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P49Q1のお笑い考察ノート―ストレンジグラデーション考察「参加AD収録手記」書き起こし―

※このnoteにはネタバレが含まれている…かもしれません。


参加AD収録手記1

以下書き起こし


Hさんの企画は6月から始動した。
僕はその頃、人事異動があり、どの番組につくかうやむやのまま、
ひとまずHさんの単発企画(バラバラマンスリー)
につくことになった。

――バラバラマンスリー
若手ディレクターがこぞってその枠を狙い、数多提出された中から選りすぐりの4本が1ヶ月限定で番組ができる若手の戦場である。

そして、Hさんの企画が通り、ヤーレンズさんの番組を作ることになった。
チーフADはHさんの下でずっと一緒に働いているKさんが務めて、ほとんどその2人でロケの準備を進めていた。
ヤーレンズさんと言えば、昨年のM-1グランプリで準優勝した超有望株の芸人だ。

Hさんはそんなヤーレンズさんとタッグを組み、田舎村で村人とほっこり交流をする、というありがちなハートフルバラエティーで鼻息荒く「これでレギュラーを狙う」と息巻いていた。しかしながらどうだろう。深夜番組でインパクトを残すにはもっとバズりそうなエッジの効いた企画やSNSフォロワー数がたくさんいるゲストが必要だと客観的に思った。

ヤーレンズさんはものすごく面白いし、このタイミングで新番組が出来るのは最高ではあるが、それをこんなよく見るような田舎交流番組でいいのか…

墓に埋まっている有象無象の跳ねなかった特番と共に、この企画も眠ってしまうのではないだろうか?
ADの僕からしてもそんな未来がうっすらと見えていた。

ロケ地はすんなりとKさんが決めた。
普通はこの手の番組は場所選びがすべてなのでリサーチに難航するものだが、仕事が出来るKさんのおかげで僕は苦労することはなかった。

そして収録当日、ロケが始まると、やはりというかさすがというか、ヤーレンズさんがテンポよく笑いのポイントを作っていった。Hさんも満足げだ。
ただ、既視感はたくさんあった。
これが本当に新しいバラエティーで、風穴を開けるだなんて、よほどロケ運があって出会う人たちが面白くなくてはならないと思った。

そしてすぐにオープニングトークで
やれることは尽き、村人との交流が始まった。
田舎であるため道に人気はなく、古びた一軒家に突撃するようHさんはヤーレンズさんに指示を出した。
すぐに鬼原さんというご夫婦のご自宅にお邪魔する運びとなった。その老夫婦は、穏やかな田舎によくいそうな感じで、やりとりが跳ねそうになく、このとき僕はこのHさんの企画が凡庸なものになってしまったことを悟った。
Hさんには申し訳ないが、ありそうな番組やってるなぁと傍観していた。

今思えば、その時にもう彼らの思惑に気づいて、ロケを引き上げるべきだったのだ。
ロケ先の老夫婦は優しく、スタッフにまで気づかってお茶を出してくれた。
そのお茶を、飲みさえしなければ、これから書くことは起こらなかっただろう。

お茶を飲むことに難色を示した出井さんに、(カメラでとらえたかどうかはわからないが)おばあちゃんの鋭い眼光が指したのを僕は知っている。
お茶を飲んで数分、カメラマンさんが体調を崩したので控え室で横になってもらった。炎天下での撮影だ。そうなるのもわからなくもない。

それからロケの空気は一転した。
ヤーレンズのお二人もトイレに何度も行き、腹痛とめまいがひどくなっていったと訴える。僕も出されたお茶を一口飲んだだけだが、気持ち悪くなり控え室で横になった。

本当に、あの時に戻れるなら、その時点でロケを中止すべきだったのかと思う。
焦りもあったのだろう。僕が寝ている間、意地でも続行宣言したHさん(Hさんもお茶を飲みすぎたらしくカメラを回してる時に倒れた。)とそれにのっかったKさんが撮影を強行した。

その後、僕が回復するまで、どれだけ恐ろしいことが起きていたのか、僕は収録素材を管理している時にようやく知った。

参加AD収録手記2

以下書き起こし


どれくらい寝ていただろう。
スマートフォンの画面を見ると、20分ほど気を失っていたことになる。

さすがの現場放棄に、吐き気とともに焦燥感が襲ってきて頭がぐらぐらと揺れた。 すぐ下の階(ロケ現場)に行くと、知らないうちに若い女性が混じって撮影をしていた。状況はすぐにチーフADのKさんが教えてくれた。

Hさんは気を失って倒れた (おそらくお茶の影響で)にも関わらず、嬉々として新しい村人の訪れに、 撮れ高の増幅に、ずっと興奮気味だった。

女性もロケに抵抗はなく、むしろヤーレンズさんのファンということで、乗り気で参加していた。飲み込めない違和感を抱えたまま僕はロケのAD業務を続けた。

ロケの休憩中、失礼ながら家の中を見回してみた。仏壇の前には、長野県の旅行用ガイドブックが数冊、乱雑に置かれていた。
他にも老夫婦が使いこなせるはずもないアップルウォッチや、名字が鬼原ではない学校のジャージ、鬼が人を食べている絵、履くはずもない幼児の靴・・・ モヤモヤしていた僕の中の違和感がはっきりと輪郭を持った、この家の不穏な真実に僕だけが気づいてしまったのかもしれない。

