オタクが濃厚接触者になると

やっと人間らしい生活が戻ってきたと思ったら、もう木曜日だった。

地下アイドルオタクのかべのおくです。


先週のはじめ、一緒に暮らす母親が新型コロナウイルス感染症で陽性となり、同居するぼくは問答無用で濃厚接触者に指定されました。接触アプリ「COCOA」のサービスも停止した今日日、なかなか聞きなれない濃厚接触者ですが、今では母親も回復して一段落したので、やっとこのnoteを書こうと思い立ちました。


先週の火曜日、ぼくはとあるライブ会場にいました。お目当てのライブが終わったときにスマホを見たら、そこで父親からLINEが届いていることに気づきました。そこには「お母さんが先程陽性と診断されました」と書かれており、これが全てのはじまりとなったわけです。

家族が陽性になったとき、オタクの自分が一番最初に考えたことは「週末のライブどうしよう…」でした。シルバーウィークの3連休、あちこちのライブに出向く予定でチケットを確保していたからです。近くで苦しむ肉親よりも、血縁関係のない推しメンと会えるかどうかを心配するなど、とても親不孝だと思います。模範的な息子なら、真っ先に母親のことを心配するべきなのかもしれません。

とにかく、急いで会場を出た帰りの電車で必死に調べたところ、「抗原検査を受ければ最短3日で自宅待機解除」されることが分かりました。

厚生労働省ホームページより「検査の考え方について」

「よし、これでいこう!」となったわけですが、いちばんの問題は指定された抗原検査キットを入手しなくてはいけないことです。まずネットなどでは、品不足のため確実に3日では届きません。薬局などに出向いて受けられる抗原検査はだいたい「濃厚接触者は不可」となっていました。見事に八方塞がりなわけです。結局のところ、父親に万全な対策をしてもらったうえで抗原検査キットを買ってきてもらうことになりました。検査の結果陰性が分かり、無事に自宅待機が解除されました。


結果としてぼくは何事もなかったかのように、楽しいシルバーウィークを過ごしました。もちろん罹ってしまった母親や、看病している父親に後ろめたさが無かったわけではありません。ただ、「自分が律儀に自宅待機したとして、果たして何ができる?」という思いがありました。もちろんこれは、自分が本当に恵まれた環境にいるという前提がありますし、看病する側だったら絶対こんなこと言ってられません。

しかし何より考えたのは、「濃厚接触者にだって自由は必要なのでは?」ということでした。確かに誰かが陽性となった場合、その同居家族は感染している可能性が高いでしょう。ただ、アイドルの声出しライブやスポーツで声出し応援した人と、濃厚接触者を比べたら果たしてどちらが危険なのでしょうか。たまたま「濃厚接触者」というレッテルが貼られただけで何かから排除されたり、それを引け目に感じて犯罪者のようにふるまうのはどうなんだろう?と考えて、僕はリスクを可能な限り抑えたうえで、リスクの高いライブ会場に向かったわけです。もちろんぼくはたまたま陰性が確認できたわけであって、「生存者バイアス」がかなりかかっていると感じています。

ただ日本は新型コロナウイルス感染症を過度に恐れすぎだと言われていますが、今回の一件で「濃厚接触者の自由、別にそんなに侵害されてなくね?」とも感じました。きちんと備えさえあれば3日我慢するだけですむわけですから。しかし、何はともあれこの国に暮らす以上、家に抗原検査キットの備えがあると便利なのだと分かりました。「まさか自分が」とならない用意は常に必要なわけです。


と、濃厚接触者になりつつも予定はほぼノーダメージだったわけですが、メンタル的にはそうではありませんでした。なんだか「心が狭くなった」のを少し感じました。ライブ中に素行が良くない、周りの迷惑を考えない、「自分が楽しければ良い」と思ってるオタクが過剰に気になってしまったからです。機嫌が良いぼくなら「まあ別にルールは破ってないし、楽しみ方は人それぞれだよね」と無視するところですが、なぜかそれができませんでした。

これは、いつもはくつろげるはずの自宅で常に感染対策を心がけなくてはいけないプレッシャーがあったからではないかと推察します。家庭内で陽性者が出ると、他の家族は感染対策を講じなくてはいけません。マスクをしたり、手洗いや消毒を励行、食事の時も黙食など、気を使う必要が出てきます。このため知らぬうちにストレスが溜まっていたのかもしれません。

たぶん、「自分はこんなに気を使っているのに!」と、自分勝手に振る舞う人を責めたくなったのかもしれません。もしここ最近のnoteとかTwitterで「いつもよりトゲトゲしい言葉が多くない?」と感じることがあったら、たぶんこれが原因です。そういえば、新型コロナウイルスの正体がよく分からなかった2020年は、社会全体がこんな感じだったのかなと当時のことを思い出して少し懐かしい気持ちにもなりました。


ともあれ、この1週間くらいは「濃厚接触者という着ぐるみ」をまとっているような、不思議な体験をした感覚です。結果別の立場に立って物事を考えられたり、親との関係を考え直すきっかけになり、別に悪いことばかりではなかったのかもしれません。

ぼくもまだまだ油断はできませんが、疲れたら推しメンに癒されに行こうと思います。

今日はまとめません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?