよく使う指標で、これ一見225のグラフにRSIのグラフを重ねたものなのですが、これ見ると例えばRSIが80、このライン、ここ、ここ、20切るラインがこことこの辺で結構的中当たっているように見えますよね。このグラフだけ見ると確かに当たるときはこれ当たるのですよ。でも実際例えばこれがもうちょっとすると、例えば今20のラインから下に突き抜けてしまうと、これがもうちょっとすると、こんなことしょっちゅう起こるわけなのですね。

このRSIの弱点というか、そういうものなのですが、トレンド出ると全然当たらないのですね。トレンドが出ないときは確かに横横の相場のときはそれなりに当たっているのですが、大きなトレンドが出ると全然機能しなくなってしまうというのがRSIなのです。RSIに限らずなのですが、長い目で見て機能するテクニカルはほとんどないというのが僕の持論です。どんなテクニカルも実は年中機能しているわけではなくて、特に逆張り系の先ほどのRSIとかRCIとか、ストキャスティックスとか、サイコロジカルとか、そういういろんな指標があるのですが、これがですね、やっぱりトレンドが発生すると大やられすることが多いというか、大やられします必ず。

で、長い目で見てですね、例えばその損益曲線が右肩上がりにはならないですね。これはですね、ずいぶん古い本なのですが、「トレーディングシステム徹底比較」という本がありまして、いろんなテクニカルをシステムトレードとして扱って、どのテクニカルが効くのかというのを徹底的に検証した本があるのですが、どれも基本的に効かないのですよ。で、かろうじて例えばトレンドフォロー系は長い目で見ると効くのですが、それでもやっぱりかなりジグザグするわけですね。年中効いているわけじゃないという感じなのです。長い目で見てプラスになるテクニカルは本当に少ないんです。

検証できるものは検証してみると、その指標の性格というのはよく分かる。これ実際やってみればいいのですよ。やってみたら本当にあんまり長い目で見ると効かないというのがよく分かると思います。だからテクニカルでやっている人は、そのテクニカルが本当に効いているのかというのを確認しないとやっぱり怖くてできないと僕は思うのですが、でも特にFXなんかMACDとか使っている人多いですし、これでトレードしてるんだと思いますが、これが一体その長い目で見てどうなんだろうと個人的にはちょっと不安に思っています。

川柳でですね、罫線屋、足を引き引き足を出しという川柳があるのですが、要は罫線の足。足って日足とか週足の足ですね。足を引いていたら相場で足を出してしまったと、そういう皮肉の川柳なんです。実際僕のまわりのトレーダーでですね、テクニカル使ってトレードしている人というのは実は一人もいなくて、だから機能しないというわけではないですが、やっぱり僕はテクニカルちょっとあんまり使いたくない。でも全く何も使わないかというと、例えば200日移動平均線の上に相場があるのか下に相場があるのか、例えば日経225の200日移動平均線よりも今上にあったら全体が上げ相場だというのが分かりますし、そういう長期移動平均線の上に相場があるのか上か下かで今のトレンドを判断するようなことはしますが、その程度ですね。

もう一つの例、斜めに引くトレンドラインというのがあります。これもFXでやる人多いのですが、これを見るとすごい機能をしているように見えますよね。この斜めの線に当たって戻して、当たって戻してしているのですが、もうちょっと足すと全然機能しなくなっちゃうわけです。

このトレンドラインに関して言えば、これ無限に線が引けるのですよ。

主観なのですよ。トレンドラインって科学的じゃないのです。これ全然検証できない。


そうじゃないよ、ここに線引けるじゃないかと言いますが、これは主観ですよね。だってこれ時間軸変えたらいくらでも変わりますからこんなの。で、どこを起点にするかとか、どのぐらいの時間軸を使うのか、その人の感性で線引っ張るから再現性が全然ないのですね。
だから過去データを検証する方法もないので、機能するかどうかの論じることすらできないというのがトレンドラインで、トレンドラインディスりです。