休憩があけて、ヤーレンズの2人は老夫婦のお手伝いというテイで、重たいダンボールを運んでいた。
しかし、置いた先は赤いほこらの横で、 なぜそこに置いたのか。そこには正当な理由はなかった。

はっきりと覚えていないが、段ボールには「しし」となぐり書きされていたように思う。
これは、僕の考えすぎならいいのだが、しし=四肢という意味ではないだろうか。老夫婦はその夜、段ボールに入ったもので老夫婦だけの、 あるいはこの村だけの、尋常ならざる何らかの儀式を行うのではないだろうか。老夫婦の笑顔が無機質なものに見えてくるのは、 僕がつまらない妄想を広げて見てしまっているからなのだろうか。

Hさんは休憩中、「京子さん(新しく来た女性)と楢原さんの組み合わせが跳ねそうだから重点的に撮ろう」とKさんに話していた。出井さんにも個別で、 2人のコミュニケーションがたくさん撮れるようアシストして欲しいと伝えていた。
正直、出井さんはこのロケに嫌気がさしているような態度だった。朝のオープニングの時と、まるでテンションが違う。
きっと出井さんも、僕みたくこの一軒家の 違和感に気づいていたのだ。でも僕はまた、そこでも傍観を決めこんだ。
ADである僕が、ロケを頓座させるだなんてありえないことだ。今後のキャリアにも響くだろう。テレビ業界の噂は早い、そして大きい。 ちょっとした不祥事でも、人を介して、さらに介して雪だるま式に話が大きくなり、当人の知らないところで、評価はジリジリ下がっていく。

それを免罪符にするのは、今となってはただただ情けない。
臆病者であることを理由にして、嫌がる出井さんにも声をかけず、ただただHさんの言うことに従った。

楢原さんと京子さんの会話は予想以上にエモーショナルな方向に進んだ。Hさんの勘は当たったのだ。2人が醸しだす雰囲気は、とても適当に訪問した先でとらまえることのできないカットだった。

この業界にはロケマジックという言葉がある。
スタジオでは撮れない、再現もできない神がかった瞬間。楢原さんが恥じらいながらも勇気を出して京子さんと会話するその空気感は、ロケマジックの片鱗を感じさせた。

どうか、このままいいエンディングを迎えたい。そして早くロケを終わりにしたい。
ロケの魔法が溶けないうちに。

参加AD収録手記3

以下書き起こし


ロケの魔法はすぐに解けた。京子さんは家を飛び出し、楢原さんは唖然としていた。つかの間、ゆったりと緊張が解けていた出井さんはここでまたロケの打ち切りを申し出てきた。ロケは完全に事故っている。中止だろうと僕はどこか安堵していた。が、Hさんはエンディングだけは撮ると現場の空気が最低の中、 ヤーレンズさんからの信頼をかなぐり捨ててまで撮影を続けた。

チーフADのKさんも、嫌な素振りもなくその指示にしたがい、僕にも同調する ような声で「あと少し、あと少し」と鼓舞してきた。HさんとKさんがグルだったことに気づいていれば、あの犯行現場(きっとそうであろう)から逃げられたのに。 撮影のラスト、出井さんが消えた、僕はしっかり見ていた。ジャンプしてワープする演出の際、出井さんと楢原さんが一緒に跳ねた。刹那、鈍い音がして断末魔の叫びもなく出井さんは姿を(皮肉にもグラデーションするように)消した。 獣のにおいというか、生臭くにごった空気が鼻をさした。

出井さんの今際の言葉は「せーの」だった。僕は警察にすぐに電話した。 冷や汗でスマホの画面が上手く反応せず、たった3桁の数字を入力するだけ なのにえらく手こずった。警察が来るまで、僕らスタッフが出井さんを探している間に、老夫婦も、そしてHさんとKさんも現場から消えていた。スタッフは僕も含めみんなパニックだった。なんでも同じ場所をうろうろして、 返事のない呼びかけを不安の余白をかき消すように繰り返していた。 その間、イスも用意されず佇んでいた楢原さくの憔悴した顔つきか、やけに頭に残っている。 出井さんだけが、なぜ消えたのか。収録データを見返してみると、出井さんは老夫婦と一緒に30分以上も揺れていた。それが関係しているのか、 エンディングトークを無理やり撮った際も、おばあさんに「あなたは大丈夫」と、言われていた。僕はてっきり、出井さんは売れるから心配ないという意味だと思っていた。きっとそうじゃない。出井さんは、消える準備が完了したという意味だった可能性が高い。遠くてよく見えなかったが、老夫婦と出井さんが揺れている最中、何かを口に無理やり入れているようにも見えた。 あと、ニュースでやっていた近隣住民の発言なんて嘘だ。休憩時に会釈だけだが、村人らしき人と挨拶はした。あの家にいなくてもまだどこかにはいるはずだ。出井さんも、もしかしたらまだ。

