【NVIDIAとTSMCの違い】あなたは「半導体業界」について、どのくらい知っていますか?【半導体シリーズ①】
こんにちは、今回から半導体特集ということで、半導体産業を様々な角度から全7回に分けて解説していきます。
半導体はAIの発達により今かなり注目されている業界だということはご存じだと思います。しかし、あなたは「半導体産業」の全容について、どのくらい知っていますか?
半導体と言えばTSMCやNVIDIAを思い浮かべる方も多いかと思いますが、TSMCとNVIDIAが行う事業の違いを理解していますか?半導体にはパワー、ロジック、メモリ、アナログなどといった種類があり、それぞれ違った業界が関連していることをご存じでしょうか?
このシリーズでは、先に挙げたような、半導体業界に投資するにあたって知っておくべき、あるいは知っておくと非常に役立つ知識を説明していきます。当シリーズを読むことで半導体業界全体の解像度が上がり、より確信をもって投資を行うことができるようになります。
シリーズの各回の内容はこんな感じになってます。(予定)
第1回: 半導体産業の全体像と基礎知識
第2回: 前工程(設計・製造)と注目企業
第3回: 後工程(テスト・パッケージング)と注目企業
第4回: 半導体の用途と市場動向
第5回: 半導体材料と製造装置
第6回: 地政学と半導体産業
第7回: 投資戦略とまとめ
なぜ今半導体業界に注目すべきか?
「なぜ今更半導体?」という疑問をお持ちの方も多いと思いますので、現在の半導体業界の市況について少し説明させてください。
2021年にNVIDIAの株価が急騰し、半導体産業が注目を浴びたことは記憶に新しいでしょう。しかしその後、2023年に半導体市況が下落し、業界全体が停滞期に入りました。この状況により、一部の投資家からは半導体の成長が終わったと見られることもありました。
ところが、2024年に入り、状況は大きく転換しています。生成AIの爆発的な普及や自動車産業の電動化が進む中、半導体の需要が新たな高まりを見せています。これまではNVIDIAやTSMCのような超有名企業に注目が集まる傾向がありました。特にAIやデータセンター関連の需要が集中したことで、それに関連する企業が注目されていました。しかし、現在では車載用のパワー半導体やセンサー、通信機器向けの半導体といった多様な分野にも注目が広がり、産業全体が恩恵を受ける時代に移行しています。
さらに、地政学的な要因も業界の成長を後押ししています。米中間の技術競争が激化する中、各国は半導体生産体制の強化に力を入れています。特に、日本や台湾ではサプライチェーンの安定化が重要視されており、これが半導体産業全体の成長を支える原動力となっています。
2023年の一時的な停滞を経て、2024年にはクラウドコンピューティングや5G通信の普及がさらなる需要を引き上げています。この流れを捉え、次のトレンドに備えるためには、半導体産業全体の仕組みや動向を理解することが欠かせません。
ここまでで、なぜ半導体業界が今面白いのか、そして業界自体についての理解を深めるメリットなどはなんとなく理解していただけたと思いますので、本シリーズの第1回の内容に本格的に入っていきます。
今回の内容は「半導体産業の全体像と基礎知識」についてです。これを読むことで、「このシリーズではこんな内容が学べるんだな」と大体のイメージをつかんでいただけると思います。
半導体とは何か?
半導体は非常に高い技術力と精密さが求められるため、その製造には多くの研究と開発が必要です。現在、半導体技術はナノスケールの加工技術にまで進化しており、これにより高性能コンピュータや電気自動車、そしてスマートフォンなどの幅広い分野で活用されています。
具体的には、次のような種類の半導体が存在します。
ロジック半導体: スマートフォンやPCの「頭脳」として、データの処理や演算を行います。これには、CPUやGPUが含まれます。
メモリ半導体: データを一時的または長期的に保存する役割を担います。主な用途としてはPCやスマートフォンのメインメモリとして使用されるDRAMや、USBメモリやSSDといった記憶装置に使われているNANDフラッシュメモリなどです。
パワー半導体: 電力を効率的に変換・制御する役割を果たします。電気自動車や家電製品など、高出力が必要な機器に使用されます。
アナログ半導体: 現実世界のアナログ信号(音や光など)をデジタル信号に変換する役割を持ちます。センサーや通信モジュールに利用されます。
用途の多さに驚かれた方もいるのではないでしょうか。半導体はコンピュータやIoTに使われているだけではありません。種類ごとに様々な用途があり、それぞれに関連する業界が存在しているのです。
半導体産業のサプライチェーン
半導体がどのように作られ、どの企業が関わっているのかを理解することは、投資判断の助けになるだけでなく、この業界の複雑さと魅力を知る鍵でもあります。この産業の特徴は、製造のプロセスごとに専門分化が進んでいることです。
設計(Design): 半導体の「青写真」を描くプロセス。代表的な企業には、NVIDIA(米国)やARM(英国)があります。設計はイノベーションの源泉であり、技術力が企業の競争優位を決定づけます。
製造(Fabrication): シリコンウェハーの上に回路を形成する工程で、最も高い技術力が求められます。TSMC(台湾)やIntel(米国)がこの分野で知られています。このプロセスは、極めて高額な設備投資を伴うため、少数の企業によって支配されています。
テストとパッケージング(Testing & Packaging): 出来上がったチップの性能確認や保護処理を行う段階。日本企業のアドバンテストがこの分野で活躍しています。製造工程の最後に品質を保証する重要な役割を果たします。
材料供給(Materials Supply): ウェハーやフォトレジストなどの材料を提供する段階で、信越化学やSUMCOといった日本企業が存在感を示しています。素材の品質が製品の性能を左右するため、重要な部分を担っています。
こうした分業体制が、グローバルに広がる半導体産業の強みでもあり、複雑さでもあります。「シリコンウェハー」や「フォトレジスト」などの用語については、次回以降の記事で分かりやすく説明していきますので分からなくても気にする必要はありません。
市場規模と主要プレーヤー
半導体市場は2023年に約6000億ドルという規模に成長しました。この巨大市場を支える主要プレーヤーには次のような企業があります。
ファブレス(Fabless): 設計に特化した企業で、自社では製造を行わず、製造はファウンドリに委託します。代表例としてはNVIDIAやAMDが挙げられます。ファブレス企業は製造設備に投資するリスクを回避し、設計技術に集中できるのが特徴です。
ファウンドリ(Foundry): 他社から受託して半導体を製造する企業です。TSMC(台湾)やSamsung(韓国)はこの分野で世界的なリーダーです。高額な製造設備を必要とするため、参入障壁が非常に高い分野です。
IDM(Integrated Device Manufacturer): 設計から製造までを一貫して行う企業を指します。Intel(米国)やTexas Instruments(米国)はこの分野での代表的な企業です。垂直統合型モデルのため、製造プロセスの管理やコスト削減に優れています。
これらのプレーヤーがそれぞれの強みを活かしながら、世界中で競争と協力を繰り広げています。
まとめと次回予告
本記事では、半導体産業の全体像と基礎知識について解説しました。
このシリーズでは、今回説明したような内容のそれぞれについて、投資を行う上で知っておくべき知識をより詳しく説明していきます。
次回のシリーズ第2回では、半導体製造のプロセスについて深掘りし、特に前工程の詳細と注目すべき企業について解説します。ぜひ次回もお楽しみに!
最後までお読みいただきありがとうございました。これからも企業のビジネスについて、分かりやすく解説した記事を更新していきますので、本アカウントやXのフォロー、そして記事へのスキをよろしくお願いいたします!