定量分析の話

ちょっとディスるのはこの辺にしておきましてですね、定量分析の話をします。ちょっとここからは難しいので、ここで眠くなってしまう方もおられるかもしれませんが、ちょっと我慢してください。定量分析と定性分析という言葉があります。で普段ですね、皆さんが例えば財務諸表を勉強したりとか、それからその例えば決算短信や中経を見たりとか、前回講演されたkenmoさんとかは得意ですよね。そういうその手法をされていると思うけど、それ基本的に定性分析というふうに呼んでいます。一つ一つの企業について深掘りして分析するのが定性分析で、ごく投資としてはごく一般的なアプローチです。

でファンド機関投資家もほぼ定性分析をやっています。必ずしもデータだけではなくて、例えばその企業がどういうことが得意だとか、素晴らしい新製品が出たとかそういうことも定性分析ですね。こんなことは一般的なファンドや投資家が行いますし、例えばそのテーマ株を扱うようなファンドというのはあるわけですよ。

先ほど言いました、例えばそのガラスの話はいいか、例えばそうですね、オリンピックファンドというのがあったと。そんなのあるかどうかわからないですけど、仮にオリンピックファンドというのがあったとすると、それでもやっぱり定量分析はしないそうです。これはファンドマネージャーに聞いたら、そんなことするわけないというようなことがあるわけですよ。定性分析しかしないそうです。なのでほとんど世の中の相場をやる人の9割以上がやっているのが定性分析だと思っていただければ結構です。

定量分析は何をするかというと、横断的に統計的にデータを扱うわけなんです。それはどういう投資家がやっているかというと、ヘッジファンドは基本的に定量分析をやります。あとクォンツという人たちも定量分析をやります。私たちイベント投資とか、イベントトレードをやっている人たちは定量分析をやる人も定量分析をやります。あとシステムトレードをやっている人の中にも定量分析をやる人もいますけど、でも定性でやっちゃう人もいます。

じゃあなんでその定量分析にこだわるのかという話をしますと、定量分析というのは多くのデータを使うわけですよね。そうすると再現性がある、信頼性があるわけですよね。だからエビデンスのあるトレードができる。エビデンスというのは証拠とかそういうことですけども、医学用語として最近よく使われていますよね。この治療法にはエビデンスがあるとかないとか、そういう使い方しますけども、この中では結構いろんな話が出てきましたけど、エビデンスのあるトレードができるわけです。要は根拠があるということですね。

分析をもとに売買ルールを作ると、エッジのあるシステムトレードができる。エッジというのは優位性のことですけども、その分析をもとに売買ルールを作ると、そういう形としてシステムができるわけです。システムトレードというのは、メカニカルなトレードという言い方をする人もいますから、いろんな言い方をする人がいますけど、ルールをまず作るんだと。そのルールもちゃんと根拠があるルールなんですよ。根拠のないルールを使ってもしょうがないので、根拠のあるルールを作ると何がいいかというと心理的に楽。

どういうことかなって思うかもしれませんけど、相場で皆さんが迷うときって、なんかルールがないと、じゃあ例えば持っている株がある日突然暴落してストップ安を付けました。ストップ安付けたけどこの株どうするの、迷いますよね。でもルールがあると基本的にはやること決まっているので、心理的にすごく楽なんですよ。自分の検証をした中で最適化されていて、最適な方法でやるから、明日ストップ安になったとしても、損切りするのか、あるいはさらに向かって買うのか、放っておくのかっていう、その手順がもう始めから決まっているわけなんですよね。そうするとやっぱり迷いがないので、心理的には本当に楽です。もちろん相場でマイナスになっているという感情は一緒ですけど、でもやっぱりやることが決まっているだけで、ずいぶん僕自身は心理的には楽、これで楽になりました。

定量分析って余談ですが、実務に生かされるのが医学でして、医学の中でも疫学という分野があります。疫学って医学の中の統計学のことを疫学って言っているんですけど、例えば薬がどのくらい効いたかとか、こういう属性の患者にはこういう薬が効いたとか、そういうことを統計的にやったのが疫学です。ペストかな、ペストが確かこれ始まりだったので、ヨーロッパでペストが始まったときに、どうしてペストが流行っているかよくわからなかったんです。でも調べていったら、ここの地下水を使って、井戸を使っている人はみんなペストになった、こっちはペスト。これ水が原因だなと。でも本当に原因かどうかわからないけど、統計的には明らかにこれ絶対水が原因だろうということで、じゃあこの水使うなで終わりというのが、その疫学の始まりだったそうです。

