22.アートのあるき方

 僕は、アートには全く詳しくないのだが、友人の鈴木に誘われてアート展というものに足を運んだ。そこは、小さいアトリエを利用した個展が開かれていた。鈴木は慣れた感じで入っていく。

 写実的な絵であれば、上手い下手はなんとなく感じるものだが、抽象的な絵や現代アートになってくるとわけがわからなくなってくる。そんなことを考えながら入っていくと、あいにくそこで開催されていたものは、現代アートと思われるものだった。

 変な形の金属の物体がただそこに置かれているだけだったり、単なる黄色にしか見えない色が塗られた壁があったり、床には複数の線が続いていたり、であった。正直、僕の頭では手に負えないレベルである。

 それぞれには主張や意味やあり、その背景を考えながら見たりするのだろうか。そんな問いを鈴木に投げかけると、
 「いや、感じたままでいいと思うし、どういう背景があるのかは自分で考えればいいと思う。それがアートだと思っているから。」
 という、鼻につく答えが返ってきた。

 「なるほどね・・(分からない)」

 鈴木は様々な意味不明な物体の意味が分かっているような足取りで少しづつ歩くと、主催者と思われるアーティストと(あろうことか)笑顔で会話をし始めた。

「こちらの古びた鍵も、面白いですね。鍵という何かを開くものを使うのが面白いです。」 鈴木はガラスケースに1つだけ置かれた、古い鍵を指して言った。

 「あ、それは落とし物です。」
(その恥ずかしい様は、現代アートか!と心の中で突っ込んだ)

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