あれからHさんもKさんも連絡が取れない。まだ、事件の原因はわからない。 僕は不安で眠れなくなり仕事をやめた。というより飛んだ。 ずっとこのことばかり考えている。ただの了見違いかもしれないが、気づいたことがある。

HさんもKさんも、2人の名前には共通して「き」という文字が含まれている。老夫婦も鬼原(きはら)、途中でやってきた女性の名前も鬼原京子(きはらきょうこ)
スタッフの名前は簡単に偽造できる。芸名みたいな名前で活動するディレクターもいる。HさんもKさんも出身地はどこだ?出生を偽っていたのか?
でも、だとしたら、なぜロケの完成度にこだわって、細かいところまで固執して番組を撮っていたのだろう?どうして怪しいお茶を飲んだ?
もっと適当なロケでよかったはずじゃないのか?
もしかして、計画が失敗したのか?まだ続いている?
ぐるぐるぐるぐる不穏な考えが頭を圧迫する。
この事件に執着し、内実へ踏みこんでしまったのは、せかいでぼくだけ。
しんぞうをやすりでこするようなきょうふであたまがおかしくなりそうです。
はやしさんこだにさん、どうかぼくがうたがいをもってしまったことにきづかないでいてください。
ごめんなさいごめんなさいぼくはいいませんぼくはしりません
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいゆるしてくださいなにもしてません
大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫だいじょうぶダイジョウブダイジョウぶ大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫
大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫

ごめんなさいごめんなさいみのがしてください
けさないでけさないでくださいけさないでくださいゆるしてください大丈夫大丈夫大丈夫だいじょうぶ大丈夫大丈夫大丈夫だいじょうぶでしょ大丈夫ごめんなさいけさないでゆるして こないで

あなたに何でもあげるから


この手記3の途中のひらがなになっている所を読みやすく漢字に戻すと、

(中略)…この事件に執着し、内実へ踏み込んでしまったのは、世界で僕だけ。

心臓をやすりで擦るような恐怖で頭がおかしくなりそうです。林さん小谷さん、どうか僕が疑いを持ってしまったことに気づかないでいてください。ごめんなさいごめんなさい僕はいいません僕は知りませんごめんなさいごめんなさいごめんなさい許してください何もしてません大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫だいじょうぶダイジョウブダイジョウぶ大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫


ごめんなさいごめんなさい見逃してください消さないで消さないでください消さないでください許してください大丈夫大丈夫大丈夫だいじょうぶ大丈夫大丈夫大丈夫  大丈夫でしょ 大丈夫ごめんなさい消さないで許して 来ないで

あなたに何でもあげるから

…となります。

{余談:手記内に書かれている林D、小谷D(手記ではそれぞれHさん、Kさんで表記)は前者が過去に[そだてれび ドラマ「解かずに観るさんすうの問題」]を担当している方、後者が過去に「新世界 メタバースTV!!!」を担当していた方です。}
↓前者Dについてはこちらを参照

参加AD収録手記3考察

「あなたに何でもあげるから」の「あなた」とは誰なのか?

私は鬼原さん説と楢原さん説の二つの説のどちらかが有力かなと思います。

また出井さんが消えた時に「鈍い音がして断末魔の叫びもなく出井さんは姿を(皮肉にもグラデーションするように)消した。その時に獣のにおいというか、生臭くにごった空気が鼻をさした。」と書かれていました。私は、最初は「何かの比喩表現だろう」とこれについて何も触れていなかったのですが、SNSでは「出井さんは撃たれたのでは?」という考察をしている方がいました。確かに#1の序盤で、「鳩のトラブルが起きた形跡」がありましたが、鳩の羽ではなくハヤブサの羽ではないかと思われるそうです。鳩もハヤブサも(種類によるけど)羽が灰色っぽいし。
ハヤブサを漢字で書くとその一つに「隼」と書くものがあるのでおそらく出井さんは撃たれた可能性があると思います。(出井さんも名前の中に「出井"隼"之介」とハヤブサの字が入っている)

<(俺がハヤブサで楢原が鬼ってこと!?)
↑まだそうとは確定してないよ。というかいつの間にこのnoteに入ってきたの。

そして手記3の途中のひらがなになっている所を見るとたくさんの大丈夫の中に「大丈夫でしょ」と書かれています。
これはヤーレンズさんのネタの始めの方で

楢:「でも◯◯(例:ハズレのラーメン屋行ったら)だったら◯◯(例:美味しいラーメン食べれない)だぞ~?」
出:「大丈夫でしょ?

ヤーレンズの漫才でのコントインのくだり。

というくだりがあり、何か関係があるのかは分かりませんが、…えっと…あー、私は分からないので他の方何か考察あれば私のnoteコメント欄Twitter(X)のリプに書いて下さい。

<おい途中で考察放棄すんな!

でも他の方が考察してくれるから大丈夫でしょ?

<(`з´)プクゥ


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