定量分析とはで、視覚的にじゃあどういう風な感じになるかというと、こういうその散布図という、多分あ眠くなるとか、頭痛くなるようなグラフを持ってきましたけど、えっとこれ自体はですね、何の散布図かと言いますと、IPOの発値乖離率と21営業日(1ヶ月)後の株価の関係ということなんですけど、公募価格に対して、初値がどれぐらい上がったかというのを一つ軸として、これはX軸の方かな、X軸にしました。でY軸の方は21営業日後の株価です。でまあこの一個一個が、ひとつひとつのIPOの数値なわけです。

ここに近似曲線というのがあるんですけど、近似曲線が左上から右下がりになってますけど、これどういうことかというと逆相関を表してます。でこうちょっと見にくいですけど、Rスクエアというのが書いてありますけど、0.0258、えっと2.58%の説明ができるっていう意味なんですけども、多分何のこっちゃわからんと思いますけど、これは説明変数といいまして、どれぐらい、この要はその初値乖離率と21営業日後の株価に、関係があるのか、どれぐらい関係しているのかっていうのが、このRスクエア0.02、要は2.6%というそういう数字なんですけど、だいたいこれ、えっと0.01以上あったら実用化されるとよく言われてます。で、そんなもんだと思ってください。特にこの式とかあんまり覚える必要もないですし、このグラフ自体はエクセルがあったら誰でも作れますんで。

で、じゃあこれをどうやって活かすのかという話をしますと、要はですね、1ヶ月株を持つなら、セカンダリーですよね、いわゆるIPOのセカンダリー投資の中で、初値が上がりすぎた株は持っちゃダメだよっていうことなんです。初値が安い、安いというより公募価格から、あんまり上がってない株の方が、1ヶ月後によく上がっているよっていうことを表しているのが、このグラフなわけなんですね。だからその、これだけではルール作れませんけども、これを例えば一個一個見ていったら、おのおののIPOがどれぐらい利益が出たか損したかというのがわかるわけなんですけども、これを一目で、その1ヶ月後の株価と、それから、初値乖離率と関係を表したのがこれです。これから見れることは、初値が公開価格に比べて高すぎる株は、その後買っちゃダメだよという、のを表している。ダメだよとは言いませんけど、少なくとも統計上は不利だよということを、これはグラフを示しています。

次にイベントトレードというのは、トータルで勝ちに行くんだと。こういう話をします。有意性のあるトレード、エッジという言い方をしますけど、有意性のあるトレードをですね、数多くこなすことで、トータルで勝ちに行く。つまり有利な売買法をたくさん、いっぱい用意しておくわけです。でそれに全部ベットするわけです。でそうすると、例えば一つ一つは、勝ったり負けたり勝ったり負けたりするんですけど、トータルでは、大数の法則が働くので、勝ちに行けるということなんですね。一つ一つのトレードで、一喜一憂してはいけない。でそんな時の負けトレードは、基本的に経費と割り切ってください。

そういえばですね、うちの嫁と付き合ってた頃かな、その彼女に売買の記録を見せたんですよ。こんな感じでふーんって言って、負けることも結構あるんやな。と言われたんですよ。当たり前やがなって。全部勝ってたら、今頃めちゃくちゃ大金持ちになっとるわみたいな、そういう話をしたことがあるんです。相場やっていない人が思っている事あるあるなんですけど。相場でうまい人が負けないわけではなくて、相場でうまい人は、買ったり負けたりしてもトータルで勝ちに行ってるはずですね。負けより勝ちの金額の方が多かったら、トータルで勝てるということなんですね。それで有利なトレードの引き出しはたくさん作っておいた方が、その分散も効くしいいわけなんですよ。

その3